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帝国DB 企業倒産は底打ちから増加基調が続く、10カ月連続の前年同月比増加。今後は値上げとポストコロナへの対策が焦点

株式会社帝国データバンクが発表した企業倒産集計の2023年2月報によると、底打ちから増加基調が続き、負債総額は1005億4600万円で、2月としては4年ぶりの1000億円超となった。なお倒産件数は574件で、10カ月連続で前年同月比増である。

倒産件数の前年同月30%以上の増加は、コロナ禍で法的整理の滞留による影響から反動増となった2021年5月を除くと、2009年1月(30.2%増)以来14年1カ月ぶりである。
業種別にみると、7業種中5業種で前年同月比増加。主因別では「不況型倒産」は451件発生しており、「売掛金回収難」は8年6カ月ぶりの急増となった。また規模別では負債「5000万円未満」「1億円未満」の小規模零細企業の増加が目立つほか、業歴10年未満の「新興企業」が12カ月連続で増加している。地域別では、四国を除く全地域で前年同月比増加した。

震災関連倒産は過去最少、コロナ融資後倒産は前年度比2倍、人手不足倒産が3年振り増
報告では、いくつかの倒産傾向のポイントを挙げている。
自然災害などの影響によるものについては、震災から12年経った東日本大震災関連倒産は過去最少となった。震災による影響はほぼ収束し、被災地企業を中心に復興へと進んでいるとしながらも、地震や津波の被害が直接的に経営にダメージを与えた倒産は時間が経過するほど割合が高まっているとも指摘。震災から今なお完全な立ち直りが難しい企業に対する支援の在り方が、今後も重要となってくるとまとめている。
さらにコロナ融資後倒産は、2023年2月が38件(前年同月20件、90.0%増)発生しているほか、2月までの2022年度累計は392件で、前年度を大幅に上回った。もう一つの社会的な傾向として、人手不足倒産を挙げている。こちらについては2023年2月が9件(前年同月13件、30.8%減)発生したが、8カ月ぶりに前年同月を下回った。ただし2022年度累計は125件で、前年度の118件を上回っるなど、3年ぶりの増加で人手不足が目立っている。

コロナ禍創業の企業の短命目立つ、インフレ倒産は3倍ペースで増加
別の傾向としては、コロナ禍に「創業」した新興企業の倒産が急増。業種別では老人福祉事業が最も多く、全体の8.8%を占めた。
物価高(インフレ)倒産についても触れており、2023年2月は53件で前年同月7件と比較すると大きく増加。単月ベースで過去最多を更新した。
後継者難倒産についても傾向としてあり、2023年2月は32件(前年同月42件、23.8%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。こちらについては代表者の病気・死亡が多くの理由に挙げられており、事業が立ち行かなくなったケースが多数を占めている。

今後は値上げとポストコロナへの対応がポイントに
今後の見通しについて、企業倒産が3年ぶりの増加が確定しており、「リーマン」以来の急増ペースにあること、消費者被害型倒産も発生していることなどの他に、「値上げ」「ポストコロナ」の対応を焦点に挙げている。
さらに「値上げラッシュ」が続いており、帝国DB調査によると2023年中に値上げする食品や飲料は計1万5813品目に上り、前年比3倍のペースで増えているという。こうした中、今夏以降、ゼロゼロ融資の元本返済をこれまで据え置いてきた企業の返済開始時期が順次到来。借り換え保証、収益力改善支援、経営者保証制度の見直しなど、官民挙げて「ポストコロナ」の出口戦略が動き出すなかで、過剰債務に苦しむ中小企業の経営正常化が以前にもまして急務であると指摘。そうした観点からも、企業および産業の新陳代謝を進めながら中小企業の過剰債務問題をいかにソフトランディングさせるかが問われる年となると予測している。

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