大日本印刷 書店起点で本を復刊・販売できる「DNP復刊支援サービス」が5月1日からスタート “未来の出版流通プラットフォーム”を構築 

大日本印刷株式会社(DNP)は5月1日より、複数の書店にて「DNP復刊支援サービス」を開始する。これは、書店起点で書籍を復刊・販売できる新たなモデルであり、同社が構築を進める“未来の出版流通プラットフォーム”構想の第一弾として位置付けられている。

この新たなプラットフォームは、書店員が売りたい本を自ら選び、出版社とのマッチングや発注、流通までを一元化できる仕組みで、本が「読まれ続ける未来」の実現を目指す。

コンセプトイメージ

■出版業界の構造的課題に挑む

出版業界では、DXの遅れや書店の低い粗利率、高い返品率などが長年の課題とされている。経済産業省が2025年1月に発表した「書店活性化のための課題」でもこれらの問題が明示され、書店の持続可能性が懸念されている
DNPは、2024年7月に出版の未来を見据えた社内組織を立ち上げ、書店や出版社など関係各所とともに新たな出版流通の在り方を検討。その一環として、書店がより柔軟かつ主体的に本を届けられる仕組みのひとつとして、プラットフォーム構築を進めている。

■“未来の出版流通プラットフォーム”の特徴

このプラットフォームの主な機能は以下の通り。

  • 書誌データの一元提供:新刊・既刊・重版未定問わず、書店が必要な情報をタイムリーに入手可能。
  • 書店と出版社のマッチング支援:戦略的な価格設定や販促も書店主導で設計できる。
  • POD(プリントオンデマンド)による少部数対応:DNPのデジタル印刷技術により、売りたい本を小ロットで製造し、無駄な在庫や返品を削減。
プラットフォームのイメージ

■第1弾は「DNP復刊支援サービス」

「DNP復刊支援サービス」は、出版社が保有する重版未定の文庫データをDNPが収集・提供し、書店がその中から選んで復刊を依頼する仕組み。書店の注文に応じてDNPがデジタル印刷により少部数製造し、再流通させる。

この復刊本は、原則として1タイトルに対して1書店での独占販売を前提としており、書店が販促に力を入れやすい仕組みを整備。さらにその本が重版となり全国流通した場合には、出版社から書店にインセンティブが支払われる制度も用意されている。

■今後の展望

DNPは今後、書店・出版社の双方に対して本プラットフォームの活用を促進。文庫本以外のジャンルにも対象を拡大し、2026年度までに全国規模のオープンな出版流通インフラを目指す。また、著者や読者が主導する出版モデルの創出にも取り組む構えだ。

出版業界の持続可能性を真剣に考えるこの取り組みは、既存の流通構造に依存しない“書店起点”の新しい価値創出モデルとして、今後の展開に大きな注目が集まりそうだ。

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