コダック ウィル・マンスフィールド氏インクジェットテクノロジーで変革を支援
コダック合同会社は10月30日、東京都品川区のコダック本社で、米国エンタープライズインクジェットシステム事業部ワールドワイドセールス&マーケティングディレクターのウィル・マンスフィールド氏の来日に伴い記者懇談会を開き、インクジェットプリンティングシステム「Kodak Prosper 6000 プレス」(以下、Prosper 6000)の動向を説明した。マンスフィールド氏が語ったプレゼンテーションの概要を紹介する(文責編集部)。
オフ輪の代替としても導入
Prosper 6000は2015年、権威あるPIAインターテックアワードを受賞した。2015年インクジェット系で受賞した唯一の製品であり、印刷の品質、用紙の対応力の高さが審査員から評価された。
Prosper 6000には商業印刷向けの「Prosper 6000 C」、出版・新聞印刷向けの「Prosper 6000 P」の2つのタイプが用意されている。両機種とも最高印刷速度は毎分300mとの超高速だ。Prosper 6000 Cがグロス紙でも200m/分、Prosper 6000 Pがコート紙でも100m/分の印刷速度を実現している。CモデルとPモデルの違いは紙を冷やすチラーの有無。Cモデルは12ポイントのカード用紙を含む270gsmの厚い紙にも対応している。
本体はインクジェットプリンタの雰囲気ではなく、ヒートセットのオフ輪のような機械となっている。
Prosper 6000を導入したお客様には二つのタイプがある。一つがオフ輪からのリプレースだ。輪転機オーナーはProsper 6000の版替え時間不要、低コストを評価している。損紙、準備時間、人件費のコストダウンにより、すぐに投資効果が見込める。世界各国で印刷市場はショートラン化して、納期の対応もタイトになる傾向にある。Prosper 6000 はそうした潮流にも適合する。
もう一つは新しいアプリケーションの取り込みだ。2008年のdrupa2008以降、すでに様々なインクジェットプリンタが登場しており、コート紙や絵柄面積率の高い印刷物に対応しにくい古いタイプの機種を使うユーザーが、新たにProsper 6000を選択し、リプレースあるいは追加導入している。
高速・高品質を支える技術
Prosper 6000が他社のインクジェットプレスと異なる点は、コンティニュアスインクジェットテクノロジーを採用している点にある。他社が採用しているドロップオンデマンドテクノロジーは必要な時に、用紙にインクを落とすタイプで、インクをできるだけ早く乾燥させるために乾燥用の添加剤を多く含有している。一方、コンティニュアスインクジェットテクノロジーは常にインクを吐出し続けている。絵柄を形成する大きなインクドロップと、絵柄形成に利用しない小さいインクドロップを生成しており、小さいドロップはエアで流され、キャッチャーに収納されてリサイクルされる。コダックが採用しているインク「ナノピグメントテクノロジー」はノズル詰まりの心配がないので、余分な添加剤が不要だ。つまり、インクを低いコストで生産でき、非常に多くの用紙に対応することができる。
Prosper 6000の特筆すべき技術は乾燥機構にある。Prosper 6000以外の乾燥の方式はCMYKを印刷した後にまとめてインクを乾燥させる。Prosper 6000は「インターステーション」という技術により、C、Mの後に乾燥、Yの後に乾燥、Kの後に乾燥と、複数のポイントにドライヤーを搭載している。
紙は水分を吸収する。新聞紙のような上質紙は水分をたくさん吸収できるが、コート紙はあまり含有できない。インクを重ねて紙の水分が飽和するとインクが乾かず、紙にダメージを与え、品質にも影響を与える。インターステーションで乾燥を繰り返すことで、用紙の水分が飽和することが少なくなる。
しかし、インターステーションは非常に難しい技術だ。乾燥を繰り返すことで用紙が伸縮し、見当精度や色精度が合いにくくなる。これを解消したのが「インテリジェントプリントシステム」で、高速で高い精度の印刷を可能にした。
インテリジェントプリントシステムは、色の重ね精度や表裏精度を常にリアルタイムで補正する。カメラが本体に搭載されており、印刷した全ての紙面を撮影し、ズレに応じて横方向、縦方向、ねじれを解消する。
DMをはじめ様々な印刷物に
次にProsper 6000で実際に活用されているアプリケーションを紹介する。
Prosper 6000はインクカバー率が高いダイレクトメールに利用されるケースが多い。グロス仕様のセルフメーラーはがきの事例では毎時59,500枚を全面バリアブル印刷した。もちろんフォーム関連のトランスプロモにも対応している。インクセーバーモードでインクの使用量を削減することができ、非常に低コストで印刷することが可能だ。
最近は雑誌とカタログを統合した新しい「マガログ」というアプリケーションが注目されている。軽量コート紙が使われることが多く、一般的にオフ輪で使われている用紙は1t当たり800ドルで取引されている。カナダのクルーガー社はコダックと協業し、Prosper 6000用にインクジェットに最適な軽量コート紙を開発した。インクジェット用紙がオフセット用紙の倍近くになるのに比べ、1t当たり850~900ドルでオフ輪用と大差がない。
ショートランの書籍市場も注目されており、コダックが狙っている市場でもある。Prosper 6000であれば320頁の書籍を1時間に2,000冊、フルカラーで生産することが可能だ。また、インクジェット技術は新聞の生産にも有効性がある。コダックは新聞業界のインクジェットで60%のシェアを獲得している。日本でも今後、オフ輪の代わりとしてインクジェットの導入が進むと考えられる。新聞の発行部数が減少する一方、広告をローカライズさせたり、遠隔地にデータを送り、リモート印刷させたりすることもできる。
コダックは印刷産業の変革を支援することにコミットしている。世界中にワークフロー、CTP、プレート、カラーマネジメントの技術・製品を供給しており、オフセット印刷についても熟知している。我々は印刷業界に深い関係性を持って、お客様のニーズをしっかりとらえている。これから印刷産業の変革にProsperを活用して頂ければと考えている。
【コダック合同会社】
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