ユニオンネットワーク 多様な素材、多様な商材でビジネス広げる
ラテックスインク搭載のRICOH Pro Lが活躍
ユニオンネットワーク株式会社はラテックスインク搭載のインクジェットプリンターRICOH Pro L5310eを活用し、LIMEXや壁紙をはじめとする様々な素材への印刷でビジネスの幅を広げている。主力の名刺印刷が新型コロナウイルスによる対面機会の減少で低迷する中、新たな設備の追加で事業の再構築に着手。“拡・デジタル印刷”の取り組みが成果を上げつつある。
個人情報からの派生ビジネス
従業員数30名の同社は2001年に名刺印刷専門業として創業。個人情報を扱うため、情報セキュリティ体制を構築するとともに、名刺の印刷業務に限らず、クライアントの名刺発注業務の効率化や負荷軽減に目を向けて、様々なソリューションを提供してきた。Webを通して承認から発注までを効率化する『U-net+OrderSystem』や、15時までの注文で翌日発送のオンデマンド対応など、顧客の課題解決につながるサービスを積み重ね、取引先1,500社、年間印刷枚数約4,500万枚にまで事業が成長した。
一方、新型コロナウイルスにより対面式の営業活動やイベントの自粛などにより名刺交換の機会が減少。同社でもコロナ禍前に売上構成比で8割あった名刺需要は縮小した。
同社では名刺印刷で培った個人情報の管理や印刷のノウハウから、挨拶状・案内状・表彰状へと事業領域を拡張。さらに宛名印刷を含めたダイレクトメールなどの販促系の印刷へと枝葉を伸ばしていた。その礎となったのが取引先1,500社の“信頼”。通常の営業活動に加え、口コミの新規顧客も多く、名刺印刷からビジネスを派生させる土壌ができていた。
同社の設備はUV装置付きの卓上オフセット印刷機6台、A3縦通しの軽オフセット5台に加え、計14台のデジタル印刷機が稼動。昨年3月にはRICOH Pro C9210、RICOH Pro C7210Sを加え、リコー機を3台設置している。同社の松原匡隆社長はこれらのデジタル印刷機を有効活用し、名刺印刷以外の事業に力を入れ始めた。
「名刺の売上はコロナ禍前に比べて2割減少しました。現在、POPやポスター、冊子物の印刷物に力を入れています。当社の強みは情報セキュリティや納期厳守の安心感と信頼感です。新規のお客様が月に5件ぐらいありますが、ほとんどが口コミによる紹介です。名刺以外の印刷もユニオンさんで、と言って頂けることは本当にありがたいことです」
様々なメーカーのデジタル印刷機を保有するのは、それぞれの特性を活かして顧客の幅広いニーズを取り込むため。「お客様が望むものに近い製品を追求しています」という視点から、昨年8月、様々な素材に対応するラテックスインク搭載のワイドフォーマットプロダクションプリンター『RICOH Pro L』を導入した。
店内装飾を一手に
ラテックスインクは水性インクに含まれる樹脂が溶解して皮膜をつくり、メディアに顔料を定着させる。塩ビやターポリンなどにも出力することが可能で、インク臭が極めて少なく屋内で利用する印刷物にも向いている。8本装着できるインクカートリッジは、用途に合わせてカラー構成を選ぶことができる。同社ではCMYKを各2本搭載し、連続印刷を想定した構成としている。
導入のきっかけは、2年間で2,000店舗の開店を予定している多店舗企業向けの印刷物の製造受託だった。印刷枚数の増加が見込まれたため、用紙専用の水性大判インクジェットプリンターを増設したが、「もっと違うことができないかと紙以外のメディアへの可能性を探っていました」と、様々な素材に対応するRICOH Pro Lの導入を検討。店内向けの印刷物が多いことも低臭インクの機種を選択する理由となった。
松原社長は先に増設した水性大判インクジェットプリンターと比較して、「マット紙とコート紙にしか出力できず、特殊素材は外注していました。また、乾燥状態によって即日対応が難しく、出力後に梱包する際、傷がつかないよう気を遣います。RICOH Pro Lではそれらの課題が解消されました」と評価。とくにユニオンネットワークの強みである“即日対応”と、RICOH Pro Lの速乾性がマッチした。1日約30件入る当日出荷の案件でも、その速乾性の特性が発揮されている。また、素材についても、クライアントにプラスチック製品の代替として石灰石を主原料するLIMEXを提案したところ、すぐに採用された。PPで補強しなくても耐水性と耐久性を持ち、店舗内での水回りに利用する印刷物に適していることが決め手となった。
「ガラスに貼るフィルム素材の仕事も頂いています。様々なメディアに対応できるので、名刺の落ち込みをカバーできると感じています」。今まで外注で最短5日かかっていたウインドウフィルムも、ユニオンネットワーク仕様での納品が可能になった。
ブランドカラーも徹底
多店舗企業の業務では、ライメックス製のテーブルPOPやポスター、シール、QRコード入りショップカード、ナンバー入りワンドリンクチケットクーポン、メニューなど約10種類を受注している。これらをRICOH Pro LとRICOH Pro Cなどデジタル印刷機で印刷し、各店舗に納品するが、店舗ごとに座席数や窓の数、持ち帰りメニューの有無が異なり、納める印刷物の種類や数が変わる。
同社では間違えずに確実に届けるために基幹システムの受注情報を利用して、現場に納品情報を伝える。現場では指示書に基づき、各印刷物をパッキングして発送。システムによる管理を徹底している。これにより今まで販促品ごとに異なる業者に発注していたクライアントの業務が簡略化。一括で納品管理ができる利便性を提供している。
多店舗企業はブランドにこだわりがあるので、コーポレートカラーの品質に厳しい目を持っている。コーポレートカラーについても、長年、名刺印刷で培ってきたノウハウが活かされている。
「名刺のロゴはコーポレートカラーの再現が重要です。当社は日々のデバイスのキャリブレーションで一定の品質で出力できるようにしています」。特色についても配合データの作り方と機械の設定のノウハウを活かし、デジタル印刷機に取り組み始めたころから色の再現性にこだわってきた。RICOH Pro Cでは装飾品の世界的なブランドのコーポレートカラーを再現したこともある。
RICOH Pro Lの発色については「食品関連は見た目のおいしさを出していく必要があります同じポスターの絵柄を出力しても、写真の画質はRICOH Pro Lが良いですね」と高得点を付けている。現場のオペレータもCMYKの4色構成でもオフセット印刷では難しいバイオレット系、オレンジ系の色域の広さを指摘している。
2021年11月にはJR東日本山手線の新駅、高輪ゲートウェイ前の再開発工事現場に、地域のイラストで街を活性化する『田町マーチング委員会』のイラストが掲示された。同社のRICOH Proで出力したもので、無機質な風景を彩り、インクの屋外耐性も証明した。
松原社長は「RICOH Pro Lも、RICOH Pro Cも様々な素材に出力でき、多くの商品が扱えます。これを当社の武器にしていきます。とくに大判インクジェットは材質と粘着性で幅広い特性を持つ壁紙のような素材も扱います。メディアの特性には奥が深いものがあります。そうしたノウハウを今後、積み上げていきたいと考えています」と展望している。