モトヤ 創業100周年~古門慶造社長 インタビュー “皆様に感謝”

変革の足跡刻み、未来へと歩み続ける

株式会社モトヤは今年、創業100周年を迎える。活字の製造・販売から始まり、和文タイプライター、電子組版機のメーカーとして、印刷産業の発展を支え、現在は“コト売り”の商社として印刷機資材に限らず、印刷業界にビジネスのヒントを提供している。また、補助金申請業務の手伝いを積極的に展開し、実績を上げている同社の古門慶造社長に、同社の100年の歩みを振り返って頂いた。

創業100周年を迎え、皆様に感謝

“コト売り”の商社としてこれからも

株式会社モトヤは大正11年2月11日、私の祖父である古門慶次郎が兵庫県姫路市で活字の製造・販売業として創業しました。もともと古門家は兄弟3人で印刷業を営んでおり、それぞれ独立するにあたり、次男の慶次郎は3人が印刷業では競争になるという理由から、活字の製造・販売業を始めたのです。モトヤという社名は“印刷のもと”という意味です。大正ロマンの時代なので、西洋風にカタカナの社名にしました。幼少の頃、寝る前に祖母からそうした話をよく聞かされたものです。

モトヤ 代表取締役社長 古門慶造氏

株式会社モトヤは大正11年2月11日、私の祖父である古門慶次郎が兵庫県姫路市で活字の製造・販売業として創業しました。もともと古門家は兄弟3人で印刷業を営んでおり、それぞれ独立するにあたり、次男の慶次郎は3人が印刷業では競争になるという理由から、活字の製造・販売業を始めたのです。モトヤという社名は“印刷のもと”という意味です。大正ロマンの時代なので、西洋風にカタカナの社名にしました。幼少の頃、寝る前に祖母からそうした話をよく聞かされたものです。

昭和21年に祖父が亡くなり社長に就任した父は、昭和24年に大阪市中央区南船場(当時は南区塩町通)に本社を移転し、その後、デザイン室を作って書体の開発を本格的に始めました。プロのデザイナーを採用してM2明朝、G4ゴシック、正楷書体などを開発し、フォントメーカーとして歩み始めたのです。その後、新聞用の扁平体などを開発して新聞社にも活字を納めていきました。

今のモトヤに創業当時の業態はありません。進化を求めたというよりも時代の流れを少しだけ先取りしながら形を変えてきたといえるでしょう。父は機を見るのが非常に敏感で、次はこれ、次はこれ、と一歩二歩先を読んで、市場が要求する製品やサービスを提供していきました。昭和30年代には印刷機器の輸入販売も手掛けておりました。

私は昭和23年に姫路市で生まれ、本社の大阪への移転に伴い、兵庫県西宮市に引っ越し、そこで育ちました。大学卒業後、他社での勤務を経てモトヤに入社したのは昭和47年のことです。

昭和44年にモトヤは和文タイプライターの『タイプレス』を開発し、日本の印刷界のコールドタイプシステム化の先鞭をつけました。私はそのメンテナンス部門に入り、技術を習得していきました。東京転勤後、大阪に戻ってタイプレス部の部長として主力機の『MT‐5000』や、その簡易版『MT‐3000』の開発に携わり、昭和57年、九州松下電器産業と共同で活字式ワープロ『WP‐6000』を開発しました。その後、モトヤは電子組版機器のシステム化を進めていったのです。

私は昭和61年の社長就任後も電子組版機の開発の大部分に関わり、『Laser7 EX』や『AXIS』を世に出し、拡販していきました。タイプレスも電子組版機も、高額な電算写植機の導入が難しい中小印刷業の方々に向けて、安価でありながら高品位な版下作成ができるシステムを提供できないかという視点で開発したものです。私がタイプレスのアフターサービスに携わる中で学んだのは、「お客様が喜ぶ機械でなければ長く良いお付き合いができない」ということです。開発のスタートのところからお客様と一緒に歩むという考え方を大事にしてきました。その考え方は、メーカーから機材商社へと業態を変えていった時、間違っていなかったとつくづく感じました。

平成18年に電子組版機の事業が終了し、そこからモトヤはメーカーから完全に機材商社となりました。組版機器の開発終了には、寂しいものがありました。組版機器の開発責任者当時は言い換えれば私の第二の青春期だったといえます。会社で仕事をする中で、胸がワクワクする時期でした。自分が作ったものが世の中に出て、業界に認めて頂き、商売にさせてもらうことは本当に楽しかった経験です。

メーカーから商社へ

顧客と共に栄える

モトヤは平成18年まで電子組版機に頼って商売をしていましたので、商社として方向性を定めるまでにかなり苦労しました。自社商品がなくなり、製品を仕入れて販売するだけでは薄利多売になってしまい、会社として儲かりません。会社としてしっかり方向を定めて販売の方法を決め、社員が安心して働けるようにするために、営業部門の責任者だった現顧問の森田と議論を重ねていきました。

兄貴的な存在の森田の力は私にとって大きいものです。彼とは大学1年生からの関係で、ゴルフ部で活動していた時に私の家に居候していました。一緒に行動を共にし、ダブルスの時もペアを組みました。モトヤでは私がモノづくりを担当し、森田に営業を見てもらいました。私は森田をはじめ、みんなに色々とお願いするのですが、頼りない私のためにみんな一生懸命にやってくれるのです。本当にありがたい気持ちです。

商社として歩んでいく基軸になったのは「お客様思考」の考えです。森田と議論し、自問自答する中で、印刷業の方々がお困りになっていることは“新規開拓”なのだと改めて気づきました。その後、AR技術の『CARM』、地域の物産・名産・企業などのPR活動を応援する『もえしょくプロジェクト』など、印刷機資材販売に加え、印刷業の方々が新規開拓の営業のネタとなるものを集めていったのです。“モノ売り”に“コト売り”を加えて少しでも新規開拓のお手伝いをさせて頂ければ、お客様に喜んで頂けると考えたのです。そこから付加価値を上げ、さらにお客様との結びつきを強くしてパートナーとして認めて頂くことが、私たちの商社としての立脚点になりました。

少し横道にそれますが、私の好きな言葉に、ある講演会で聞いた「チャンスの神様は前髪でつかめ!」という言葉があります。チャンスの神様に前髪はあるけど、後ろはツンツルテンでつかめない。目の前にチャンスの神様が通りかかったとして、それをつかみにいっても、目の前を通り過ぎようとしたときにはもう遅い。手が届きそうでも後ろ髪は無く、神様を手元に引き寄せることができない。常に神様がいつ通ってもよいようにつかみ取れるように準備しておけという教訓です。

商社化する中で「CARM」などに巡り合えたことや、「補助金制度」に巡り合えたことが幸運でした。平成24年度政府の補正予算の中で「ものづくり補助金」が始まりましたが、私が知ったのは第一回ものづくり補助金の申請受付締め切り日の5日前でした。ある銀行の支店長が新年度の挨拶に来られた時、モノづくり補助金のことを話され、すぐに調査し我々でできるかを検討しました。

業界の皆さんが設備導入されるときに、国からの補助金を業界に引き込んでくれば、皆さんに喜んでもらえると確信し、全社を挙げて取り組みを始めました。現在も各種補助金申請の業務に関してはお客様から高い評価をいただいております。

補助金申請のお手伝いをして機械を購入されたお客様に、材料のお取引をお願いしております。それはご購入いただいた機器が本当に有効に業績に寄与しているか、もっと効率よく稼働させるためにはどうすればよいのか、を一緒に考えさせていただくために長いお取引をさせていただきたいと考えているからです。もし万が一寄与していないなら、どうすれば業績に寄与する設備になるのか、それはその機器を選別されたお客様の責任とも言えますが、サポートさせていただいた我々にも責任の一端があります。

当社の社是は活字の製造・販売を始めた創業時から“顧客と共に栄える”です。活字の導入は印刷業の方々にとって大きな投資で、リスクが伴います。一度導入してしまうと簡単には他の活字に変えられないからです。お客様に儲けて頂き、そこから私たちに還元して頂くという「共に栄える」という志がなければ安心して活字を使って頂けません。“コト売り”を考えるに至ったのも、その社是が基盤となっています。お客様に付加価値の高いご商売をして頂くという価値観はこれからも大切にしていきます。

“コト売り”を始めてからここまで来るのには時間を要しました。あるお客様に合う“コト”が、他のお客様にも合うとは限りません。印刷発注者の業態は様々で、お客様の課題も多種多様です。理屈だけで解決できるものではなく、お客様にとってどういうご提案が必要か、見極められなければなりません。ソフトウェア、ハードウェアの協力会社や専門紙からネタを提供してもらいながら、ちょっとしたヒントを積み重ね、モトヤの“コト売り”が今の形となりました。

まじめにお客様に向き合う

お客様はモトヤにとって大切な存在です。私たちがその会社を好きになり、発展して頂くご提案を考え続けることがモトヤの役割です。重荷ですが、やりがいがある仕事です。絶えず、まじめにお客様の方を向いていくことが重要です。

現在、諸資材の価格が上がっています。その価格をそのまま、お客様にお持ちしたのでは私たちの存在価値がありません。価格転嫁が難しい中でも、何かしらの価値を添えて印刷製品を提供できれば、コストアップ分を吸収できる可能性が高まります。例えば、環境対応の印刷製品です。多くの企業で環境問題を無視できなくなりました。消費者が地球温暖化への関心を高めて消費活動を変え始めているからです。昨年の夏の猛暑や米国の大型ハリケーン、欧州の洪水は、気候変動が影響していると言われています。広告宣伝物やパッケージを環境対応とすることで、環境保全につながり、消費者への訴求力を上げることができます。付加価値の作り方のヒントの一つとして、環境、温暖化ガスに対する取り組みをお勧めしたいと思います。

DXによるビジネス開拓、ものづくり補助金等の補助金申請のご支援、環境対応資材の『ECO no MIST』、ファブリックサインシステム『LUFAS』などの“コト売り”のネタは、お客様視点で揃えました。現在、社内のDX化を進めており、できる目途が立ったらお客様にもそうしたノウハウを提供できればと考えています。印刷のもとになる活字からモトヤと名付けられましたが、社名について今は印刷のもとになるものを全て扱うと捉えています。

こうして振り返るとモトヤは、現在の業態になるまで100年の年月を歩んできました。一昨年の今頃、お客様やお取引先の皆様に感謝の気持ちを伝えたいと、社員と一緒に創業100周年の記念式典と感謝の集いの企画を立てていました。しかし、コロナ禍となり、昨年、開催を断念しました。その代わりに、我々にできる小さなことでもコロナ禍終息へのお手伝いをさせて頂きたいと考えております。

お陰様でこうして100周年を迎えることができたのは、お客様やお取引先、社員のおかげだと感じています。本当にありがとうございます。この先も印刷業の皆様に儲けて頂けるよう精進して参ります。これからもどうぞよろしくお願い致します。

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