白橋 デジタル印刷のグッズづくりで新たに挑戦する企業をアピール
オリジナルゆるキャラ応援グッズがInnovation Print Awardsで入賞
今年1月、国内外の富士フイルムグループの印刷機器ユーザーによるデジタル印刷作品を評価するコンテスト「Innovation Print Awards」の2021年度入賞作品が発表された。日本からは4社、5作品が入賞した。八丁堀に本社をおく株式会社白橋も、そのうちの1社。いわゆる“巣ごもり”生活が続く中、在宅時間を前向きにとらえるグッズとして誕生した製品で、オリジナルのゆるキャラ「nonchan」を使い、家族が一緒に東京オリ・パラ大会を応援するグッズ『「nonchan」とおうちde応援!』が、マルチピース部門の第2位となった。今回の商品づくりは、若手人材の活躍の場の創出と挑戦する企業姿勢をアピールするものづくりを目的に始動したが、新しい顧客との出会いづくりにも繋がったという。同プロジェクトの責任者でもある同社取締役の白橋昌磨氏と、グッズ開発を主導した営業グループの小林安祐美氏に話を伺った。
若手活躍の場をつくる新戦略開発室
富士フイルムビジネスイノベーションが主催する「2021年度イノベーション・プリント・アワード(Innovation Print Awards)」のマルチピース部門で第2位となった白橋の『「nonchan」とおうちde応援!』は、同社オリジナルのゆるキャラ“nonchan”を使って開発した家族が一緒に応援できる東京オリ・パラ大会応援グッズ。
今回のアワードには、富士フイルムビジネスイノベーションからの誘いもあり、もう一つの超高級名刺『筆文字名刺』とあわせて2点出展した。
『「nonchan」とおうちde応援!』は、おうちでメガホン 手づくりキット(3枚入り)、おうちのテーブルマット(4枚入り)、おうちでメダリスト(金/銀/銅の各3枚入り)、おうちでうちわ(2枚入り)、彩りガーランド(8枚入り)の5製品から成る。いずれも基本的には社内のデジタル印刷システム(プロダクションプリンターColor 1000i Press/Versant2100)を活用してプリントし、細かな加工も自社のノウハウを活かして作成。同社のネットショップ『「nonchan」の小部屋』でも販売している。
グッズキャラクター「nonchan」は、もともと2021年用の年賀状キャラクターとして誕生したもの。若い人材に“今、何をすべきだと思うか”という投げかけがきっかけとなっている。若い人からの意見で出てきたのが、コロナ禍で会えない人へ年賀状で会いに行くというものだった。そこで、独自色を出すためにオリジナルキャラクターを作成し、年賀状のデザインに採用した。
2021年年賀向けの「nonchan」年賀状は、テレビ等でも紹介され、想像以上の反響を得ることとなり、BtoBの仕事をメインとしてきた同社としては「BtoCでこれほど大きな反響のあった仕事は、創業から95年の歴史の中でも初めてでした。取り組むにあたっての課題も見えましたが、可能性も感じる取り組みになりました」と振り返る白橋取締役。この成果がきっかけとなり、若手社員の活躍の場をつくる部署として、2021年4月、「新戦略開発室」を開設した。
その新戦略開発室が、次の活動として生み出したのが、『「nonchan」とおうちde応援!』である。製品化にあたって、若手の声が現実になることを第一に取り組みがスタート。“作りたい”という思いだけでなく、実際に制作できるか、販売できるかまで考えて開発していった。目的としては、若手人材が活躍できる場の構築と、一企業として新しいものづくりにチャレンジしている会社であることを表現するツールになることを目指した。
在宅時間を楽しく過ごせるグッズ
『「nonchan」とおうちde応援!』の製品づくりでは、「コロナ禍で“お家時間”が長くなっていることを後ろ向きに捉えるのではなく、楽しく過ごすためのグッズを作りたいと思いました。オリンピックは、実際に見に行けないからこそ、“お家にいながら応援する”ことをコンセプトに作成しました」と語る小林氏。「ランチョンマット」や「コースター」など日常的に家庭で使える物と、一大イベントのオリ・パラ大会という要素を掛け合わせた商品ラインナップになっている。
例えば「メガホン」はペーパークラフトなので、親子で1枚の用紙から切り貼りして一緒に作る楽しさを提供。商品化の過程では、現場のベテラン社員も一緒になって試行錯誤するほほえましい時間ももたらした。一方「うちわ」は、同社のオリジナルDM商材「うちわメール」の加工技術を応用したもの。通常はクーポンやお店の宣伝グッズとして採用されているものを、場を盛り上げる応援グッズの一つに採用した。
雰囲気づくりに貢献する「ガーランド」(7種のイラスト・8枚組み)のイラストには順番があり、“ゴロ寝している「nonchan」が、日本人選手の活躍を見ているうちに立ち上がり、一生懸命応援しちゃう”というストーリーになっている。
通常の家庭生活の中で使えるものとして加えた「コースター」は、オリ・パラ大会には必須のメダルを模しており、裏返すとコースターになる。小さいお子さんに「良くお手伝いができました」とメダルを渡すシーンにも使える。テーブルマットは4枚がそれぞれ異なる絵柄になっているので、兄弟や家族で楽しく選んで使える。
新しい挑戦が新しい顧客を呼ぶ
専用のネットショップ『「nonchan」の小部屋』を開設したことも、新しい変化を生み出す結果に繋がった。同サイトの開設に合わせて、社員全員のメールの署名欄にショップアドレスを加えた。その結果、「あのサイト見たよ」「面白いことやっているね」と、普段は反応の少ない顧客先からも振り向いてもらう効果もあった。
「単に受注したものを作るだけでなく、新しいことにも挑戦している会社だということのアピールにも繋がった」という白橋取締役。中小企業にとって自社のPRは難しく、新規開拓の大きな課題にもなっている。「“nonchan”のグッズづくりがフックとなって、その先の、これまでは出会えなかったお客様へのトビラを開いたことは大きな成果だと感じています」と白橋取締役は語っている。
また「BtoBの仕事をしてきた中で、お客様に対して出来ることがまだまだあると思います。今後も、nonchanに限らず、お客様に響くようなアイテムを創っていきたいです」と小林氏。
中小印刷会社が他社との違いを出していくことは難しい。印刷クライアントにとっても出入りする業者は多い。その中で、興味を持ってもらうためにも、中小印刷業がオリジナルキャラクターを持つことは効果があると感じている。「中小企業が尖ることは難しいですが、尖るためのツールとしてキャラクターを活用する。これによりお客様から興味を示してもらえるならば、続ける意味のある挑戦だと思います。個人の主観にアプローチをしていかなければ成長できない時代になりました。BtoCに向けたチャレンジを一つの軸にしていこうと取り組んでいます」と白橋取締役は語っている。