【GC東京・座談会】多様性ある業態を強みに進化する~組合活動にも変革を!
情報交換、企業情報の発信で活性化
2021年度、東京グラフィックコミュニケーションズ工業組合(GC東京)は理事長に錦山慎太郎氏が就任し、基本方針「SEIHAN Transformation~製版DNAをコアに新たな市場を開拓する~」を掲げ、活発な事業活動を展開している。各社の強みを持ちより、魅力ある組合へ進化させていくことを目指したもので、人材育成や印刷技術、マーケティング戦略まで、教育事業にも一層力を入れている。特に、経営トップだけではなく、GC業界に参画する全ての人の総合力で業界を押し上げていくべく業界活性化に取り組んでいる。総会を目前に控え、三役による2022年新春座談会の記事を紹介する。
【座談会メンバー】
理 事 長 錦山 真太郎 氏(株式会社 共栄メディア)
副理事長 松浦 睦桐 氏(株式会社 ローヤル企画)・・・司会
副理事長 田端 義之 氏(株式会社 セントラルプロフィックス)
専務理事 佐々木 幸太 氏(東京平版 株式会社)
淘汰を乗り越えた業態という強み
松浦 GC東京新春座談会として、印刷業界におけるGC東京の強みを活かした戦略、あるいはコロナ禍を超えて進むべき我々の業界についてなど思いのたけをお話し頂ければと思います。新執行部体制がスタートして約半年が経過しました。現在のGC東京についてお話し下さい。
錦山 本年度は、常務理事を5人体制にし、5つの事業を立ち上げて取り組んでいます。印刷産業の中でも魅力ある組合にしていきたいと思っており、2021年度および2022年度の事業では、事業戦略事業(存在価値事業)、組合企業間の情報交換事業、人材育成事業、財政回復事業、組合員のコミュニケーション強化事業という5つの実施事業を基に活動しています。なかでも事業戦略に関する事業では、〝存在価値のある組合を確立する〟ということを掲げました。
我々は「製版」「組版」「写植」という技術を培ってきた業態で、今後は、その技術を土台にステップアップしていく必要があります。ただし、ステップアップする方向性は様々で、そのヒントを仲間の企業から得たり、連携していくということもあり、GCの企業の情報を発信していきたいと考えています。
そもそもの大前提として、その人や企業のことを知らなければ連携できません。だからこそ組合員企業間の情報交換を事業活動の一つに掲げています。具体的には、日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会(GCJ)の機関紙『gcj』の誌面を活用し、毎月2社ずつ紹介していくほか、Webサイト『GCのトビラ』からも発信していきます。
2022年は東京大会を開催しますが、ここでも情報交流を目的としております。こうした様々な事業を通じて周辺の印刷関連業界も巻き込み、時には一般企業とパートナーとなって新しい市場に取り組んでいく。最終的にはそういう業界にしたいと思っています。
田畠 個社の特長が多様性となり、各々が深堀りして身に着けた力を組み合わせて、提案できるようになると強いですよね。設備を考えても、1社だけで必要な設備全てを揃えるのには限界があります。
錦山 現在の業界の課題には設備過剰の問題があると思います。仲間で連携し、お互いの設備を活用していくというのは一つの方法です。それにより無駄も削減でき、ノウハウも貯まります。仕事が増えて、間に合わなくなったら、設備強化していく、そんな姿が一番よいのではないでしょうか。ただし、印刷だけに集中すると、じり貧になる可能性があるので色々な分野へ展開していく。そのために組合として様々な情報を発信していきたいと考えています。
そして何より、組合事業に参加する人が決まってしまっているということも課題であり、いかに多くの組合員に参加してもらうかに取り組んでいます。実は機関誌への紹介は、企業のPRだけが目的ではありません。紹介するために取材先へ訪問することで、組合事業に興味をもってもらうきっかけになります。興味をもってもらうことで、GCが企画する勉強会などに「参加してみようか」と思ってもらえるかもしれません。
現在、誌面で紹介している企業は、まだ東京の会社が中心ですが、順次、全国の仲間の企業へ広げ、全国組織であるGCJに興味をもらい、事業に参加してもらい、GCの業界を支える存在になってもらうという流れができれば最高です。
佐々木 いかに組合事業に参加してもらえる人の数を増やせるのかは重要です。「価値がある」「良さそう」と思ってもらえれば事業にも参加してくれます。そこから関係作りをしていかないといけません。セミナー事業などは開催することを目的にしがちですが、多くの人に参加してもらうことを目的にすることが大切です。来年度は、そういう点にも力を入れていきたいです。
また、すそ野を広げるためにも、青年部の立ち上げも考えたいです。次の人材を育てていかないと、組織は存続しないからです。ただし、そのための資金が必要なので、財政回復事業が重要です。来年度は青年部の立ち上げを視野に入れた取り組みをして、若い人が参加できる組織にしたいと思っています。
田畠 現在、GC東京は新体制になったことで意識の変化が起きています。組合を良くするために、あるいは組合員のために何ができるのか、という本質的な意義をもとに活動しています。成果になるまでには時間が掛りますが、「この組合に参加してよかったな」という組合になるのではないでしょうか。
財政の課題も、担当理事の努力によって既成概念を打ち破る、以前であれば無理だったのじゃないかなと思わせる取り組みが動き始めています。継続することを目的とした舵が切れているのは、理事長の強い意思とバイタリティが牽引力になっていると思っています。
松浦 この1年間は、本当に激動の1年間だったと思います。コロナ禍にも関わらずGCに関しては活発に動いており、変化を実現させていると思っています。理事長はじめ皆で頑張っています。
錦山 こうしたGC東京の動きが、全国組織であるGCJの各工組の活性化へのきっかけになれば良いなと思っています。
松浦 では、GC東京の特長や強みについては、いかがでしょうか。
錦山 GCのメンバーは、製版・組版・写植といったプリプレス業を出発点とした企業で構成しています。しかし今や個々の企業の業態はかなり変わってきており、それが強みとなっています。
デジタルへ舵を切った企業、デザインや制作部門を強化した企業、印刷設備を強化した企業、加工・発送までトータルサービスを行っている企業、デジタルコンテンツ制作を強みとする企業など様々です。
今後、ますますパートナシップを組んだ取り組みが必要になると思っていますが、様々な強みを持つGCの仲間がオープンな関係で、仲間の企業と連携して市場獲得に取り組んでいくことができれば、新しい可能性を掴めると思います。そのためにも各社が取り組んでいることをアピールして頂きたいと思っており、情報交換事業や2022年東京大会〝GCJ万博〟などの事業を企画しています。
田畠 GCの業界は、すでに「製版レス」「プリプレス」という時代を乗り越えてきた組織であることが、一つの強みになっていると思います。今も印刷市場が縮小し、その中で苦労されている企業も多いと思いますが、現在まで残っている企業は、プリプレス業界の淘汰という危機的状況を一度乗り越えてきた企業です。そこから生き残る術として、多様性を得たといえるのではないでしょうか。そのノウハウが、今後の厳しい時代にも活かすことができると思います。
今後、その多様性を、お互いに活用するべきだと思います。そのためにも各社が強みを深堀りして、より強くなっていく必要があります。また単独で深堀りしていればいいという時代ではありません。様々な仕事に対応できなければ選ばれないからです。自社の強みを深堀りしつつ、弱い部分は仲間の協力を得て、多様性で展開する。それができれば、かなり強いネットワーク関係が生まれるのではないかと思います。
佐々木 我々の強みは、何よりもプリプレスの技術力だと思います。そこから各社各様に展開して事業領域を変革してきたという経緯があります。その結果、様々な分野に進出し、生き残ってこれたのだと思いますし、生き残れたことが強みだと思います。
そしてGC業界に限ったことではないと思いますが、現在の課題として下請け仕事の割合が多いということです。製版業に関しては、近い将来、なくなることを予測して準備する必要があると思っています。そのためにも自社を見直し、大きく変化させていく必要があります。
具体的には、〝下請け〟体質から、〝直受け〟へ進出していくなどです。直受けできるようになるためにも事業を拡張することが重要です。持っている技術力を活かして、〝コミュニケーションコンテンツを作る産業〟としてアプローチできるかどうかが生死を分けると感じています。
各社が持つ特長に磨きをかけて、進むべき道を見つけて向かっていき、事業の方向性を変えていかなければなりません。仲間でお互いに情報共有しながら、協力し合い、ぞれぞれ会社の進む道が見つけられるような組合活動が出来たらいいなと思っています。
松浦 GC業界の組合規模の推移をみると、10年前と比較して約半分にまで減っています。印刷産業全体も減少していると思いますが、一番減っている業態ではないでしょうか。それだけ印刷産業の中でも厳しい業態だったと思っています。
今後も厳しい状況は続くと思いますが、やはり変化をし続けたことが強みになっているのではないでしょうか。組合員企業は様々な事業をされており、特化した部分を持っています。ですから仕事を仲間にお願いしやすいし、相談しやすい関係が出来ています。協力しながら新たな分野にチャレンジできると思います。
〝直受け〟をする業態へ変革するということは同感です。下請けのままでは価格もコントロールできず、技術力をアピールする場も少ないです。これまでピーアールできていなかったという反省もあります。
佐々木 その〝直受け〟をするとき、単に印刷だけを目的にしていてはダメだと思っています。印刷に関わるビジネスではありますが、コミュニケーションコンテンツをつくる会社として、印刷クライアントと直接、お付き合いできる、相談される関係を目指すべきです。
GCの仲間には、ホームページ作成、デジタルサイネージ、動画コンテンツなど様々できる企業が揃っています。コミュニケーションコンテンツを作る会社として印刷クライアントから相談される関係をつくれる、一番可能性が高いのが、我々だと思います。
錦山 現在、会社の数が減少しているからこそ、変化しないといけないと感じています。ただし変化の形は決まっていません。お客様の困りごとを解決するための方法として、印刷メディアから映像まで、ほぼ我々の組合の中で対応することが可能です。データ制作という本来の強みを活かしていけば、最終メディアは何でもいいと思います。多様性のある組合という部分を発信していきたいです。
直受けする業態になるためにも、一般企業に営業できるスキルを身に着ける勉強会なども必要だと思います。若手社員に勉強してもらい、実践するところまで組合の事業でフォローできると本当はいいなと考えてます。
佐々木 世の中には多くの印刷会社がありますが、その分だけ〝コミュニケーションコンテンツ〟をつくる企業が必要になってくると思います。そのマーケットをどのように獲得するかを考えてもいいと思います。
錦山 我々GCメンバーは、ここまで変化してきた企業の集まりですが、もう少し、変化が必要という感じですね。
田畠 その「もう少し」が高いハードルだと思います。製版業から印刷業への転身は、カラーマネジメント技術など、印刷に関するノウハウが大きく関係していたため比較的取り組みやすかったといえると思います。しかし、直受けする企業になるためには、印刷クライアントに訴求できる〝ソフトパワー〟を上げていく必要があり、ハードルが高い取り組みです。
佐々木 今まで製版業務や印刷業務をしてきた人に、突然、ソフトパワーが必要な仕事をしてもらうのは難しいことです。最初は専門部隊などを設置しないといけません。
錦山 ただし、会社には既存の社員が多くいます。従来の仕事がなくなった後のことも考えていかないといけません。ですから少しずつでも変えていくための勉強会などの必要があると思っています。その一方で、社内にノウハウを持つ人がいないと会社は一気には変わらないと思いますので、強い人を入れる、M&Aをするなどの工夫も必要かもしれません。
コロナ禍でメディアへの意識も変わった
松浦 コロナ禍で社会環境は大きく変わりました。今後の印刷産業や印刷メディアの価値など変わったこと、変わっていくことについてはどうでしょう。
錦山 コロナ禍になり、スタンダードが変わってしまいました。その変化に対応しないとならない状況です。これまでは印刷物を作るのが当たり前だったものが、印刷物は要らないというものも出てきます。自社でもカタログを制作したら、動画も同時に作っています。自分自身、カタログを読むより、解説動画があるといいなと感じることがあります。
印刷を作る会社の経営者が「紙はいらない」と言うと怒られるかもしれませんが、本音として動画は理解しやすいと思いますし、社会一般でも浸透しています。時代が変わりつつあります。
松浦 コロナ禍で最も感じたのは、お客様の行動もリモートになり、営業担当者が直接訪問できなくなったことです。営業活動が困難になった結果、担当者は何をしたらいいかという状況になりました。
そこで現在、弊社ではWebのランディングページから集客する活動を展開しています。飛び込み訪問の足で稼ぐ新規開拓の営業活動はしていません。Webから問い合わせが来たところに対してフォローする活動に切り替えました。約3年前から始めています。最初の1年間は問い合わせがありませんでしたが、現在では1日1件、毎日問い合わせが来るようになりました。全てが仕事に繋がっているわけではないですが、一部上場企業からの案件だったり、個人の問い合わせだったり様々あり、新規獲得できています。やっていて良かったと感じるくらいに成長しています。
田畠 ニューノーマルの浸透による変化は、アフターコロナになっても変わらず進むと感じます。オンライン展開は増え、印刷も必ず必要なものしか残らないのではないでしょうか。昨年印刷したから、今年も印刷するというパターンはなくなり、その印刷物が本当に必要かどうかのフィルターがかけられ、必要のない物は消えていくと思います。一気に時代の前倒しが進み印刷市場が縮小し、元には決して戻らないと感じるほど、印刷メディアの市場が縮小に向かっていると思います。
しかし一方で、必要とされる印刷物は残ります。そして印刷市場が縮小しているとはいえ、各社がそれぞれのカテゴリーで現在の印刷市場を占有しているわけではありません。残っている印刷市場はまだ大きいので、そこを獲得していく方法はあると思います。需要のある市場を獲得するためにも、強みを深堀りしていくことが、仕事に繋がるのかなと思っています。
我々自身が持つ〝製版DNP〟で展開している特化した部分をテコに、さらに周辺事業を膨らましていくしかありません。差別化できている企業と手を組み、縮小する印刷市場の中で生き残っていくしかないかなと思っています。
2022年東京大会開催へ
松浦 2022年東京大会について、どのようなイベントになるでしょうか。
錦山 2022年7月29日、東京ドームホテルで東京大会(全国大会)を開催します。基本テーマは「GCJ万博~仲間を知ってビジネスを拡げよう」です。約200人の方をご招待する予定で、式典では歴代理事長をはじめとする顕彰、若手経営者によるパネルディスカッションも計画しています。従来型の業界イベントとは一味違った企画も計画中です。
〝万博〟としている通り、GCの会社だけでなく、製本、光沢など他の業界の方にも来場してもらい、GCの組合がどんな仕事をしている会社で構成されているのかを知ってもらいたいと思っています。そこからパートナー関係が構築していく、そんな場にしたいと考えています。展示会は無料で来場できます。多くの方に来場して頂きたいと思っています。また広告協賛会社にもメリットがあるような、各社と繋がるきっかけが提供できればいいなと考えています。多くの方のご来場をお待ちしています。
是非会場で、GCの会員企業のことを知って頂きたいと思っています。そして、市場獲得に取り組めるパートナーと巡り合うことで、大きな力となって新しい可能性が掴めると思います。今後も情報交換を活発化し、仕事で連携できる関係が構築できれば、組織としての意義があるかなと思っています。
【 プリテックステージニュース 2022年1月5号から 】