帝国データバンク 2024年一年間の倒産集計を公表 3年連続で前年を上回り1万件に迫る
帝国データバンクは2024年1月から12月まで一年間の倒産集計を公表した。発表された内容から紹介する。
それによると2024年の倒産件数は9,901件で、前年の8,497件よりも1,404件増加。3年連続で前年を上回り1万件に迫る件数となった。
■業種別 7業種中6業種が前年を上回る 『サービス業』は2000年以降で最多
業種別にみると、7業種中6業種が前年を上回った。
『サービス業』は2,547件(前年比21.3%増)で最も多く、『小売業』は2,087件(同17.0%増)、『建設業』は1,890件(同13.1%増)と続いた。『サービス業』は2000年以降で最多となった。『小売業』は2,087件(同17.0%増)で2012年以来、12年ぶりに2,000件を上回った。最も増加率が高かった『製造業』は1,145件(同26.1%増)で、7年ぶりに1,000件を超えた。
業種を細かくみると、『サービス業』では、「広告・調査・情報サービス」が819件(同20.3%増)で全体を押し上げた。『小売業』では、仕入れ価格の高騰が要因となり、「飲食店」が894件(同16.4%増)で最も多く、2000年以降で最多となった。職人の高齢化や人手不足が深刻な『建設業』では、「職別工事」が879件(同15.2%増)と増加し、過去10年で最多となった。
■倒産主因別 『不況型倒産』の件数は8,203件 「経営者の病気、死亡」は2000年以降で最多
主因別にみると、「販売不振」が8,067件(前年比20.9%増)で最も多く、全体の81.5%を占めた。2年連続で増加率が20%を超え、11年ぶりに8,000件を上回った。「売掛金回収難」は57件(同29.5%増)、「不良債権の累積」は17件(同21.4%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は8,203件(同20.7%増)となった。
「経営者の病気、死亡」は316件(同13.7%増)で2000年以降最多となった。「設備投資の失敗」は45件(同50.0%増)で2年ぶりに前年を上回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計
倒産主因別の構成比
■倒産態様別 「破産」は9,271件、11年ぶりに9,000件を上回る
倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は9,623件(前年比16.4%増)となり、全体の97.2%を占めた。『再生型』倒産は278件(同19.8%増)発生した。『清算型』では、「破産」が9,271件(同16.1%増)で最も多く、11年ぶりに9,000件を上回った。「特別清算」は352件(同26.2%増)で、2006年の359件に次いで過去3番目に多い件数となった。『再生型』では、「会社更生法」が12件(同500.0%増)となった。「民事再生法」は266件(同15.7%増)発生。
■規模別 負債「5000万円未満」の倒産は5,919件、2000年以降で最多
負債額規模別にみると、「5000万円未満」の倒産が5,919件(前年比17.8%増)で、2000年以降で最多となった。『50億円以上』は前年を下回ったが、『50億円未満』が前年を大幅に上回り、中小零細企業を中心に増加が目立った。
資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が7,044件(同20.3%増)発生し、全体の71.1%を占めた。
■業歴別 『新興企業』は3,080件、15年ぶりに3,000件を上回る
業歴別にみると、「30年以上」が3,144件(前年比14.7%増)で最も多く、全体の31.8%を占めた。2013年の3,215件以来11年ぶりに3,000件を上回った。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は145件(同51.0%増)と2000年以降で最多となった。
業歴10年未満の『新興企業』は「3年未満」が397件(同10.0%増)、「5年未満」が710件(同19.1%増)、「10年未満」が1973件(同25.7%増)で、合わせて3,080件(同21.9%増)と15年ぶりに3,000件を上回った。
■地域別 2年連続で全地域が前年を上回る さらに都道府県別では38都道府県が前年を上回る
地域別にみると、2年連続で全地域が前年を上回った。また、『北海道』を除く8地域が過去10年で最多となった。
最も件数が多かったのは、『関東』で3,442件(前年比12.3%増)、「東京」が1,758件(同13.5%増)で前年を大幅に上回った。次いで、『近畿』が2,542件(同20.7%増)と続き、11年ぶりに2,500件を上回った。『近畿』は全府県で前年を上回っており、「滋賀」で124件(同40.9%増)、「奈良」で110件(前年比71.9%増)と増加が目立った。
都道府県別では、38都道府県が前年を上回り、各地域で増加傾向が見られ、全体の件数を押し上げた。「東京」が1,758件で最多、「大阪」が1,330件で続いた。最も増加率が高かったのは『北陸』323件(同34.0%増)で、能登半島地震の影響もあり大幅に増加した。次いで、『東北』の569件(同28.4%増)が続き、東日本大震災直後の2011年、446件を超えた。
注目の倒産情報
■「飲食店」倒産動向 2024年、倒産894件で過去最多を更新 「居酒屋」「ラーメン店」など11業態中5業態で過去最多
飲食店の倒産が過去最多となった。2024年の倒産件数は894件で、前年に比べ16.4%増加。2020年の780件を上回って過去最多を更新した。
業態別(11業態)では、最も多かったのは居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」は212件で、ラーメン店などの「中華料理店、その他の東洋料理店」(158件)、「西洋料理店」(123件)が続き、いずれも過去最多となった。また、「その他の一般飲食店」(65件)も過去最多を更新した。
負債額規模別にみると、「1,000万円以上5,000万円未満」が692件(構成比77.4%)で最多となり、1億円未満の小規模倒産が784件(同87.7%)だった。
大手クラスでは近時、コスト削減や価格転嫁により採算が改善するケースもみられる。しかし、飲食店業界において大半を占める小規模事業者では、原材料や光熱費など各種コストの上昇の影響、さらにはコロナ禍からの経済回復により幅広い業態で人手不足となり、人材獲得のため賃上げなど人件費の増加が負担となっている。一方で、物価高による節約志向により価格転嫁が難しく、スケールメリットが生かせずコスト削減も困難なケースが多い。物価高は今後も続くとみられ、中小クラスを中心に競争にさらされた事業者の倒産や廃業は当面、高水準で推移するとみられる。
■ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産 734件判明 4年連続で過去最多を更新
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、734件(前年比12.6%増)判明し、4年連続で過去最多を更新した。業種別では、『建設業』(143件)が最も多く、『サービス業』(139件)、『小売業』(138件)が続いた。「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約1,163億2,300万円にのぼった。
■人手不足倒産 342件判明 初めて300件を超え過去最多を大幅更新
「人手不足倒産」は、342件(前年比31.5%増)判明した。初めて300件を超え、過去最多を大幅に更新した。業種別では、『建設業』(99件)が最も多く、『運輸・通信業』(66件)と合わせて全体の約5割を占めた。『サービス業』(95件)は前年(57件)から大幅に増加した。従業員数10人未満の小規模企業が7割を占めた。
■「タクシー業」の倒産・休廃業解散動向 倒産・廃業82件で過去最多 「ドライバー不足」深刻、燃料費高騰も経営に追い打ち
全国的に「タクシーがつかまらない」状況が多くみられるなかで、タクシー業の倒産が急増している。2024年に発生した倒産は35件、休廃業・解散は47件判明し、計82件のタクシー業者が市場から退出した。
2024年におけるタクシー業倒産35件のうち、少なくとも4割以上がドライバーなどの「人手不足」が要因となった。これまで、年間1~2件前後の発生だったが、2024年は人手不足による倒産割合が突出して高い傾向にあり、深刻化するドライバー不足と、それに伴う「タクシー余り=稼働率低下」が各社の経営を悩ませている。国土交通省によると、全国のタクシー会社で働く運転手の数は、2023年3月末時点で約22万人と、コロナ禍前の2019年3月末に比べて約2割減少した。1割未満だった同期間における法人タクシーの保有車両数の減少率と比べても、ドライバーの減少ペースが目立った。こうした状況に加えて、燃料となるプロパンガスの価格高騰が重なり、経営をあきらめるタクシー業者が増加した要因となっている。
また、慢性的なドライバー不足による旅客需要の取りこぼしをどう防ぐかが目下の課題となっている。こうしたなか、タクシー業者が運行主体となり、一般ドライバーが自家用車を用いて有償で客を運ぶ「日本版ライドシェア」の導入が各地で進んでいる。「安心できる移動手段」としてのタクシー運行とどう共存するかが問われている。
■後継者難倒産 540件判明 前年から減少も過去2番目の高水準
「後継者難倒産」は、540件(前年比4.3%減)判明し、4年ぶりに前年を下回った。2年連続で500件を超え、2023年(564件)に次ぐ過去2番目の件数となった。後継者難倒産のうち、「経営者の病気、死亡」が4割を占め、後継者不在を理由に事業継続をあきらめるケースが発生している。業種別では、『建設業』(124件)が最多で、『製造業』(95件)が続いた。
■物価高(インフレ)倒産 933件判明 過去最多を大幅に更新
「物価高倒産」は、933件(前年比20.4%増)判明し、倒産全体の約1割を占めた。初めて900件を超え、過去最多を大幅に更新した。業種別では、『建設業』(250件)が最も多く、『製造業』(194件)、『運輸・通信業』(155件)が続いた。
今後の見通し
■2024年は小規模倒産を中心に3年連続増加
2024年の企業倒産は9,901件発生し、前年の8,497件を16.5%上回り、3年連続の増加となった。懸念された年間1万件には到達しなかったものの、2013年の1万332件に次ぐ11年ぶりの高水準となった。月別推移を見ても、2024年12月は848件(前年同月比5.2%増)を数え、2022年5月から32カ月連続で前年同月を上回り、過去最長の連続増加記録を更新した。物価高、人手不足、後継者難に、新型コロナ支援策の終了やゼロゼロ融資の返済負担も加わり、企業倒産は負債5,000万円未満の小規模事業者を中心に緩やかな増加が続いた。
■2025年は緩やかな倒産増加続く
2025年も引き続き、企業倒産は緩やかな増加局面が続く見通し。企業にとってのコストアップにつながる厳しい外部環境が好転する兆しはなく、1月にも予想される追加利上げや、さらなる賃上げの動きに対応しきれず、中小零細企業の「あきらめ倒産」「あきらめ廃業」が一段と広がると考えられる。とくに、「2025年問題」(団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで起こる諸問題)は倒産動向にも影を落とし、経営者の高齢化や人手不足に影響が色濃く出てくることが予想される。2024年は「物価高倒産」が倒産件数を押し上げたが、2025年はこれに加えて「人手不足倒産」や「後継者難倒産」への注目度が高まると思われる。
2024年に過去最多の件数を更新した「粉飾倒産」は、2025年も相次いで発生すると予想。
■「新陳代謝」と「優勝劣敗」が加速する1年に
2025年の企業倒産は「新陳代謝」と「優勝劣敗」が加速する1年になる。2024年の倒産件数は3年連続で増加したとはいえ、リーマン・ショックの影響が深刻化した2009年の倒産件数1万3306件のような危機的状況にはほど遠い。負債総額を見ても、上場企業や新興不動産デベロッパーの倒産が相次いだ当時と比べ3倍以上の開きがある。2025年の倒産件数が2009年の水準まで急増する事態は想定していないものの、引き続き緩やかな増加局面が続く見通しである。
なかでも、人手不足の影響が2024年以上に広がるとともに、経営体力が限界に達した末の「賃上げ難型」倒産の多発も小規模事業者を中心に懸念される。利益で借入金の利息が賄えず、政府や金融機関の支援で延命を続けてきた推計20万社超の「ゾンビ企業」の淘汰もさらに進むと思われる。また、金融機関の選別からふるい落とされる企業も一定数出てくると予想。多くの企業が人手不足解消に取り組むなかで、法的整理や私的整理の手法を用いて事業や雇用を別会社に承継したうえで、長年の債務を処理するスキームもさらに活発化していくと考えられる。
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