登プリント社 FormMagicで一段上のバリアブル印刷を
表組機能、処理速度を高く評価
株式会社登プリント社(大阪府東大阪市)は富士フイルムのバリアブル印刷ソフト「FormMagic5」の導入に向けて検証を進めた結果、このほど導入を決定した。同社は戦略上、バリアブル印刷を重視しており、FormMagic5の可変グラフ生成機能や処理速度を高く評価。さらなる付加価値向上を図っていく。
確実に届ける“間違えない”価値
同社は1948年、謄写版印刷業として創業。主に頁物印刷を主力に事業を拡張してきた。現在は菊半裁4色機をはじめ、カラーオンデマンド印刷機4台、モノクロオンデマンド印刷機2台の印刷機器、無線綴じ機、中綴じ機など製本・加工機を揃え、販促物の企画提案から発送までのサービスを展開している。多くのバリアブル印刷の案件も手掛け、高いデータハンドリングの技術を有している。
同社のバリアブル印刷技術のベースは頁物組版のバッチ処理。かつて地元の商工業団体から受託した会員企業を紹介する冊子は、1,200社の社名、所在地、特徴などを組版する必要があった。同社ではバッチ処理により高速組版して納品。データを活用して効率よく業務を進める下地となった。
同社専務取締役の岩下晃治氏は「経営戦略としてバリアブル印刷を重視しています。10年前にはできなかったことが、ソフトウェアの進化で可能になったと感じています。私たちが手掛けるのは大手のデータプリント業と異なり、主に地域の企業や店舗、保育園・幼稚園などに向けた可変印刷物です」と述べる。同社が受注するバリアブル印刷は教育機関・企業の各種賞状、表紙の写真と名前を差し込みする卒園アルバムをはじめ、多岐にわたる。
約500店舗を運営するチェーン店のプライスPOPは、商品名、メーカー名、仕様、特徴、使用者の適性、可変QRコードなど1つの商品で11ヵ所が差し替わる。商品は300種類。店舗ごとに異なる商品を扱うため、発送する枚数・種類が変わってくる。
同社ではバリアブル印刷ソフトで可変のプライスPOPを一気に印刷。発送する店舗順に自動丁合しつつ、合紙を入れてセット内容を判別できるようにしている。これにより人によるセット作業をなくし、高効率でミスがない仕組みを構築した。請求書も各店舗に送るため、店舗データと紐づけて、請求先の店舗、住所、請求金額や発注された内容の明細をバリアブルで生成する。
「とにかく間違いなく届けなければなりません。足りなくても、多くてもいけません」。バリアブルなので全数を検査すれば、時間もコストもかかる。そのため、間違えない仕組みづくりとデータチェック、データ修正がポイントになる。
オフィス系の表計算ソフトでは、文字列の後ろにスペースが入っていても目視で確認できない。半角・全角の混在、郵便番号など数字先頭の“0”の欠けなど、クライアントから提供されるデータに不備があれば、印刷後に不具合が生じる。データチェック・修正にはできるだけ人手を入れない。クライアントに修正してもらうか、ソフト上でチェックする。「バリアブル印刷では間違えないことに価値があります。メーカーが頑張って作っているのでソフトは間違いません」と、データのチェックリストの作成や修正方法もノウハウになってくる。
外字資産の継承、事業継続の信頼感でも
FormMagicを選択
FormMagic5の導入を決定した大きな理由は“差別化”。宛名や名刺の安価な専用ソフトは数多く存在しているが、印刷の専業者として、一般消費者でも扱える簡易的なソフトでは価値が生まれにくい。同社では書体やレイアウトなどの見せ方、文字溢れの際の処理、複数個所や画像の可変など、専業者ならではの技術・ノウハウを重視している。
現在、利用しているバリアブルソフトは専業者向けとして操作性、機能性ともに高く評価しているが、2021年11月30日に販売が終了し、2024年11月29日にはサポートも終わる。「サポート終了の連絡が来たときにはどう対応しようかと。何台か購入してバックアップにしようとも考えましたが、一段と競争力を高めようとFormMagicの検討を開始しました」。同社では試用ライセンスを取得してソフトとしての機能と特徴を検証。可変位置の詳細な設定や日本語組版の機能が高く、既設のバリアブルソフトにはない可変グラフの生成機能や処理速度に新たなビジネスの可能性を感じた。
加えて事業の継続性を考慮した際に、ベンダーとして富士フイルムと富士フイルムグローバルグラフィックシステムズへの信頼感は影響した。「ベンチャーのソフトではまた同じことが起こりかねないというリスクがあります。ソフトの機能・特徴や操作方法を習得したのにまた一からやり直しではビジネスになりません。OSは今後も必ず変化・進化していきます。長いサポートが必要なので、ソフト選定にはしっかりしたメーカーという前提がありました」。
賞状の名前や宛名の可変印字の依頼も多い同社では、多くの外字を有している。それらの“資産”が継承できることもFormMagicを選択する動機になった。リピート性が高いバリアブル印刷の業務はテンプレートや可変データ、外字の流用により、再受注時に生産効率が上がる。外字以外のデータ資産が移行できる点も大きかった。
「もちろん既設のバリアブルソフトと、FormMagicではソフトとしての基本的な思想が違いますから、新たに覚えていく操作はあります。しかし、さらなる進化のためにはそのハードルを超えなければいけません。やる気の問題だと思います」
FormMagicで新需要創出へ
商業印刷や事務用印刷の需要は、新型コロナウイルス感染症により集客のための販促活動の減少、在宅勤務によるペーパレス化の影響を受けている。一方、同社で受注するバリアブル印刷業務はほとんど影響を受けていない。卒業証書や卒園アルバム、店内POPなどは減っていない。「POPは商品を売るために、来店客に情報を伝える役割があります。売り手が説明しなくても、機能と値段に納得すれば消費者との売買が成立するのです。商品を売るための部品といえます」。
今後はバリアブル印刷を利用し、印刷物としての機能に限らず、顧客にデータをフィードバックするサービス展開を考えている。「例えばチケットであれば、どのゲートからその日に何人が入場したか、ナンバーや可変QRコードでリアルタイムに把握できます」。FormMagicはそうした情報をグラフとして表せる他、QRコードやナンバリングでも活用できるため、クライアントの次の経営戦略、営業戦略、人員配置にも寄与できる可能性を持つ。
岩下専務は「お客様のイベントが成功すれば、信頼が高まり、受注機会が増えると思います」とFormMagicで新たな需要創出を見据えている。
株式会社登プリント社 大阪府東大阪市横沼町1-14-14