インタビュー~ミマキエンジニアリング開発型企業・ミマキが目指す将来
ミマキエンジニアリング 常務取締役営業本部長 池田和明 氏
インクジェットプリンタ・カッティングプロッタの株式会社ミマキエンジニアリング(小林久之社長)は、今年8月に創業40周年を迎えた。開発型企業として40年を歩んできた同社は、ペンプロッタの開発で培った技術をベースに、カッティングプロッタ、インクジェットプリンタを開発。各業界でデジタル化を促進しながら新しい市場を築いてきた。同社の現状と今後について、同社常務取締役営業本部長の池田和明氏に話を伺った。
創業40周年、SG・IP・TA各市場拓く
ミマキエンジニアリングは今年、40周年を迎えました。この3月にはJASDAQから東証1部に上場しています。
グループ会社は現在14社。販売会社10社と開発・製造会社4社、プリントサービス関連1社です(台湾の関連会社は販売・製造も行っているため1社としてカウント)。従業員数は連結で1,400名余りとなります。
主要市場は「SG-サイングラフィックス」、「IP-インダストリアルプロダクツ」、「TA-テキスタイル&アパレル」の3つです。売上構成比はSGが51.0%、IPが26.8%、TAが12.3%。これらの市場の海外比率は75%です。連結売上は466億円で、今期500億円を目指しています。
「SG市場」は主にサイン業界で、印刷業界とオーバーラッピングする点があります。日本では棲み分けられていますが、米国の印刷とサインの市場は重ねっており、日本でもそうした流れが進むものと見ています。
この分野ではソルベント、UV、ラテックスと3タイプのインクジェットプリンタを販売しており、60㎝幅から3.2m幅までの機種を揃えています。
「IP市場」はUVインクジェットプリンタが中核となります。JFXシリーズは大判のフラットベッドタイプ。UJFシリーズはノベルティ向けの機種です。今年9月に開催されたIGAS2015で発表した「UJF-7151 plus」は、スクリーン印刷の版サイズに合わせた製品で、工業用スクリーン印刷分野のデジタル化を支援する目的で開発しました。非用紙素材への印刷に力を入れており、これらのインクジェットプリンタは銘板やスマホケース、玩具の印刷に活用されています。
「TA市場」はここ数年でかなりデジタル化が進みました。昇華転写型のプリンタが中心で、ファストファッションの伸びとともに出荷台数が増えています。この市場は流通の仕組みが大きく変わり、デザインから製品が店頭に並ぶまでわずか2週間と短期間です。インクジェットプリンタが受け入れられたのは、サンプルを作っていられないほど、タイトなスパンでの製品化が求められるためです。今後、壁紙の分野でもインクジェット化が進んでいくと考えています。
研究開発投資で新しい価値を
当社は創業期から開発型企業として、研究開発に積極的に投資してきました。現在、年間売上の6~8%を開発に投資しています。2008年のリーマンショック後はかなり利益が圧迫されましたが、それでも開発投資を続けました。その結果、市場を牽引する製品を出すことができ、現在の業績につながっています。
「UJF-7151 plus」は、プリント範囲を710㎜×510㎜とスクリーン印刷で使用される菊半裁判に対応しました。機械構造を強化することでインクの着弾精度を高め、高精度・高画質プリントを実現しています。当社は「UJF-7151 plus」をベースに、スクリーン印刷分野のオートメーション化を進めて行きたいと考えています。将来的に水平方向にアームが動作するスカラロボットと連携し、次工程に自動的に製品を流すシステムの開発を展望しています。
ノベルティ印刷向けにいち早く開発した「UJF-3042」は国内で小ロット印刷向けに、印刷会社様をはじめ、印章店などにも導入頂いています。今後は、精度の高い「UJF-7151 plus」を自動化することで、もっと印刷会社様に受け入れられると見ています。それにはワークフローRIPとの連携やソフトウェア、オプションを拡充する必要があります。「UJF-7151 plus」に合わせたカッティングプロッタを用意し、最終製品までを無人化できればと思います。
当社はなるべく新しい分野に向けて、他社の後追いをしないような製品開発を指向しています。11月にイタリアで開催された繊維・アパレル産業向けの展示会「ITMA2015」では、テキスタイル業務向けの新しいWorkflowsystemを参考出展しました。テキスタイル向けのインクジェットプリンタの設定条件は非常に多く、出力条件、転写温度などの入力工程で人為的なミスが発生しやすい課題がありました。このWorkflowsystemではバーコードで設定条件呼び出しができ、メディアさえセットすれば各種設定が自動化されます。今後はプリンタ単体に加え、ソフトウェアや周辺技術をセットにしたソリューション提案を強化していきたいと思います。
コア技術を広げ3D造形に進出
ミマキエンジニアリングは1985年のCAD用のペンプロッタから自社製品の開発を始めました。そこからXY軸を制御する技術を応用し、カッティングプロッタを上市。プリンタで出力したフィルムをカットする手法が看板制作の分野に受け入れられました。さらに1996年にはサイン業界でいち早く、耐光性の高い顔料インクを採用したインクジェットプリンタ「JV-1300」を発表しています。
1998年に発表したテキスタイル向けの「TX-1600S」、「TX2-1600」は、イタリアを中心に5,000台出荷のヒット商品となりました。その後、2002年にソルベントプリンタ、2004年にUV硬化型インクプリンタを市場に投入し、さらに業界でいち早くLED-UV硬化型インクジェットプリンタに取り組んでいます。
当社のコア技術は、「カッティング」、「位置決め」、「インクジェット」、「画像処理」、「インク開発」、「ヘッド制御」などですが、ここに「三次元造形」が加わります。三次元造形はXY軸に加えてZ軸の制御が必要です。当社はヘッドを上下させる技術をすでに持っており、インクを積層していくことは可能です。製品化の目処が立ってきており、この秋からフルカラー3D造形制作サービスを始めました。まず、市場のニーズを見極めた上で製品化するためです。
当社ほど多くのインクのタイプを扱っているメーカーはないと思います。ヘッドとインクのマッチング技術は大きなアドバンテージになっています。ぜひ、今後の新しい製品にご期待頂きたいと思います。