IDTechEx 自動化などのロボットに採用されるLiDAR市場を分析
IDTechExでは、専門家によるリサーチ実施期間を経て、光センサー技術である“Lidar(ライダー)”市場の包括的な調査レポート(IDTechEx調査レポート 『LiDAR(ライダー) 2020年-2030年』)を発表し、その一部を公開している。LiDARは、自動化に向けて採用されるロボットなどに必要な技術。現在、このLiDAR(ライダー)技術と市場は急速に進化しており、IDTechExでは100社を超える世界中の3Dライダー企業を追跡している。各企業は、競合技術よりも優れた、極めて革新的な次世代製品を提供すると主張しているという。(抜粋して紹介する)
よく耳にする疑問
LiDAR技術とはどういうものか?
LiDARは光センサー技術であり、これを用いることで、ロボットは世界を見て、決断を下し、移動できるようになります。単純なタスクを実行するロボットには、1次元または2次元の空間を測定するライダーセンサーが有効であるものの、3次元(3D)ライダーは、人間をエミュレートするように設計された高度なロボットにとって有益なものとなっています。
そのような高度なロボットの1つが自動運転車であり、人間の運転手がライダーやその他の自動運転車技術に置き換えられます。3Dライダーシステムは、光線を3次元でスキャンして、環境の仮想モデルを作り出します。対象物を検知・識別し、それら対象物とのやりとり方法やその回避方法を決定するために、反射光信号が車両によって測定・処理されます。
LiDAR技術はどのくらい遠くまで見ることができるのか?
対象物の検出範囲は、測定プロセス、レーザー、ビームステアリングの機構、光検出器の選択肢によって異なります。都市環境にある低速車両用に設計された短距離3Dライダーが示す範囲は、通常50m以下となります。
高速道路環境にある高速車両用に設計された長距離ライダーは200m以上の範囲を示すことができます。
LiDAR技術は何を見ることができるのか?
3Dライダーは対象物の位置、サイズ、形状を判断することができます。
多くのライダーが、対象物が人か自転車かを識別することができる一方で、高解像度ライダーは文字を読み取ることができる場合もあります。
周波数変調連続波(FMCW)ライダーは、自動運転車市場における新しい技術トレンドとなっています。FMCWライダーは、従来のToFライダーとは違い、対象物の速度をリアルタイムで検出することでレーダー技術に対抗することができます。ライダーは色を識別できません。
LiDARセンサーは近くのLidarセンサーの干渉を受けるのか?
可能性はありますが、すべての3Dライダーシステムは、自身の信号をバックグラウンドノイズから分離するように設計されています。
従来のToFライダー技術と比べ、FMCWライダーは、干渉のリスクを最小限に抑えるためのより優れた信号符号化技術を可能にします。
LiDARの価格は採用を制限する要因になるか?
IDTechExの市場分析によれば、3Dライダーモジュールの2019年の平均価格は10,500米ドルです。しかし、ライダー技術が成熟し、企業が生産の規模を拡大するにつれ、単価は今後10年以内に急速に下落するでしょう。
自動運転車における3Dライダーの世界市場は、2030年までに54億ドル規模に成長する見込みです。
4つの基盤技術の選択肢
ライダー技術の状況は、システムコンポーネントごとに多数の選択肢があり、混沌としています。IDTechExでは、すべてのライダー企業が取らなければならない4つの基盤技術の選択肢を特定しました。これら選択肢は、製品の性能とビジネスの成長に大きな影響を与えるものとなります。
① 測定プロセス
測定プロセスにより、光信号の発生方法と測定方法が決まります。ほとんどのライダー企業は従来的なToF技術を開発していますが、新たに出てきたFMCWライダーに向かう流れがあります。
しかしながら、後者の技術成熟度は低く、周波数変調ライダーを開発する企業は、製品が発売されるまで事業を維持するために、巨額の投資と強力な業界パートナーシップを確保しなければなりません。
② レーザー
光源と波長を選択する必要があります。SWIRライダーの方が、より短い波長で動作するNIRライダーよりも、人間の目に対して安全であると考えられています。ほとんどのライダー企業は従来のNIR技術を開発していますが、新たに出てきたSWIRライダーに向かうトレンドが生じています。それは、後者の方が高い出力で安全に動作し、遠くの対象物を検知できることが理由です。
③ビームステアリング機構
場に照射するには、レーザー光をビームステアリング技術によって散乱させるかスキャンする必要があります。従来型の自動車用ライダーでは、回転機械アセンブリを使用してレーザービームを360°スキャンします。これにより、車両はルーフに取り付けられたライダー単体で周囲を見ることが可能になります。回転機械式ライダーは大型かつ高価で、機械的な故障が起きやすくなっています。
技術のトレンドは、小型かつ安価で、安定したモジュール設計へと向かっています。ビームステアリングの新しい選択肢には、動きを制限した機械システム、MEMSミラーをベースにした微小機械システム、純粋なソリッドステートシステムなどがあります。
ソリッドステート式ライダーは、センサーがコンパクトかつ堅牢で、車両に簡単に組み込むことができるため、自動車メーカーにとって魅力的なものとなっています。3Dフラッシュライダーはソリッドステート式ライダーの一種であり、通常、カメラのように場全体に向けて同時に照射します。これにより、ゆがみのない高速イメージングが可能になりますが、レーザー出力の制限により、通常の対象物の検出範囲は、スキャン方式のライダーよりも短くなります。
スキャン方式のソリッドステート式ライダーは、微小機械式ライダーの性能に肩を並べる可能性がありますが、短期的には、量産車に使用するには技術成熟度が低すぎます。ソリッドステートスキャンの新しい選択肢には、シリコンフォトニクスに基づく光フェーズドアレイ(OPA)、各種液晶構造、プリズム状の光学系を介した波長スキャンなどがあります。
④光検出器
検出器が反射光を測定する方法を決める必要があります。重要なのは、光吸収半導体材料がレーザーの波長と調和する必要があるということです。
単一光子検出器が新しい技術トレンドとなっています。これを用いると、ライダーは信号をすばやく記録し、遠くの対象物からの弱い信号を検出できるようになります。
発表内容の詳細は、ホームページに掲載されている。また同レポートは、IDTechEx日本法人 アイディーテックエックス株式会社から購入できる。