日本製紙連合会 2015年紙・板紙内需は前年比2.5%減、5年連続のマイナスに


日本製紙連合会は「2016(平成28)年紙・板紙内需試算報告」を発表した。

印刷・情報用紙の内需の推移(千トン)
印刷・情報用紙の内需の推移(千トン)

紙・板紙の内需はリーマン・ショック直後の2009年に大きく数量を落とし、2010年にプラスとなったものの、2011年以降はマイナスが続いている。2015年は、前年の消費増税による駆け込み需要の反動から、1-3月は紙、板紙ともに減少(紙:5.7%減:板紙:3.6%減)。4-6月以降、板紙はプラスを示したものの、紙はマイナスが続き、紙・板紙の内需は通年で2.1%減と5年連続のマイナスとなった。サプライ別には、国内出荷は2年連続の減少、輸入は3年連続の減少となった。

2016年の景気は、新興国経済の減速による影響等が懸念されるが、企業業績は堅調と見られ、インバウンド効果も引き続き見込まれることから、緩やかに回復することが予想される。こうした経済環境の下、板紙は堅調な食品分野を中心に増加を見込むものの、紙は電子媒体へのシフトやペーパーレス化等から減少し、紙・板紙全体の内需は前年を下回ると予測している。

【印刷・情報用紙】

印刷・情報用紙の内需は、2006年をピークに縮小を続けている。特にリーマン・ショック直後の2009年には大きく数量を落とした。2015年は前年に消費増税に伴う駆け込み需要があったことから、その反動で1-3月の減少幅は5%を超えた。4-6月以降も前年を下回って推移し、年間では3%を超える減少となった。主要品種は、情報用紙は底堅く推移したが、印刷用紙(非塗工、塗工)は減少し、全体では9年連続の減少。サプライ別には国内出荷(2年連続)、輸入(3年連続)ともに前年を下回った。

2016年は非塗工、塗工、情報ともに電子化やペーパーレス化等により減少継続を見込む。印刷・情報用紙の合計について、品種別試算結果を積み上げると、内需量は863万トン、前年に対し3.0%減、約27万トンの減少となる。マイナス成長は10年連続。品種別寄与度は、非塗工印刷用紙は1.0pt減、塗工印刷用紙は1.9pt減、情報用紙は0.1pt減と、印刷用紙を中心にいずれもマイナスとなっている。

▽非塗工印刷用紙

印刷・情報用紙のうち、非塗工印刷用紙の内需は、長引く出版不況の影響等により中・下級印刷紙を中心に減少を続けている。2015年は前年に消費増税に伴う駆け込み需要があったことから、その反動で1-3月の減少幅は6%を超えた。4-6月以降は減少幅縮小も、前年を下回って推移し通年では上級印刷紙、中・下級印刷紙、薄葉・特殊印刷紙とも減少、全体では2005年以降、11年連続で前年を下回った。サプライ別にみると、国内出荷(2年連続)、輸入(3年連続)ともに前年を下回った。

2016年は汎用性がある上級印刷紙にチラシや目論見書・取扱説明書など底堅い需要があるものの、引き続きICT化に伴う帳票類等の減少や小口印刷物の内製化といった動きにより、前年を下回ると予想する。中・下級印刷紙は、主たる需要先である出版業界を取り巻く環境が依然厳しく、書籍、雑誌ともに返品率削減対策から部数を絞る方向。特に雑誌は、スマートフォンやタブレット端末など電子媒体の普及による情報源や娯楽の多様化等により引き続き不振を予想している。

▽塗工印刷用紙

印刷・情報用紙のうち、塗工印刷用紙の内需は、2007年より縮小、特にリーマン・ショック直後の2009年に大きく減少し、その後も縮小傾向にある。2015年は前年の消費増税に伴う駆け込み需要の反動減に加えて、ICT化等の影響もあり、商業印刷向けを中心に主要品種は前年割れとなった。サプライ別には、国内出荷(2年連続)、輸入(3年連続)ともに前年を下回った。

2016年は景気の緩やかな上昇が見込まれるなか、好調な企業業績を背景に自動車、不動産、旅行等の広告増が予想されるが、紙媒体の需要増は期待できない。需要各社の継続的なコスト削減に加えて、ICT化に伴う電子チラシ、ネット広告等、他の広告媒体へのシフトや低米坪化が続くと見られる。また、カタログ、チラシ等、販促用商業印刷については部数減やサイズダウン等により引き続き低調に推移すると予想している。

▽情報用紙

情報用紙の内需は、 2009年に大幅に減少した後、2010年は反動増や国勢調査に伴うスポット需要等から増加に転じた。 2011年以降は印刷用紙よりは比較的底堅い動きとなっているが、減少が続いている。品種別では、PPC用紙が印刷内製化などを背景に底堅い推移を示しているのに対し、フォーム用紙や複写原紙は、電子媒体へのシフトやカット紙化の影響が大きいことから不振が続いている。サプライ別では、輸入が2008年から2011年にかけて大きく拡大した後も高止まりしており、2015年については国内出荷が前年を下回ったのに対し、輸入はプラスとなっている。

2016年は、PPC用紙が汎用性・利便性の高さから、底堅い需要が見込まれる。ユーザーの節約志向は根強いものがあるが、他品種(フォーム用紙等)からのシフトもあって、前年と同水準程度は期待できる。フォーム用紙は、デザインフォームのDM向け等は底堅い需要が期待できるものの、電子化、カット紙化の進展により、全体として減少継続が予想される。複写原紙については、カット紙化や ペーパーレス化等により、前年を下回る見通し。情報記録紙については、物流分野での感熱紙ラベル等、堅調な分野もあるが、電子化の影響等もあり、全体としては概ね前年並みとなる見通し。

【紙器用板紙】

紙器用板紙の内需は2009年に経済状況の悪化から大幅に低下した。2010年は弱いながらも前年の落ち込みの反動等からプラスに転じ、2011年は大震災後の支援物資需要もあり2年連続で前年を上回ったが、2012年は前年の大震災による特需反動から3年ぶりのマイナスとなった。2013年は微増となったが、2014年は食品安全問題による大手ファーストフードの不振等により、2015年は食品や菓子等の値上げを背景としたユーザーの在庫調整により、2年連続で前年を下回った。

2016年は内食化の定着やインバウンド需要により食品関連が堅調と見られるが、需要家のコスト意識は依然強く、箱の小型化や軟包装化は引き続き懸念される。また、一部需要先である印刷分野は、出版向けを中心に減少が見込まれ、全体では前年を下回ると予想される。

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