ハンダ “楽しい”から商材が生まれ、ビジネスに発展
埼玉県新座市の株式会社ハンダは、印刷物の製造を通じて顧客企業をトータルサポートすることを指針に掲げ、操業している総合印刷会社。一方で、事業再構築補助金を得て、本社社屋1階の前面に「保護犬応援カフェLuckLick」を併設。愛犬家が集まる拠点になっている。
同社には、株式会社大塚商会から導入したカラープロダクションプリンター RICOH ProC7200とRICOH Pro C7500が稼働しており、愛犬家の心にヒットする新しいものづくりにも活用されている。同社の津川清美社長に話を伺った。
■オンデマンド印刷を中心に地域の印刷物づくり
ハンダは、1976年(昭和52年)にオフセット印刷会社として設立し、長年オフセット印刷の会社として操業してきた。しかし、印刷オペレーターの育成が難しいオフセット印刷を稼働させることへの限界を感じていたことから、オフセット印刷とオンデマンド印刷機(POD)を併用して、印刷物づくりを続けてきた。その後、オフセット印刷の最後のオペレーターが退職するのをきっかけに、オフセット印刷を手放し、完全PODへと切り替えたという経緯を持つ。
その頃について津川社長は、「オフセット印刷の会社は沢山あるから協業すれば対応できると思いました。加えてオンデマンド印刷の仕事も動いていたので、これでいこうと決断しました」と振り返る。
RICOH Pro C7200を導入したのは2019年10月、RICOH Pro C7500は2024年10月に導入した。いずれもシステムの代替え機として導入だったが、C7500の時には、テストランで出力に苦労してきた卓上カレンダー用の用紙・アラベールがスムーズに出力できたことが大きな評価点となった。このカレンダー制作は、品質に厳しいデザイナーから依頼されて作るカレンダーで、安定した色再現が難しいデザインが恒例となっている。こうした受注にも安定生産で対応できることは、PODへの取り組みに自信を持たせている。
同社では、現在、DM、POP、キーホルダー、名刺、カード/ポストカード、チケット、チラシ/リーフレット、ポスター、カレンダー、メニュー/ノベルティ、新聞/速報、広報誌/ハウスオーガン、会社案内、カタログ/パンフレット、提案書/提案型カタログ、マニュアル/台帳、小冊子/PR誌など、多種多様なメニューを設けて、地元で発生する印刷市場に対応している。
中でも冊子印刷が忙しいメニューの一つとなっている。例えば春は、地域で発生する予算書や決算書などがまとめて発注される季節となる。一方で、地元の学校からは卒業に近くなるとレザック用紙を使う卒業論文の表紙印刷と製本の発注が増加する。一方で、お菓子メーカーのパッケージのダミーづくりなども行っており、顧客企業からの“作って欲しい”に応えている。
■事業再構築で1階部分を改装、愛犬家が集まる拠点づくり
従来からの仕事が大半を占めている一方で、新しいものづくりも始まっている。それが本社オフィス1階に併設されている「保護犬応援カフェLuckLick」での取り組みである。2022年8月にカフェを開設、今年で3年目を迎えた。ハンダの全売上に占めるカフェの売上はまだ少ない。それでも、確実に、新しい印刷市場の開拓に影響力を及ぼしている。
津川社長は愛犬家をターゲットにしたカフェを運営することで、「自分は犬好きだと思っていたけれど、好きな部類には入らないことがわかりました」と語っており、本当の“犬好き”とは、子育てよりも犬に対して熱心で、食べ物や飲みものだけでなく、体調管理や身に着けるものまで気を配る人を指すと語る。 こうした愛犬家をターゲットにした“カフェ(LuckLick)”という拠点には、今では犬に関する様々な専門家が集うようになった。「ペットの専門家は個人が多いため、カフェという集まれる場所があると喜ばれます。そこから生まれたサービスを受けられる来店客からも喜ばれ、我々の仕事にも繋がるWin-Win-Winの関係が出来ています」。
印刷のビジネスアイデアを考えることは難しいが、「愛犬家のためのアイデアを考えていると楽しい。アイデアを形にする時、これも印刷で出来るねとか、パンフレット作ればいいんだねと思ったりします。改めて印刷物がビジネスの中に多く存在していることを認識しました」と語る。
時には、来店客から作って欲しいと相談されることもあり、犬の母子手帳のような機能を持つ「トリミングノート」や、犬のトレーニング施設に書いてもらう「お預かりノート」なども製造した。また、店頭で行うイベントが一目でわかるカレンダーを作った時には、「町の商店にも提案できる素材だと気づきました。そうした新しい発見が沢山あります」とショップ運営の効果を実感している。
「今まで、お客様から言われたことを言われた通りに納品する受注産業型でした。その関係性の中で、お客様の困りごとを聞き出して提案することは苦手でした」と振り返る。提案営業ができないことに悩んだこともあった。しかし、「もういいや好きなことをやろうと思い直して、大好きな犬のショップを始めたのです。好きな事は苦にならず、新しいアイデアを考えることも楽しく、それが新しいものづくりに繋がっています。全国の中小企業の経営者の方にも好きな事をやって下さいと言いたい」と語る。
印刷会社には印刷の基礎的な知識や技術があり、様々な物をつくるポテンシャルもある。その良さを発揮するために、印刷とは異なるジャンルに目を向け、好きなことから踏み出すことで、新しい印刷の可能性が見えてくる。「新しい市場を生み出す企業が印刷業界の中で増えれば、新しい可能性が出てくると思っています」と語っている。
現在、RICOH Pro C7500を使ってクリアトナーやホワイトトナーなどを使った付加価値の高い印刷物にも取り組んでいる。PODを使うことで、「これってなぁに?と言われるような面白いものづくりをしていきたい。そのためにも印刷業以外に目を向けて、あるいは好きな物に焦点を絞ってみることを続ていきたい」と語っている。
■新座市を盛り上げたい、“犬”きっかけに経済効果狙う
ハンダの社内には、デザイン作成を行う個人事業主の森田氏も在籍している。森田氏はハンダ社員ではなく、机を間借りしている関係のため、ハンダにとっては人材雇用の負担がないというメリットがある。
その森田氏は、津川社長が思いついたことや、お客様から相談されたアイデアを即座にデザインしてみせる。「個人事業主なので個人で活動していると仕事を獲るのが大変です。ハンダにいると仕事が沢山あり、助かっています。新たな働き方ができていて嬉しい」と語っている。津川社長も、「良い関係で仕事をしてもらっています。これからの時代にあった新しい働き方だと思う」と述べている。
ハンダは、新座市のゆるキャラ“ゾウキリン”を印刷した犬用防災手帳を、新座市に寄付した。津川社長は、都心に近く、緑豊かな新座市に公設ドックランがないことは大きな問題だと力説する。新座市を含む近隣4市の犬の登録数をみると、新座市が7,000頭で圧倒的に多い。(朝霞4,000頭、志木3,000頭、和光2,000頭)
しかし、大型の犬の施設がないために、犬を飼っている家庭は、所沢市や川口市のドックランのある大型施設へ遊びにいってしまう。ドックランがあって、遊べる施設、楽しめる施設ができれば、もっと新座市は活性化できる。「犬をきっかけに、他の地域から遊びにきてくれるような場所があるといいのではないかと思っ ています。新座市で生まれ育った身としては、新座市に愛着があります。恩返しの意味も込めて盛り上げていきたい」と展望している。
株式会社ハンダ
本社:埼玉県新座市道場2丁目7-7
https://handa-print.com/index.html