IGAS2022インタビュー:日印機工 森澤会長、里見専務理事~Venture into the Innovation!

未来につながるイノベーションに挑戦
業界を盛り上げるカンフル剤に

4年に1度の国内最大の印刷総合機材展「IGAS2022」が11月24日から28日の5日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される。今回のIGASでは、見どころやイベントの紹介、トップインタビューなどを配信する「IGAS LIVE TV」をはじめ多数の主催者イベントが企画されている。会場では、人手不足や生産性向上など業界の課題を解決するソリューションの提案や、メーカー同士のコラボレーションによる新たな動きなど、今後4年間の業界を占う内容が披露される。IGAS2022主催団体の一つ一般社団法人日本印刷産業機械工業会の森澤彰彦会長、里見和男専務理事に話を伺った。(インタビュー:2022年10月4日)

世界の設備投資が急速に回復

森澤 日本国内ではコロナ禍に入ってからのこの約3年間で、企業活動から生活様式までが変容し、紙媒体に対する考え方にも大きな変化が生じたと感じています。一方、2022年1-6月期の印刷機械産業(印刷機械・製版機械・製本機械・紙工機械)の生産状況は、前年比124%であり、大幅に増加しています。ただし、これは活況な輸出に支えられた結果で、輸出は127%とさらに増加しています。このままの成長率で12月まで推移すれば、コロナ前の2019年の水準をはるかに超える水準まで持ち直すことが期待されています。1-6月期は中国、アメリカ、ヨーロッパ経済に牽引されました。しかし、直近では中国が減速していることが少し気がかりです。

里見 国内において、2022年1-6月期の対前年比較では成長基調ですが、コロナ前までは戻り切れていません。日本はコロナ禍の対応として経済活動に制限をかけてしまった部分が多いため、他国に比べてコロナ禍からの回復に少し出遅れている印象があります。印刷資材の動向を見ても、日本に比べてアメリカやヨーロッパは活況になってきています。政府の経済対策や補助金制度で支援をいただいていますが、まだもうしばらくはコロナ前には戻らないと感じています。

一般社団法人日本印刷産業機械工業会 森澤彰彦会長(左)、里見和男専務理事

自動化がキーポイント

森澤 IGAS2022では、「Venture into the innovation! ―新たなイノベーションへの挑戦」をテーマに掲げています。日本経済及び印刷産業界は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大やウクライナ侵攻などの世界情勢が影響し、大変厳しい経営環境にあります。このような状況のなか、今回のテーマには、危機こそ変革の最大のチャンスであり、失敗を恐れず、未来へとつながるイノベーションに果敢に挑戦するという意味を込めています。私の好きな言葉でもありますが、”チャンスはピンチの顔をしてやってくる”と感じています。

入国制限などは撤廃されつつありますが、今回は海外からの出展社や来場客が例年と比べて大きく減少しています。ただ国内では、コロナ禍の影響でさすがに例年並みとはいきませんが、想定していた以上の申込みがあり、皆様から非常に期待していただいていると感じています。

IGASのような大規模な展示会では、個別のプライベートショーなどとは異なり、全体の流れが見えることが利点になります。印刷関連業界のメーカー、ベンダーが一堂に会していることに大きな意味があります。

IGAS2022の実行委員会は12社のメーカーで構成され、各社が4年ぶりの開催に向けて準備を進めていますので、自動化をさらに推進していくような新製品や新技術が提案されるでしょう。
(IGAS2022実行委員会=小森コーポレーション、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ、キヤノンマーケティングジャパン、コニカミノルタジャパン、桜井グラフィックシステムズ、SCREENグラフィックソリューションズ、日本HP、ホリゾン、ミヤコシ、モリサワ、リコージャパン、リョービMHIグラフィックテクノロジー)

里見 とくに、メーカーの枠を超えて、プリプレスからプレス、ポストプレスまでをつなぐような、各種ソリューションが多く出展されると思われます。人材の採用が難しい状況が続いていますので、自動化が1つのキーポイントになるでしょう。印刷業界全体がコロナ禍で大きな打撃を受けた状況から、IGAS2022が業界を盛り上げるカンフル剤になればと考えています。また、今回新たにフリーアナウンサーの大橋未歩氏をスペシャルナビゲーターとして起用し、「IGAS Live TV」を企画しています。IGASメッセージや展示会実況中継、出展企業のトップインタビュー等を通じ、ご来場いただいているお客様にIGAS2022の臨場感をお伝えできたらと考えています。

新しい形のコラボレーション実現へ

森澤 IGAS2022の会場に来場していただくことで、印刷業界が抱える課題である人手不足や生産効率化、紙メディアに対する付加価値の向上などに対して、従来の発想とは異なる新しい紙媒体への期待値を拡大できるようなヒントを見つけていただければと考えています。

里見 設備投資に関しては、実際に目で見て肌で感じることが一番重要です。直接機械に触れて自社に必要な設備をしっかり判断していただける場をご提供できたらと考えています。大型の生産設備などは、カタログやネットの情報だけでは空気感がわかりません。自動車を買う時には試乗が必要なように生の使用感を知っていただく必要があります。大きなブースに新しい発見がありますし、小さなブースにも大きなヒントが隠れているものです。そうした未来に向けたワクワク感も味わってもらえたらと思います。

森澤 印刷物の生産現場では、プリプレスからポストプレスまでそれぞれに違うメーカーの装置が必要で、従来は人がそれぞれの装置のインターフェースを担ってきました。今後はこれらの装置をシステム的に接続する最適化により、工場全体の生産性向上が求められます。IGAS2022で提案される各社の最新ソリューションの実機を見て、肌で感じていただくことで、これからの印刷産業の設備投資の指針を示せればと考えています。

里見 会場で実際に人がオペレーションしているところを見ることで、現在の社内の設備と最新の設備の違いを実感できて、導入後のイメージもつきやすいでしょう。撮り溜めた映像ではわからない部分も見えますし、機械の担当者に直接質問すればその場で実機を使って回答をもらうこともできるなど、リアル展示会でしか得られない情報の宝庫です。

森澤 今回は海外からの出展が大幅に減っていますが、国内最大の展示会であるIGASをターゲットに各社が技術を投入してきますので、印刷機械業界の今後4年を占う意味を持つイベントだといえるでしょう。メーカー同士のコラボレーションも大きな注目ポイントです。業界全体が厳しいなか、メーカーも自社の強みを活かす必要があるため、競合しているようでも大型機と小型機のすみ分けなどで協調が実現するといった新しい動きがでています。そうした流れもIGASで見えてくる部分だと思います。

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