経産省 印刷産業の取引環境実態調査報告書をまとめる、厳しい収益構造指摘
経済産業省は印刷産業の取引環境実態調査を実施し、今後の印刷産業の持続可能な発展に向けた方策について報告書をまとめた。アンケートやヒアリングなどにより調査が行われ、アンケートでは日本印刷産業連合会の構成10団体の6,626社に調査票を送付、964社からの回答を得ている。
報告書では印刷産業について、デジタル化やペーパレス化により右肩下がりの市場環境で、その大部分が中小企業であり、収益構造が厳しさを増していると指摘。設備の稼働率は70%を下回り、各社の目標値に届かない供給過剰の状況との実態を明らかにした。また、10年前の印刷需要に合わせて調達した設備がまだ稼働しており、その投資回収に時間がかかることも収益悪化の要因のひとつに挙げている。
印刷産業の構造として、従前、元請大手の余剰需要を中小が分け合う構造だったが、需要減のなか、末端に至る案件が減り、マージンも目減りしている可能性も指摘している。事業所数の減少の背景として高齢化を想定し、事業承継を課題に挙げた。
売上高は微減傾向で、6割の事業者で売上が減少。約3割の事業者で営業利益率がマイナスとなっており、過去比でも営業利益率が悪化している。背景には需要減だけでなく、受注単価の下落が重なり、単価を高められている事業者も実態は原材料高騰の転嫁に留まっている。一方で、業界全体で売上・営利とも悪化傾向のなか、小規模ながら業界平均を上回る売上成長・営利率を達成する企業も一定数存在し、印刷業外も手掛ける企業群の方が、売上成長率・営業利益率ともに比較的高い傾向にあることが明らかになった。
印刷業者の課題意識は、小ロット印刷の効率的対応や、改善点を見つける工程可視化。このほか、課題意識ある工程は「営業」「企画・事業戦略検討」「収益管理」が挙げられており、とくに「営業」に7割近くの企業が課題意識ありと回答している。