コンパス QRコードを利用した販促支援ツール『QRomo(キュロモ)』を展開
時代のニーズ捉え、半歩先を行く印刷会社へ
小ロット・多品種・短納期を強みに冊子物を中心に手掛ける株式会社コンパスは、いち早くデジタル化を図り、約15年前にデジタル印刷機を導入した。2020年2月にはRICOH Pro C7200Sを設備し、QRコードのバリアブル印字やスペシャルカラーの展開を図るほか、QRコードを利用した販促支援ツール『QRomo(キュロモ)』を提供。メイン顧客である印刷会社の縁の下の力持ちとして、時代のニーズの半歩先をいく会社を目指している。東條章樹代表取締役に話を伺った。
株式会社コンパスは、1961年に大阪市北区で東條プリント工業として創業し、学会の論文集や大学のシラバスなどモノクロのページ物印刷を中心事業として設備・人材を拡充していった。現在は、顧客のニーズに応えるかたちで変化を続け、グループ総勢16名で企画、制作から印刷、製本、宛名印字、封入、発送までワンストップで手掛ける。
『共存 共栄 共創』を企業理念に掲げ、1,000~2,000部の小ロット多品種をメインにA3サイズ以下の商業印刷全般を得意としている。設備は、菊四裁4色機、2色機と軽オフセット印刷機4台の計6台に、無線綴じ、中綴じ、折り、断裁など各種後加工機も取り揃える。
顧客の約9割が印刷会社で、近年は印刷設備を持たないファブレス化が進んでいることにより、生産を同社に依存するケースが増加傾向にあると言う。残り1割は、デザイナーを社内に持つ企業からの受注となっている。
「地方では製版から後加工まで一通り揃っている印刷会社が多いですが、都市圏では外注先が多く、分業化されているため、設備を持たない印刷会社が多いです。ただ、お客様からしたら、例えば印刷、製本、発送を別々の会社に頼むのは手間になります。そうしたお客様の面倒事は必ず商売につながるため、当社の強みであるワンストップ対応を活かし、『面倒事を涼しい顔して行う』ことを社内で徹底しています」(東條社長)
約15年前には、今後の軽オフセット印刷の需要減少を予測し、いち早くデジタル化を図り、モノクロのデジタル印刷機2台を導入。数年間運用していたが、定着温度が高すぎることによる紙の波うちや、ワックスではなくオイルによるトナーの定着による過剰なテカリなどが発生し、まだオフセット印刷機の代替にできるような段階ではなかった。情報伝達という意味では問題なかったが、取引先である印刷会社には認められないクオリティだった。トナーの印刷が受け入れられず行き詰っていたところ、約10年前に大塚商会から提案があり、カラーとモノクロの兼用機としてRICOH Pro C751を導入した。その後、約5年前にRICOH Pro C7100S、2020年2月にRICOH Pro C7200Sを更新で設備した。
RICOH Pro C7200Sのスペシャルカラーで新たな提案図る
「近年、加速するデジタルシフトやDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗るには、経験がものを言う旧態依然とした業界のアナログ体質から脱却し、新卒の社員でもベテランと同じ品質で生産できるようにしていかなければならないと感じています。当社でもPro C7200Sは女性オペレーターが責任者として操作しています」(東條社長)
当初はオフセット印刷後の可変部分の印字をメインに使用していたが、オペレーションの手軽さや後工程の時間短縮を重視し、従来オフセット印刷機で刷っていた商品も置き換わっていき、使用頻度が増えていった。
それまでデジタル印刷機で出力した印刷物は、オフセット印刷と比較してクレーム対象になることが多いと営業担当者からの指摘が頻発していた。Pro C7100Sに更新してからはオフセット印刷に迫る品質が実現し、営業担当者の説得力が向上した。
「Pro C7200Sでは、さらに品質の安定度が上がり、色むらが減りました。メイン顧客先である印刷会社のプロの目で見ても、パッと見ではオフセット印刷と判別できないほどです。取引先の都合上、印刷物の制作や設計に関わる機会はあまり多くないのですが、スペシャルカラーを使用した印刷物の実績も出ています」(東條社長)
Pro C7200Sを使用した印刷物は、絵本などのカラー冊子も好評なほか、マーメイドの色紙にホワイトで絵柄や来場者の名前を印字したウェディングカードの受注もあり、納めた際には大変喜ばれたと言う。現在は、大塚商会提供のスペシャルカラーを使ったサンプル作成用のカラーデータをベースに見本帳を製作し、さらなる周知を目指している。
「リコーさんにはマシントラブルの迅速な対応など素晴らしいサポートをしていただいています。大塚商会さんは独自に多くのマテリアルでテストを繰り返し、刷りやすい紙、従来機では刷れないようなマテリアル、Pro C7200Sで製作できる具体的な商品などの情報を共有していただき、販促の強い味方になっています。メーカーとも違う視点で、いかに印刷機をうまくまわしていくかを検証した上で教えてくれるので、ユーザーが時間をかけてテストする必要もなく、大変助かっています」(東條社長)
印刷物発注につながるマーケティングツール
同社では単にオフセット印刷機の置き換えとしてデジタル印刷機を活用するのではなく、バリアブル印刷やPro C7200Sならではのスペシャルカラーなどを活かした運用を進めている。QRコードでは、コロナ禍の影響で抽選会場に人が集まるくじ引きができなくなった大手ショッピングセンターからの発注で、三角くじの代わりにQRコードをカードに印字。カードは各店舗で配布され、非接触で抽選会が実施された。
また、同社はコロナ禍での需要掘り起こしとして、QRコードを利用した販促支援ツール『QRomo(キュロモ)』を提供している。ユーザーはQRコードを読み込むだけで簡単にキャンペーンの参加が可能で、店舗(イベント主催者)はアクセス日時や媒体、参加状況などのデータ分析ができる。イベントの効果測定から、より効果的なマーケティングが可能となる。
東條社長は、「QRomoを提供していくにあたり、BtoBからBtoCへの営業が増加傾向にあり、その中でスペシャルカラーを活用した販促ツールも提案していこうと考えています。この2年間は、非接触というキーワードの中で新しいデジタルツールを販売する良いきっかけにもなりました。QRomoは紙以外の新しい武器であり、あくまでも紙の印刷物につなげるための1つのツールだと捉えています。今後も、小さい会社だからこそできるスピーディな判断や、柔軟性をさらに強化し、時代のニーズの半歩先を行ける会社を目指すことで、印刷会社の縁の下の力持ち的存在で在り続けたいと考えています」と従来の事業を中心にしつつ、新たな取り組みにも意欲を見せる。
※QRコードの商標は株式会社デンソーウェーブの登録商標です