ヘイコーパック オリジナル小ロット包装材の需要増に応える~障がい者が活躍できる職場づくり、特殊プリンター4台に増設
ヘイコーパック株式会社(栃木県芳賀郡芳賀町/鈴木健夫社長)は2022年、製袋、製函された立体物に直接プリントすることができるムサシの『T3-OPX』で、小ロット、短納期の紙袋や包装資材のオンデマンド印刷サービスを立ち上げた。1台からスタートした『T3-OPX』は現在、4台まで増設。同社が長年にわたり取り組んできた障がい者雇用とも当てはまり、事業の柱としてオンデマンド印刷が育ちつつある。
ヘイコーパックは1963年、ビニール製袋の加工業者として創業。1970年から紙袋製造を開始し、現在は紙袋の製造販売が主力となっている。設備は輪転製袋機をはじめ加工機30台、オフセット印刷機1台、グラビア印刷機1台、フレキソ印刷機5台を保有する。大ロットが中心で最低ロットは1万枚。受注の60%が店舗で販売される既製品で、8割が梱包資材販売のシモジマ向けに出荷されている。
従業員はパート、アルバイトを含めて170名。このうち障がい者が40名で、おおよそ4人に1人の割合となっている。同社が障がい者雇用を始めた時期について、鈴木健夫社長も正確には分からない。
「芳賀工場(栃木県芳賀郡芳賀町)が建ったのは50年前で、その数年後には障がい者雇用を開始したと聞いています。30年前から徐々に増え、現在は4人に1人を目標にしています」
同社の障がい者雇用は福祉よりも“戦力”としての意味合いが強い。1ライン4名のグループを組む場合、検査や梱包の工程で活躍している。モチベーションも高く、製造に直接関わる現場で働きたいとの希望が多いという。現場では、表示物の色分けなど障がい者が働きやすい環境を整備する。
「障がい者にはより丁寧で根気よく、仕事を教える必要があります。障がいの特性に応じた体制づくりも重要で、そうしたプロセスが人間性の幅を広げることにつながっていきます。障がいを持った社員の方が仕事が早く、健常者に教えることもあります。会社としては良いことが多いので、できるだけ長く勤めてもらいたいと考えています」
2021年に導入した『T3-OPX』は様々な厚みの多種多様な材料への印刷を可能にしたプリンター。プリンターヘッドの高さが自動で調整される機能が備わっており、製函済み段ボールのような厚みのある材料から極薄の材料まで幅広い厚さに対応する。インクは自然由来の基材に対応した水性インクが採用されている。
鈴木社長は当初、小ロット包装資材の需要の可能性を見据えて導入。徐々に需要を獲得していったが、飛躍的に注文が伸び始めたのはオンラインショップとの連携で、主要取引先のシモジマが、オンラインショップ上にオリジナルパッケージ製作のサービスを開始したことがきっかけだった。オリジナルデザインや名入れを施した紙袋や箱などが注文できるもので、そうしたオンラインショップに向けた生産体制やノウハウを構築したことで、他のオンラインショップ、通販関連の業者からの依頼が寄せられていった。
週に20件程度だった注文は1日当たり10件となり、20件となった。今年の繁忙期は100件まで拡大している。
同社ではプリンターのラインを拡大。生産を担っている障害を持つ社員が働きやすいよう、今年2月にプリンターを設置するフロアを変え、広いスペースで作業ができるようにした。現在、同フロアには4つのラインが敷かれている。
生産ラインに付くのは10名前後。オンラインショップから注文されるため、受注件数が変動しやすいため、柔軟に人員を増減できるようにしている。繁忙期になると、他の部署からも応援に駆け付ける。
そうした体制を可能にしたのは、『T3-OPX』の操作性の高さ。プリンターを設定してしまえば、搬送部に基材をセットし、スタックするだけの作業になる。
「プリンターにデータが入ってしまえば後は簡単な作業になります。非常に使いやすい機械ですね。今年2月に広いフロアに移設したのは、注文の増加に伴って既存スペースが手狭になったためです。作業に携わる社員もストレスがかかりますので、一番は皆の心の健康です。長く楽しんで働いてもらいたいですから」
1件当たりのロットは1個から多くて3,000個程度。オンラインショップが提供するアイテムの分の基材を扱っており、絶えず数十種類の基材を用意している。基材の特性は形状や素材によって多岐にわたる。マチ付の紙袋のように凹凸のある基材に対しては補助具などを工夫しながらに印刷する。
オンラインショップの利用者も個人から企業まで様々。オンラインのフリマサービスで商品を発送する一般消費者から、小規模の商店、飲食店、産地直売の農家、大企業のイベント担当部門まで幅広い。
付加価値向上へ次の一手
包装資材は価格が要求され、利幅が年々厳しくなっている。鈴木社長はそうした市場の傾向を読み取り、付加価値を高められる可能性を持つ小ロットの需要に着目した。
デジタル印刷による小ロットの事業を一つの柱に育てていきたいと考えています。オンラインショップで提供している小ロットの包装材は、既存の需要からの置き換えでなく、T3-OPXで実現できる品質と、利用者の方々のニーズのバランスが合致した新しい市場を生んだといえます。ニッチかもしれませんが、大きな可能性を感じています」
『T3-OPX』は現在、オンラインショップ需要を中心とした4ラインが稼動している。作業者の着帽などを含めて衛生管理が行き届いたフロアの中で、それら4つのラインを活用し、食品に使われる包装材も印刷しているが、今後はもう一歩踏み込み、別フロアにさらに要求度の高い食品包装向けのラインを組む。
鈴木社長は「物流の2024年問題で、流通量が減ってしまうと、包装材の需要にも影響してきます。お客様とともにこの市場がどう変化するかを見極める必要もあります。投資できる設備は限られていますが、市場の変化を勉強して新しいことにチャレンジしなければと考えています」と自社が置かれている経営環境を見る。さらなる付加価値向上に向けた次の一手に、『T3-OPX』への期待を高めている。
ヘイコーパック株式会社
栃木県芳賀郡芳賀町祖母井1702-1
https://heikopac.co.jp