IDTechEX 5G市場に関する調査内容を発表、2030年に5G市場は7,200億ドル超へ
IDTechEx社のシニアテクノロジーアナリストであるDr.Luyun Jiang 氏は、「5G市場の急速な発展が低誘電損失材料の追い風に」と題した調査記事を発表している。その内容の趣旨を紹介する。
第5世代電気通信技術(5G)は、動画をより高速にストリーミングするモバイル体験を実現するだけの技術ではなく、自動車から遠隔操作ロボットに至るまで、さまざまなデバイス間のユニバーサルな接続を可能にする技術である。そして新たに登場しつつある収益性の高いビジネスモデルとキラーアプリケーションにより、5Gは最も成長著しい市場の一つと予測できる。その結果、5G市場の規模は2030年には7,200億ドルを超え、5Gの関連市場は世界全体のGDPを年間で2兆ドル押し上げると予想される。
5Gネットワークの最も革新的な側面は、高周波5G技術、すなわち26GHz帯から40GHz帯のスペクトルを利用するミリ波帯5Gを使用するという点にある。高周波信号を使用すると伝送損失が非常に大きくなるため、従来よりも大きな電力と効率的な電源が必要となり、同時に大量の熱が発生する。5Gのアプリケーションでは、伝送損失がアンテナ設計と無線周波数(RF)集積回路(IC)にとって悩みの種となっている。また低周波5G(サブ6GHz帯5G)の場合も、データ転送速度が高いために伝送損失を減らすことが求められている。
IDTechExは、 『5G 向け低誘電損失材料 2021-2031年』と名付けた新しい調査レポートを発行し、サブ6GHz帯5Gとミリ波帯5Gの両方のための低誘電損失材料の需要の増加に焦点を当てている。ミリ波帯5Gの台頭により低誘電損失材料は急速な成長が予測されており、ますます重要な役割を果たすことになると見込まれている。同調査レポートでは、ミリ波帯5Gの材料と技術の課題に焦点を当て、低誘電損失材料の状況を調査し、その性能をベンチマークし、技術トレンドを予測している。
IDTechExでは、5Gデバイス向けに有望な低誘電損失材料にスポットを当てている。そのような材料には、例えば低損失熱硬化性材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、低温同時焼成セラミックス(LTCC)、炭化水素、ポリフェニレンエーテル(PPEまたはPPO)、ガラスなどがある。
5G関連デバイスの低損失材料について、今後10年間の展望を作成した。
低損失材料の市場全体の規模は、2031年までに1億1,000万米ドルを超え、2026年から2031年の年間平均成長率は28%になると予想される(Figure 2)。この市場の成長は、ミリ波帯5Gインフラの開発と、急速に発展するCPE市場によって牽引されると考えている(Figure 3)。
なお調査レポート『5G 向け低誘電損失材料 2021-2031年』 では、各種低損失材料について、さまざまな視点(性能、技術トレンド、可能性、大規模展開のボトルネックなど)から検討した総合的な分析結果を収録している。サプライチェーンを構成する各企業への直接インタビューから得られた一次情報を客観的に分析し、IDTechExの5Gインフラとユーザー機器に関する膨大なデータベースを基にした内容となっている。