小倉印刷 約0.06㎜の40番台ノンカーボン紙をPODで安定出力

小倉印刷 約0.06㎜の40番台ノンカーボン紙をPODで安定出力

“顧客接点”の強化を後押しするRICOH Pro C9210

 ECサイトで複写伝票、封筒を全国に一貫生産で提供する小倉印刷株式会社(小倉敬司代表取締役)は、2019年5月にRICOH Pro C9210を導入し、リコーの手厚いサポートにより40番台のノンカーボン紙(約0.06㎜)の安定した出力を実現した。Pro C9210による属人化の解消、省人化は、同社が何より重視している“顧客接点”の強化を力強く後押ししている。Pro C9210導入の経緯やその効果、今後の展望について、有馬健介取締役製造部長に話を伺った。

 小倉印刷株式会社は1965年、活版印刷事業を生業に姫路市神谷町で創業した。以来約50年間、地場の同業社をメイン顧客としていたが、高齢化や人口減少による消費の低迷に危機感を抱き、2011年にネット印刷通販事業をスタート。同年、ECサイト「e伝票ドットコム」を開設し、小倉敬司氏が3代目社長に就任した2016年にECサイト「e封筒ドットコム」を立ち上げた。ECサイトの開設から1、2年間は印刷通販に世間のなじみが薄く、十分に周知できずユーザー数に伸び悩んだ。5年ほど前からは、SEO対策がヒットし、徐々にユーザーから認められるようになったと言う。

小倉印刷のe伝票ドットコム

 現在では首都圏を中心に「e伝票ドットコム」のユーザー数が約1万、「e伝票ドットコム」が約4,000のユーザー数を誇る。中心事業が伝票と封筒のネット印刷にシフトするに伴い、ECサイトのテンプレートの価格表に乗っていないような相談でも価格や納期について迅速にレスポンスできるよう、当初パートタイムが担当していたサイト窓口に社員を重点的に採用していった。出荷量も大幅に増加し、既成封筒と感圧紙(平版部門)の購入数が、各資材メーカーで全国トップレベルとして表彰を受けるまでに成長した。

 ネット印刷事業が軌道に乗る前の2013年に異業種から入社した有馬健介取締役製造部長は、1からオフセット印刷機について学び、入社2年後に工場長に抜擢。2016年に取締役製造部長に就任した。

 「小ロット多品種の受注が多い中、表3色・裏3色の伝票1冊のために6版使うこともあり、コスト計算の煩雑さに悩まされていました。また、オフセット印刷機の扱いを教わる際、紙が通らない、インキがのらない、水が汚れる、などを職人気質の先輩オペレーターに相談すると、『調整ができていない』と注意され、説明が全くロジカルではありませんでした」(有馬取締役)

 有馬氏は後輩ができてからも、自身が教わったように「調整がうまくいっていない」という説明しかできずに歯がゆい思いをした。加えて、印刷機のオペレーターは男性がやるものだという風潮にも疑問を感じていた。そこで技術継承の解決策として、できるだけ数値化したマニュアル作成に取り組みつつ、属人化の解消を図り、デジタル印刷機によるスキルレス化を目指した。

高い品質・見当精度、迅速なサンプル

作成を可能にするRICOH Pro C9210

 デジタル印刷機を活用するにあたり、既設機ではノンカーボン紙の50番台(約0.07㎜)まで出力できるが、市場で最も使用されている40番台(約0.06㎜)が通らないことが大きな課題だった。各メーカーのデジタル印刷機でテストを重ねたものの、通る機械が見つからず苦心していたところ、大塚商会からRICOH Pro C9210を紹介され、2019年5月に導入した。

 「導入を決めた最大の理由は、リコーのサービスメンテナンスの担当者が中心となり、40番台を通すために時間を問わず努力していただけたことです。導入から立ち上げまで4ヵ月ほどかかりましたが、その間、来社しない日がないほどでした。印刷会社もそうであるように、物を売ることが仕事ではなく、お客様の望みを叶えることが仕事だと改めて実感できるようなサポートをしていただきました」(有馬取締役)

RICOH Pro C9210

 ノーカーボン紙へのベストなトナー定着温度から、現場の適切な温湿度、ユニットを交換しての検証など多岐にわたる調整を経て、現在は安定して40番台の感圧紙が出力できている。Pro C9210でノーカーボン紙を大量に出力している例はほかにほとんどないため、ローラーやユニット、ガラス面の消耗度合い、交換頻度などについて手厚いサポートを受けつつ一緒に研究していけることに安心感を覚えていると言う。

 また、Pro C9210はスイング動作とシフト動作を高速で行うローラーにより、複写伝票で重要となる高い見当精度を実現している。ほかにも、品質の安定性や正確なナンバリング、サンプル作成などの導入メリットを挙げる。

 同社ではこれまで、オフセット印刷でベタの濃淡の差を指摘されることがあった。Pro C9210に替えてからは指摘がなくなり、ユーザーから高い信頼を獲得している。オフセット印刷機ではナンバリングの際、最初の番号や紙詰まり後のリスタート時に番号を手入力する必要があり、ミス・ロスの原因になっていた。Pro C9210で伝票出力ができることでナンバリングのミスに関する心配が解消。版の出力や丁合の必要がなく1部からの迅速なサンプル作成が可能になったことも営業面で大いに貢献している。

RICOH Pro C9210で出力した
4色の複写伝票

 「今年の1月には、3年ほどお付き合いのある日用品業界の大手企業様から、全国数10ヵ所の営業担当者の伝票ツールを作り直したいと連絡をいただきました。すぐにサンプルが見たいとのことで、製作の時間は20分ほどしかありませんでしたが、その場で『できます』と応え、受注につなげることができました。日に2、3件ある当日発送の発注にも対応できる安心感があります」(有馬取締役)

さらなる挑戦に向けて邁進

 好調の印刷通販サイトを実現した背景には、同社の失敗を恐れないチャレンジ精神がある。先進的な考えを持つ小倉社長はこれまで新規事業をいくつも打ち立て、現場の意見を取り入れ設備を増強してきた。その多くは軌道に乗らなかったが、失敗はマイナスではなく経験を積むことと捉え、チャレンジを続けたことが成果へとつながった。帳票印刷でPro C9210をフル活用することもその1つ。

 「当社は企業理念『いつも身近で誠実』のもと、“顧客接点を何より大事にする会社”です。常に業務に追われていると、余裕のない状況が態度に出るため、社員にはゆとりが必要です。それには、ワークの量を簡素化するか、作業を自動化するかしかありません。Pro C9210が属人化を解消し、現場だけでなく制作の担当者の負担も軽減され、顧客様の要望に応えるための時間が増えたことはとても大きいです」(有馬取締役)

 伝票と並ぶ中心事業の封筒印刷では、コロナ禍で現物の郵送が増えていることに着眼し、更紙に濁らせたイエローで文字を綴ったデザイン性の高い封筒や、蛍光色のネオンピンク、黒い紙にホワイトで印字など目に留まりやすい封筒を売り出している。これらは協力会社のRICOH Pro C7200Sで出力しており、小倉印刷でも今後、同機の導入を検討している。

 「ゆくゆくは、オフセット印刷機を出してデジタル印刷機を増設し、最終的にはお客様がECサイトに入力した情報が、自動でチェックされ機械に流れて出力されるような自動化を実現し、顧客接点のための時間をさらに増やしたいと考えています」(有馬取締役)

 同社は2月末から新しく、印刷や伝票製本など工程の一部分だけを請け負うECサイトの開設を予定するなど、さらなる挑戦に余念がない。

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