DNP マンガのAI翻訳システムをMantra社と開発、海外版マンガの制作・製造体制を強化
大日本印刷(DNP)は、AI翻訳サービスを展開するMantra社と、マンガを多言語で制作するDNP独自のシステム「DNPマンガオンラインエディトリアルシステム MOES(モエス)」に搭載する、独自のAI翻訳エンジンを開発した。これにより翻訳者が全て手作業で行ってきたマンガの翻訳を、高いレベルでAIがサポートする。DNPでは、同システムの2021年度中の実用化を目指している。
近年、Webサイトやアプリでマンガを楽しむ読者が世界的に増加し、海外に向けて日本のマンガを多言語に翻訳してグローバルに展開していくための制作・製造・流通体制の整備が進められている。中でもマンガの翻訳は、話し言葉が多く、吹き出しごとに文章が途切れるため翻訳にAIを用いることが難しく、人手の制作はコストと負荷が大きくなることから翻訳タイトル数を抑える出版社も多い状況となってる。こうした課題を解決するために、マンガに特化することで精度を高めたAI翻訳エンジンを開発し、MOESに搭載して制作時の生産性の向上を目指す。
MOESは、翻訳版のマンガ制作に必要な翻訳・レタリング・校正・進捗管理等を行うクラウドシステム。DTPソフトを使わずに、画面上に表示されるマンガのレイアウトの吹き出しの中に翻訳した文章を直接入力。確認や修正も同様にレイアウトを見ながら行える。時差のある地域で作業する翻訳者や翻訳チェック者等の間でのデータ授受や業務の進捗管理が容易で、大幅な作業負荷軽減や作業時間を短縮する。
MOESでの翻訳作業は従来、翻訳者が全て手作業で行っていたが、今回開発した機能によりあらかじめ自動翻訳された文章が入力された状態から、翻訳の確認や修正を行う運用が可能となった。
今後、海外展開の需要が高いマンガの着色や縦スクロール化などの機能開発や体制構築を進め、MOESを軸とした海外版マンガの制作・製造体制を強化していく。また雑誌制作~単行本制作~海外版制作~電子コミック配信といった一連のプロセスをトータルにサポートし、海外のマンガファンが多くの作品に触れる機会の創出を目指す。