富士フイルム株式会社は、ワイドフォーマットインクジェットプリンター向けに、水性顔料インクジェットインク中に光硬化性樹脂を安定的に分散させる独自技術「AQUAFUZE（アクアフューズ）技術」を新たに開発した。
「AQUAFUZE技術」は、同社が有する水性インク技術とUV硬化性インク技術の融合により開発された。この「AQUAFUZE技術」を用いた新インクジェットインク『UV硬化性水性インク』も開発しており、このインクについては、2024年秋の提供開始を予定している。

産業用インクジェットインクは、一般的に水性インク・溶剤インク・UV硬化性インクに分類されており、各インクはインクの特性や印刷用途に応じて使用される。中でも、サイングラフィックや販促用印刷（POSプリント）などで使用されるワイドフォーマットインクジェット印刷では、熱でインクを固める水性インクや、光の照射によるUV硬化性インクが主流となっている。
現在、ワイドフォーマットインクジェット印刷市場の成長に伴い、印刷アプリケーションや基材が多様化する中、印刷物に付着するインクには、高い耐久性や、折り曲げなどの加工時に必要となるインク膜の延伸性、吐出安定性などが求められている。また、印刷時に生じる溶剤の揮発や臭気などを防ぎ、印刷作業者がより安全で快適に使用できるインクへのニーズも高まっている。

新開発の「AQUAFUZE技術」は、同社が持つ高機能素材の合成技術や粒子の分散技術を応用し、水性顔料インクジェットインク中に光硬化性樹脂を安定的に水分散させる独自の技術となっている。
この「AQUAFUZE技術」をベースに、水性インクとUV硬化性インク双方の処方技術を組み合わせることで、新たに『UV硬化性水性インク』も開発した。同インクは、これまで水性インク・溶剤インク・UV硬化性インクといった単一インクでは難しかった、印刷時に生じるインクの臭気などを抑える安全性に加え、高い耐擦性や延伸性を実現する膜質を有しており、多彩な印刷基材に対応する。
そのため、ワイドフォーマットインクジェット印刷で増加している室内サインや壁紙に使用されるインクとして利用できる。
AQUAFUZE技術を活用した『UV硬化性水性インク』は、印刷ジョブの幅を広げるインクとしての可能性が期待されている。

・UV 硬化により印刷基材へのトップコートが不要。耐擦性や延伸性のあるインク膜を発現。
・インクの臭気性を低減し、高い安全性を実現。

同技術は、５月28日から６月７日にドイツ・デュッセルドルフで開催され
る国際印刷・メディア産業展「drupa 2024」の富士フイルムブースにて出展する予定。