IDTechEx社 革新的なプリンテッド・フレキシブルセンサー技術トップ5の可能性
IDTechEx社は、Matthew Dyson博士の調査記事「トップ5- 革新的なプリンテッド・フレキシブルセンサー技術」と題して、革新的なプリンテッドセンサー/フレキシブルセンサー技術のトップ5について、その関連用途と併せて紹介している。
従来のリジッドセンサーに比べて、プリンテッドセンサー/フレキシブルセンサーには、軽量性、しなやかさ、共形性のほか、印刷により高スループットの連続製造法が促進されることによる製造コスト低下の可能性など、複数の利点がある。さらにプリンテッドセンサー/フレキシブルセンサーは、幅広いパラメーターを測定でき、産業用IoT、ウェアラブル、自動車の内装、スマートビルディングなどの新しい用途に用いることが可能である。
「トップ5- 革新的なプリンテッド・フレキシブルセンサー技術」
1. ピエゾ抵抗式と静電容量式を併せたハイブリッドセンサー
スマートフォンやタブレットのディスプレイなどの上にある静電容量式タッチセンサーと、圧力の変化を検知するピエゾ抵抗センサーの両方をよくご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
これらの機能両方を同じ多層印刷フィルム内で組み合わせ、ハイブリッドセンサーを形成することができます。このようなセンサーは、近接度と圧力の両方を検出できるため、接触する前に点灯し、しっかりと押した場合にだけ作動するボタンが可能になります。
また、これらをロボットグリッパーで利用し、「指」が対象物に近づいたことを検出したり、圧力分布を測定したりすることもできます。
2. 有機薄膜イメージセンサー
ほとんどのイメージセンサーは、シリコンの小さな硬質の破片から作られています。しかし、塗布型有機半導体など、その他多くの半導体を使用することでも光を検出することが可能です。
こうした半導体は、光吸収層がわずか数百ナノメートルであるため非常に薄いことが利点であり、広い面積に対してコスト効率よく加工できることから、指紋認識などの生体認証に利用することができます。
また、シリコンとは異なり、有機半導体の吸収スペクトルは、近赤外領域等にも調整できます。
3. プリンテッドpHセンサー
現在、pHを測定する方法のほとんどが、不正確・主観的なもの(ユニバーサル試験紙)か、比較的高価なもの(参照電極付きの電子プローブ)かのいずれかです。
ドイツ企業のAccensorsは最近、pHセンサーを印刷する方法を開発しました。これは、独自の材料をわずか1ナノリットル分印刷するだけで、安価でシンプルなセンサーを作成することができるというものです。
通常これらのpHセンサーには、測定値の精度を確保するためにプリンテッド温度センサーが付随します(pHは温度と相関関係にあるため)。多数のプリンテッドpHセンサーと温度センサーが、プロトタイプの創傷モニタリングパッチの中に組み込まれています。
4. RFIDを介した水分センシング
スウェーデン企業のInviSenseは、水分を検出できる薄膜プリンテッドセンサーを開発しました。
印刷されたRFIDアンテナコイルは、吸湿性材料でコーティングされます。水分を吸収すると、コイルが持つ静電容量も変化し、その共振周波数を変化させます。これをRFIDリーダーよって遠隔で検出することができます。
この方法の主な利点は、センサーが薄膜型であるためバスルームのタイルの裏側に設置できることと、非破壊的な方法で試験を実施できることです。
5. プリンテッドガスセンサーアレイによる「電子の鼻」
人間の感覚のうち、嗅覚は、聴覚、視覚、触覚と比べて、まだ効果的にデジタル化がなされていません。それが困難である要因の1つは、匂いが濃度比の異なる複数のガス分子で構成されていることです。
「電子の鼻」によるガス検知へのアプローチは、カーボンナノチューブなど、官能基がわずかに異なる各種半導体を使用することにより、この課題の解決を目指すものです。異なるセンサー領域での導電率の変化を参照データとアルゴリズムで比較することにより、ガス組成を測定することができます。
この記事で紹介したプリンテッド・フレキシブルセンサーの技術、市場規模、予測は、IDTechExの調査レポート『プリンテッドおよびフレキシブル センサー 2020-2030年:技術、有力企業、見通し』 で詳しく解説されている。