富士フイルムビジネスイノベーション 現実的な生産改革で「最適な生産環境」を構築する~富士フイルムグループが提唱する「FUJIFILM Smart Factory」

 印刷領域のDXに関して、富士フイルムグループは「FUJIFILM Smart Factory」を提唱している。印刷会社を取り巻く市場環境は、人口減少、小ロット、多品種化・短納期化の加速、物価高騰など、大きく変化を続けている。そんな中で印刷会社が持続可能な生産環境を整え、成長していくには、現実的な生産改革が必要となる。富士フイルムグループは「FUJIFILMSmart Factory」で「最適な生産環境」を構築し、現実的な生産改革を実現する。

はじめに

 変化が激しい昨今の市場環境の中で多くの印刷会社は、生産人口が減少する中での人材確保、多品種化、短納期化に対応するための工程管理・オペレーション、設備稼働率の低下による設備の余剰といった課題に直面している。

 富士フイルムグループは、これまでオフセット印刷に関しても、またデジタル印刷に関しても乾式トナー方式とインクジェット方式といったさまざまな商品やソリューションを提供してきたが、引き続きお客様である印刷会社の課題解決へ貢献するためには、印刷工程に特化した価値提供だけでなく、生産工程全体の改革に資する価値提供が必要とされている。お客様の最適な生産環境の実現に向けた支援として「人」「工程」「設備」への最適化を行い、お客様が持続的な成長トレンドに転じるための生産環境を実現する。

FUJIFILM Smart Factory

 当社を含む富士フイルムグループは昨年秋のIGAS2022において「FUJIFILMSmart Factory」を出展のコンセプトに掲げ、「人」「工程」「設備」への最適化を実現するトータルソリューションとして、パートナー企業のブースとも連携しながら実演による紹介を行ったことで、お客様や印刷関係者から多くの反響と引き合いをいただいている。

「Revoria One Production Cockpit」によるFUJIFILM Smart Factoryの実現

「FUJIFILM Smart Factory」は3つの基本概念をベースにしている。
①「オフセット印刷」と「デジタル印刷」の共存環境を前提とした統合ワークフロー
 従来のオフセット印刷と今後成長が予測されるデジタル印刷の併用を想定した運用においても最適な生産が実現できる、ハイブリッドなワークフロー環境を提案する。

②入稿から出荷まで、デバイス間・工程間も含めた全工程をマネジメント
印刷工程に限らず、データ入稿から出荷までの一連のワークフローにおける各工程を自動化することで、一元的に管理するという考え方に立っている。

③さまざまな機器/システムとフレキシブルに連携可能
オープンイノベーションの考え方のもと、パートナー企業の後加工機や無人搬送車(Automatic Guided Vehicle:AGV)、人協働ロボット(ロボットアーム)などの自動化システムと連携することで、印刷会社の業務に合わせた最適なスマートファクトリーを提案し、印刷業務の自動化・省人化を実現する。

「FUJIFILM Smart Factory」の中核を担う「Revoria One Production Cockpit」

 「FUJIFILM Smart Factory」の基本概念を具現化するのが、当社製品の印刷工程管理ソフトウェア「Revoria OneProduction Cockpit(以下、ProductionCockpit)」である。

Production Cockpitは、オフセット印刷機、後加工機など、当社製品に限らずさまざまな機器/システムと連携すると同時に、「ワークフロー定義」「作業の自動スケジューリング」「オペレーターや機器/システムの着手・完了ステータス取得」「各工程の予実管理」「稼働状況の見える化」などの機能を提供する。

「Revoria One Production Cockpit」による設備稼働状況の可視化

これにより、インプットされる経営情報システム(MIS)等のジョブ情報から、ワークフローを自動決定し、各工程とその前後工程の開始・終了状況を管理できる。結果、連携した機器/システムに適切なタイミングで自動指示がかかり、自動で生産工程が稼働する仕組みができる。さらに、連携した機器/システムから品質・状態(稼働)・予実などの様々な情報を取得・蓄積し、ビジネスの変化やトレンドに応じたデータ解析・シミュレーションを行っていく。

これにより生産効率を最大化させる「人」「設備」、品質・コスト・納期の水準を向上させる「工程」の実現に向けて、継続的な改善提案を実施していく。「FUJIFILM SmartFactory」をお客様の生産現場で具現化するためには、現状把握や企画策定、要件定義、さらにはステークホルダーとの密なコミュニケーションが必要となる。当社は、営業/システムエンジニア/開発/企画が一体となったシステムインテグレーションのプロジェクト体制を整え、お客様毎の最適な生産環境を具現化していく。

部分最適モデルの提案

 「FUJIFILM Smart Factory」は生産工程における全体最適の考え方をベースに、全体最適のゴールイメージはお客様と共有しつつ、スモールスタートとして部分最適モデルも提案している。本モデルは、生産工程で多く行われている業務のうち、5つの工程(中間品等の次工程への「搬送」、完成品や出荷品をハンドリングする「仕分け(パレタイズ含む)」、印刷前後の準備作業で行う「用紙捌き」、印刷用資材や在庫商品の「ピッキング」、梱包/出荷工程の「梱包」)に着目し、部分最適モデル化を行った。併せて「税制優遇支援・補助金申請支援」を核とする中小・中堅企業向けの経営支援体制も整備した。これらの複合的な提案により、お客様の生産環境の省人化・自動化をスピーディーかつ確実に実現していく。

海老名Future Edgeのリニューアル

 IGAS2022後、当社の海老名事業所内の検証施設「Future Edge」において、「FUJIFILM Smart Factory」を実際に体感いただける環境を整備して公開した。ここでは、デジタル印刷機、AGV、人協働ロボットなどが「Production Cockpit」のマネジメントにより、デジタル印刷における入稿から出荷までの工程が自動化されている制作ラインをご覧いただける。また「FUJIFILM Smart Factory」を体感いただいた後にお客様毎の課題に即したワークショップ/ディスカッションを開催している。印刷業界へのSmartFactory化に向けた各社の取り組みが加速していくことで、生産工程の省人化/自動化に関する必要性・必然性も高まってきており、お客様からのより多くのフィードバックを踏まえて、SmartFactory化を加速させるための機能拡充に向けて、新たなパートナー企業とのさらなる連携強化も計画している。

3つのDXソリューションとの組み合わせによる価値の最大化

 当社では「FUJIFILM Smart Factory」を軸とした「Smart Printing DX」のほか、印刷業務の発注元であるクライアント企業と印刷物を通じて購買活動を行うエンドユーザーを繋ぐ「Marketing DX」、クライアント企業と印刷会社の受発注プロセスや経理などのバックオフィス業務をデジタルシフトする「Transaction DX」を展開しており、これら3つのDXを繋げ、エンドユーザーのUX(User Experience)が向上することを目指す。

 「Marketing DX」では、ウェブ、アプリ、SNS、紙媒体のDMやデジタル広告など、さまざまな販促ツールの効果の見極めやプロモーション施策の立案に関して、当社が伴走してお客様の効率的かつ効果的な販促を支援する。また、プロモーション施策の一環で販促DMなどの印刷物をツールとして用いる際に、お客様との間で発生する取引の自動化・効率化を「Transaction DX」で実現する。そして印刷工程の自動化・効率化を支援する「Smart Printing DX」、これら3つのDXを組み合わせることで、販促の企画から実行までのリードタイムを短縮するなど、一気通貫で手掛けることによりお客様がクライアント企業に対して提供することのできる価値の最大化を実現していく。

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