TBM CO2由来の炭酸カルシウムと再生プラスチックを組み合わせた射出成形対応素材「CR LIMEX」販売開始 さらに新たな用途開発を進め、カーボンクレジットの創出を目指す
株式会社TBMは、カーボンリサイクル技術を活用した低炭素素材「CR LIMEX(シーアール ライメックス)」を開発し、販売を開始した。「CR LIMEX」はCO2由来の炭酸カルシウムと再生プラスチックを組み合わせた射出成形対応の素材となっており、今年1月に開催されたダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で発表した。
■ CO2由来の炭酸カルシウムと再生プラスチックを組み合わせた「CR LIMEX」の特徴
1.排ガス由来のCO2の固定化を実現
排ガス由来のCO2を化学合成したCCU炭酸カルシウムとして固定化することで、素材全体の約25%(重量比)にCO2を含んでいる。製品に使用した場合、焼却処理をされない限り、排ガス由来のCO2の長期固定化が実現できる。
2.再生プラスチックを使用し、プラスチックの資源循環にも寄与
副原料となる樹脂部分に、廃プラスチック由来の再生プラスチックを使用することで、カーボンリサイクル技術によるCO2の有効活用だけでなく、プラスチックのマテリアルリサイクルを通じた資源循環にも寄与する。
3.温室効果ガス排出量と石油由来プラスチック使用量を削減
バージンプラスチックと比較して、原材料調達・ペレット製造・焼却時における、温室効果ガス(GHG)排出量は約34%、石油由来プラスチックの使用量は約34%の削減が見込め、脱炭素や資源保全にも貢献。
4.炭酸カルシウムの制御技術を活用し、安定した成形性を付与
これまでLIMEXの開発で培ってきた炭酸カルシウムの制御技術を活用することで、「CR LIMEX」においても既存のプラスチック製品の成形設備による安定した製品化が可能。
「CR LIMEX」は、排ガス由来の CO₂と工場から排出されるカルシウム含有廃棄物等を低環境負荷プロセスで化学合成したCCU炭酸カルシウムを主原料としている。副原料である樹脂部分には工場から排出される廃プラスチックを再資源化した再生プラスチックを使用しているため、カーボンニュートラルへの貢献とプラスチックの資源循環を推進。従来の汎用バージンプラスチックと比較して環境負荷の低減が可能となる。この素材開発については既に国内特許を取得し、CO2固定化技術の先進的な実用化を実現した。
今後TBMは、鉱物由来の炭酸カルシウムを主原料とする従来のLIMEXの普及を促進しながら、CO2の固定化技術による「CR LIMEX」の普及と新たな用途開発を進め、同時にカーボンクレジットの創出も目指していく。
カーボンリサイクルは、カーボンニュートラル実現に貢献する革新的技術として世界的に注目されている。日本政府が推進するGX(グリーントランスフォーメーション)戦略においても重要な取組の1つとして位置付けられており、政府の「カーボンリサイクルロードマップ」のカーボンリサイクルを拡大していく絵姿では、従来の汎用バージンプラスチックの代替となるカーボンリサイクル製品の普及開始時期が2040年頃からと設定されている。
世界でもカーボンリサイクル推進の動きが加速しており、アメリカは「Inflation Reduction Act(IRA)」を通じて、CCUS技術に対する補助金や税制優遇を実施している。EUは「Fit for 55」や「欧州グリーン・ディール」によりCO₂削減・再利用技術を推進し、さらにカーボンプライシングの導入が技術開発を後押ししている。カーボンリサイクル市場規模は2022年の約18兆円から、2050年までには約277兆円に達すると見込まれており、そのうちCO2利活用製品の市場は2022年の約9兆円から、2050年までには約71兆円に達すると予測されている。
TBMは、これまで「CR LIMEX」の開発において、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「地域に眠る技術シーズやエネルギー・環境分野の技術シーズ等を活用したスタートアップの事業化促進事業」に採択され、東北大学とも共同研究を実施。2024年1月には、世界経済フォーラムの「Unicorn Community (ユニコーン・コミュニティ)」の一員として参加したダボス会議にて、「CR LIMEX」 のプロトタイプとなる射出成形製品やシート製品の試作品を発表した。また、素材開発と並行して、経済産業省とNEDOが開催した「カーボンリサイクル産学官国際会議」での登壇や出展、宮城県多賀城市との包括連携等を通じ、「CR LIMEX」素材及び製品の社会実装に向けた取組を推進している。
今後はCO2の固定化技術による用途開発をはじめ、 様々な業界のメーカーや関連企業、 脱炭素の取組を推進する自治体との連携を強化し、カーボンクレジットの創出も目指す。