西谷印刷 小ロット、特殊素材の強みを伸ばす~LIMEXで機能性印刷商品を開発
小ロットの封筒や伝票、名刺やポスターなどの商業印刷を手掛ける西谷印刷株式会社(西谷毅社長)は、大塚商会より『RICOH Pro C7200S』を導入し、石灰石を主原料とする再利用可能な素材「LIMEX(ライメックス)」を利用した印刷製品の開発に着手した。現在、同社は80μから400μまでの厚さ、ソフト・ハードを含め全てのLIMEX製品に対応し、幅広い用紙対応力でビジネスを拡大している。
西谷印刷は1968年に西谷毅社長の祖父が活版印刷業の有限会社西谷文明堂印刷所として創業した。西谷社長の父の代では企画・営業機能を高めて報告書や冊子などを主力に成長。三代目の西谷毅社長が10年前に就任してからは、デザイン制作から受注する体制を整えている。主に農林水産省の外郭団体や福祉系の認可法人など団体の月刊誌、機関誌などの冊子、それらから派生する封筒や伝票、名刺や挨拶状で受注を拡大してきた。
同社は2019年3月に『RICOH Pro C7200S』、2021年2月に『RICOH Pro C7210S』を導入。その素材への対応力の高さとスペシャルカラートナーの表現力で、LIMEX(ライメックス)を使った印刷商品を提供している。
LIMEXは石灰石を主原料とする再生可能素材。環境への負担が少ないだけではなく、優れた耐水性を持つ。しかし、一般的にLIMEXの印刷・製本加工に対応できる業者は少ない。同社ではLIMEXのメーカーである株式会社TBMや、LIMEXを取り扱う印刷会社、製本・加工会社との連携で、小ロットのLIMEX製品の印刷を実現。
さらに80μから400μまでの厚さ、ソフト・ハードの性質を含め、全ての種別のLIMEXに対応し、一定の在庫量を確保している。また、LIMEX以外の環境に配慮した素材の取り扱いを進めており、顧客の目的に合わせた素材とデザインを組み合わせて提案する機会が増えているという。
LIMEXの特性生かし リストバンド型チケットなど
西谷社長がLIMEXの可能性を感じたのは8年前。当時のオンデマンド印刷機でも印刷することができたが、出力スピードを落とす必要があり、歩留まりも悪いため、量産化が難しく一度は断念した。
「オンデマンド印刷機の更新で各社の機械を検討する中で、リコーと大塚商会は通紙の検証に積極的でした。LIMEXも刷れることを知り、再チャレンジができると感じました」(西谷社長)。2019年のRICOH Pro C7200S導入を契機にLIMEX製の名刺印刷を開始。その後、LIMEXを扱う印刷会社からUVオフセット印刷とオンデマンド印刷の両方に対応できるシートを紹介され、リコーのサービスマンとともに全種類の印刷プロファイルを設定した。
「しばらくしてテーマパークのストアに並ぶ商品のタグの案件を頂きました。サイズが小さいので20面付であれば50通しの印刷となります」
商品の製造工程にかける時間が決まっており、18時の入稿で、翌日18時の納品と短納期が求められるほか、多頻度の発注となる。名刺印刷からスタートしたLIMEXへの印刷は、オンデマンド適性が高い注文を呼び込むようになり、加えて耐水性や耐久性などのLIMEXの機能を求める顧客が増えていった。
LIMEX製のリストバンド型のチケットは公営競技場から採用が始まった。指定席の観客の出入りを管理するためのもので、席種や日によって色や文字が変わるため、多品種かつ小ロットとなる。観客の滞在時間中に破れにくい耐久性が評価されたという。リストバンド型チケットはプロサッカーの試合の入場券にも使われている。
耐水性の機能からリストバンド型チケットは公営プールの入場券としても採用。冷凍食品のギフトでは食べ方の説明書にLIMEXを使用している。水をはじくため、冷凍庫から取り出した際に結露で説明書がしわが入らず、見栄えが悪くなることがない。
ある飲食店ではトレイに敷くランチョンペーパーにLIMEXを採用した。これまで印刷・廃棄に年間数百万円かかっていたが、LIMEXにより数度、再利用することが可能になり、コストが約10分の1に削減された。
一般的にはLIMEXといえば製造過程で水の使用量が少なく、アップサイクルによるサーキュラーエコノミーに対応した環境素材として認識されている。環境の切り口は重要だが、西谷社長は「「耐久性や耐水性を上げるためのパウチ加工がなくなるというLIMEXの必然性は提案の材料になります」とその特性の強みを強調する。
LIMEXを扱うようになったことで社内的にはスタッフの自信につながった。例えば災害時に自宅の入口に掲示するLIMEX製のセーフティーカードの形状は、スタッフが工夫しながらドアノブの形に変っていった。
「自分たちのベースとなる技術、得分野ができたことは大きいと思います。オンデマンド印刷機だから難しい紙ができないという感覚が少なくなり、防水紙やサーキュラーコットンペーパーなどの特殊素材にチャレンジするきっかけとなっています。オフセット印刷で印刷することが難しい素材でも、オンデマンド印刷機で印刷できることもあります。お客様からもライメックスができるのなら他の素材もできますか、と特殊素材の問い合わせが増えています」
同社はLIMEXをきっかけに、今後、様々な素材にも挑戦する。「LIMEXオンリー」ではなく「LIMEXもできる」という強みを育み、様々な顧客のニーズに対応した製品開発を進め、ビジネスを拡大していく。
西谷印刷株式会社
所在地:東京都江東区三好2-1-4
代表者:西谷 毅氏
TEL 03-3630-2007
https://nishiyap.co.jp/