日印産連 化学物質リスクアセスメントセミナーに注目集まる

満席だったセミナー(東京会場)
満席だったセミナー(東京会場)

日本印刷産業連合会(日印産連)は、6月22日、東京都中央区の日本印刷会館で「化学物質リスクアセスメントセミナー」を開催した。

同セミナーは、労働安全衛生法施行令が改正されたことに伴い、今年6月1日から、対象となる640の化学物質を取扱う全ての事業所で、リスクアセスメントを実施することが義務付けられたことを受けて実施した。日印産連では、今回のセミナーを皮切りに、リスクアセスメント普及に向けた「化学物質リスクアセスメントセミナー」を全国7ヶ所で開催していく。全国で開催する今回のセミナーは、すでに一部満席の会場も出ている。

厚生労働省の寺島友子氏
厚生労働省の寺島友子氏

セミナーは、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の中央産業安全専門官である寺島友子氏が「労働者の健康障害防止に向けた労働安全衛生法改正の留意点について」を、CIH労働衛生コンサルタントで日印産連・労働安全衛生WG委員でもある岡田賢造氏が「印刷事業所におけるリスクアセスメントの提案」をテーマにそれぞれ講演。続いて新コスモス電機㈱経営企画室事業支援部シニアエクスパートの浅香尚民氏が「オフセット印刷工場用『VOC警報機』について」を解説した。

今回の法改正より変更となったのは、これまで「努力義務」とされていた一定の危険性・有毒性が確認されている化学物質による危険性または有毒性等の調査(リスクアセスメント)の実施が「義務化」されたことと、ラベル表示の領域の拡大である。リスクアセスメントの義務化について罰則はないが、“義務”であるため行わない場合は法律違反とみなされる。

ただし、該当するのは、対象物質を原材料などを新たに使用したり、対象物を製造あるいは取り扱う業務の作業方法を変更する、作業手順を新規に採用するなどの場合と、新たに危険性が判明した場合など。そのため、従来通りに使用している場合は該当せず、すぐに全ての作業環境で取り組む義務が発生するわけではない。

講演では、労働安全衛生関係法令における科学物質管理の体系等についての解説があったほか、企業の社会的責任という観点からも労働者の健康障害予防のための仕組みの構築が、ますます求められてくるということが解説された。優れた労働環境を構築するにあたり、「労働安全」は怪我など目に見えてすぐに対応できる災害である一方、「労働衛生」は病気などに発展する目には見えにくく、長期間にわたって発症するため、組織として労働環境改善に取り組む必要があることが語られた。

なお日印産連では、法改正の動きと並行して、従業員の健康保全に向けた取組みをさらに強化していくことを目的に、中小の印刷事業者が簡便にリスクアセスメントが実施できるように工夫したリスクアセスメントシートを、厚生労働省と協力して作成している。

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