霧のいけうち 印刷工場における湿度低下が原因の静電気問題・伸縮などを解決 濡れないほど微細な霧“ドライフォグ”を用いた加湿システムの提案
株式会社いけうちが発表した“ドライフォグ”に関するレポートを紹介する。
湿度環境を安定させ,品質・生産性向上を実現する自動加湿システム
─ 濡れないほど微細な霧“ドライフォグ”
いけうち 空調事業部 部長 江崎寛通氏
■はじめに
株式会社いけうちは,これまで約40年以上にわたって印刷工場の静電気対策として,濡れないほど微細な霧“ドライフォグ”を用いた加湿システムの開発・提案を行ってきた。 紙やフィルムを取り扱う印刷工場では冬場,湿度低下を原因とする静電気問題や伸縮など製造上の問題が多く発生しており,品質や生産性向上の障害になっている。日本では夏場と冬場の湿度に大きな差が発生することから,静電気対策には一般的な湿度(相対湿度)ではなく空気中の水分量(絶対湿度)に注意を払う必要がある(空気線図を参照)。またこの絶対湿度を上げることが加湿であるため,工場内温度によって相対湿度設定を考慮する必要がある。
■印刷工場によくある問題
オフセット印刷であればフィーダー部での静電気による二枚送り,デリバリ部での不揃いが発生することで生産性が大幅に落ちる。また製品の乾燥による用紙伸縮など品質上の問題も発生する。片面印刷後に伸縮により反ってしまった用紙を,手作業で修正しながら裏面を刷る手間は非常に大変なものである。そもそも平判の用紙を湿度の低い場所で開封してしまうとすぐに反りが発生してしまう。反りがひどく使えなくなってしまった用紙は廃棄せざるを得ず大きなロスとなる。グラビア印刷においては,湿度低下によって有機溶剤への引火の危険性が高まるなどの重大な問題につながる。安全対策が進む昨今でも毎年事故が報告されている。浮遊ゴミも問題になることが多く,加湿によって浮遊ゴミを舞い上がりにくくすることは品質向上にもつながる。グラビア印刷では食品包装資材を生産している現場が多く,特にクリーンな環境が求められる。
工場内の湿度を適切に管理することでこれらの問題を抑制し,品質と生産性を向上させることができる。従来の印刷工場では,その日の温度と湿度に合わせてオペレータが見当合わせなどの微調整をすることで品質や生産性を保っていた。現代では少ロット多品種生産に対応するため,印刷機も自動化が進み,安定した品質と生産性を実現するために工場環境を整えることが求められる。 デジタル印刷の現場では,紙の反りやインクヘッドの乾燥といった問題があり,これらも湿度と関係している。当社が提案する加湿システムは,冬場の湿度(空気中の水分量)を上げることで,安定した品質と安定した生産性を実現するものである。現在では冒頭に紹介したドライフォグ加湿システム(二流体加湿)だけでなく,セミドライフォグ加湿システム(一流体加湿)も開発し,より最適な加湿システムを提案できるようになった。
■職場の加湿と健康経営
工場内の湿度環境を整える事は製品の品質安定のみならず,工場内で働く従業員の体調管理にも有効である。
冬季の乾燥した環境では風邪やインフルエンザの蔓延を予防できず,予期しない作業員の欠勤などにより,生産性を大きく下げることにつながる。製品の品質を安定させる湿度環境を整えることで,副次的に作業員の健康維持にもつながり,安定した生産に貢献できる。
■環境への取組み
世界中でSDGsなどの地球環境への取り組みが行われる中,産業界においても蒸気やコンプレッサーエアなどの消費エネルギー削減に取り組む企業が急増している。工場内加湿では古くから蒸気が採用されてきたが,近年は環境への配慮として水加湿(水をドライフォグやセミドライフォグ状にして噴霧する加湿方法)への注目が特に高まっている。蒸気ボイラから切り替えることによるCO₂削減効果は非常に高い。さらに水加湿の中でもコンプレッサーエアを使用しない一流体加湿が特に注目されている(蒸気,二流体,一流体のランニングコスト表を参照)。
印刷工場の場合,印刷種別や印刷機の配置,加湿器のレイアウトなどで加湿効果は大きく変わる。工場全体を加湿するだけでなく,少ない加湿量で最大限の加湿効果を実現できるような提案も行っていく。当社は輪転印刷の現場から加湿事業を開始,二流体加湿を主に提案してきたが,近年ではグラビア印刷の現場で一流体加湿と二流体加湿を併用した,ハイブリッド加湿システムを確立し,ニーズに応じた製品で全国の印刷会社へ,より良い湿度環境を提供し続けている。
■いけうちの取組み
いけうちでは工場へ専門的な加湿提案をしていくことができる空調事業部を40年前に設立し,印刷工場やエレクトロニクス工場などに提案型営業をしている。 現在,空調事業部では,濡れない霧“ドライフォグ”をより多くの方に触れてもらうため,「デモ体験会」と称して全国6都市(山形,仙台,東京,名古屋,大阪,福岡)で加湿セミナーおよび加湿空間での噴霧実演体験ができる説明会を開催している。興味を持たれた方はHPまたは電話より申し込みください。
HP:https://www.dry-fog.com/jp/news/240820/
電話:0120-997-084