エヌシークリエイト 名刺製造のスマートファクトリー実現へ、印刷~後加工、集積してワンブロックまで自動化
東京都中央区の “名刺” に特化した印刷会社である有限会社エヌシークリエイト(丸山浩社長)は、コニカミノルタのデジタル印刷システムとホリゾンの後加工機を接続したシステムを導入した。これにより印刷、後加工されたカードが100枚のブロックとして集積するまでの生産工程がワンパス化され、名刺印刷工場のスマートファクトリー化を前進させた。この度のインライン化の実現に伴い、6月13日、導入メーカーを招いたお披露目会が行われた。
エヌシークリエイトが導入した名刺製造のインライン化システムは、コニカミノルタのデジタル印刷システム「AccurioPress C14000」と、ホリゾンのシートバッファモジュール「SBM-100」、ロータリーダーカットシステム「RD-4055(給紙装置FFU-N4055+型抜き装置RD-N4055+分離装置SPC-N4055)」を繋ぎ、さらに新開発のフィニッシャー(集積装置)が接続されているというもの。これにより、名刺の印刷から後加工、ブロック化までのインライン化を実現した。
その結果、名刺生産のスピードが向上し、1日平均2,000~3,000箱、1箱当たり平均7~8秒と高速化している。従来の生産手法に比べて圧倒的に速いが、安全に生産できる平均的なスピードだと語る丸山社長。それでも、「潜在的には最高5秒で1箱程度生産できるスピードまで上げることができます。しかし、複数種類の名刺を大量に扱っていることから、確実に生産・納品しなければならないので確実に生産できるスピードで稼働しています」と述べている。
名刺の印刷製造は、316㎜×460㎜の紙に21枚分の名刺を5枚印刷した後、断裁および抜き加工して、105 枚のブロックにして、箱詰めしていく。印刷から後加工までインライン化したことで、生産スピードMAX6,000回転で、印刷から断裁加工へと流れ、高速で名刺のブロックが出来上がる。(現在は試作機なので4,400〜5,200回転で運用中)
特に、断裁後に1箱分の名刺を集積してブロック化する作業が自動化されたことで省人化が進んだ。「これまでカットされて、列になって出てきた名刺を、人の手で集積してから、箱に詰めていました。それが集積された名刺が100枚のブロックとなって出てくるので、そのまま箱に詰めるだけでよくなりました」(丸山社長)と工程短縮の効果は大きい。
今回のプロジェクトは、ホリゾンが提唱しているスマートファクトリーの構想を受けて、丸山社長が「これからの時代は自動化とインラインだ」と直観したことから始まっている。
同社では、もともとホリゾンのダイカットシステムを導入していたが、新たに導入したコニカミノルタのAccurioPressの印刷スピードと比較的近いことに着目。インライン化へのアイデアが閃いたという。
ダイカッターに対する認識が、変わってきたことも今回のシステム導入に影響している。ダイカッターは固定刃のため、熱によって用紙の伸縮などをおこすデジタル印刷では、使えないという固定概念があったという丸山社長。しかし、社員のアイデアから、紙の伸縮をテストして出力倍率を設定しておけば、ダイカッターも使えることを発見。そこからホリゾンのダイカットシステムを導入したという経緯がある。
ダイカットシステムを導入したことで、多様な用紙の名刺をワンパスで生産できるようになり、生産性が格段に向上した。現在は、この生産システムのノウハウを蓄積しているところである。
新たに導入したホリゾンの後加工システムである集積装置については、海外の事例からヒントを得て誕生している。カードサイズにカットした後、ブロックにまとめる仕組みが存在することを知り、さらに進化させて自動で集積するアイデアをホリゾンへ持ち込んだことが契機になり、集積作業を自動化するシステムが開発された。
丸山社長は「コロナ禍となり一気に名刺を使うシーンが減少し、受注件数も落ち込みました。そこで、生産現場の省力化・省人化を進める必要性を感じました。自動化できる部分は自動化し、人がこなすべきことは人が取り組むスマートファクトリー化を進めようと思いました」と動機を説明。自動化を進めた結果、アフターコロナ直前の今春、急激に増加した名刺受注にも対応することができた。2019年春と比較しても、1.2~1.3倍に急増した名刺生産の受注をこなすことができたという。
「生産現場はコロナ禍の影響で長い閑散期が強いられたため、忙しさに手慣れた担当スタッフが少ないという状況でした。コロナ禍が明け、名刺印刷が急増した時、私も現場で一緒にシステムを動かすほどでしたが、自動化を進めていたからこそ、一気に訪れた受注増の状況を乗り切れたと思います」と振り返っている。
デジタル印刷機による印刷から後加工を経て、一つのブロックにするまでインライン化できることで、作業が一本化する。さらに今後、検査装置をつけることも視野に入れている。それにより、生産が全てインライン化され、箱につめて発送するだけという作業環境が実現する。
集積してブロックとして出すシステムは、インライン化できることでメリットが発揮されると語る丸山社長。オフラインの設備では実現できない、インラインで生産が完了する名刺生産のスマートファクトリー化に期待を寄せている。
今後については「社会全体がビジネスを本格的に動かしていくにあたり“名刺”はリアルで出会った方へ最初に手渡しできる重要なツールです。お客様のビジネスを変わらず支援していくためにも、さらなる自動化が必要だと感じています」と展望している。
有限会社エヌシークリエイト
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