埼玉県工組 地域と連携してスタートした川越美化プロジェクトの報告で川越市長を訪問、用紙を包むワンプで新たな価値提供

埼玉県印刷工業組合の惠勇人理事長、および六三四堂印刷株式会社の佐藤道晴社長、株式会社櫻井印刷所の櫻井理恵社長と同社の製造部から荒木部長と玖島チームリーダーは、8月20日、川越市役所へ訪問。「川越美化プロジェクト」でワンプを再生して新しい価値をもたせた『小江戸川越ごみぶくろ』の取り組みについて、川越市の川合善明市長に説明し、作成した小江戸川越ごみぶくろ(50袋)を進呈した。
『小江戸川越ごみぶくろ』の取り組みは、産業廃棄物の再利用、障がい者への就労機会の創出、川越のごみ問題の解決、という3つのメリットを産むものとして提案した。

川合市長(中央左)へ「小江戸川越ごみぶくろ」を進呈する(右から、惠理事長、櫻井氏、佐藤氏、川合市長、櫻井印刷所の荒木部長と玖島リーダー)
小江戸川越ごみぶくろ

『小江戸川越ごみぶくろ』は、川越を拠点に事業活動している印刷会社が中心となっている川越美化プロジェクトの一環として誕生した。
大量の印刷物を製造している印刷会社では日々目にするワンプを、産業廃棄物として廃棄したり、リサイクル会社へ手渡すのではなく、新しい価値として生まれ変わらせた。素材となる”ワンプ”は、印刷用紙を包む包装紙で、片面にはPP加工が施されている。そのため、そのままオンデマンド機などに通して印刷することはできないが、PP加工されていることをメリットとして捉えれば多少の水漏れ防止などが期待できる。こうしたワンプの特長を活かしてつくられたのが、『小江戸川越ごみぶくろ』である。

袋の加工にはサポートあおいの作業所で何度も試作され、現在の折り方に定まった。表面と裏面に印字されているデザインとコメントはハンコで押されたもの。フォントを工夫したことでハンコを押した時のカスレやにじみにより、まるで活版印刷をしたような出来栄えとなっている

今回の取り組みでは、六三四堂印刷と櫻井印刷所製造のワンプを、六三四堂印刷が断裁した後、川越市内のNPO法人サポートあおいが運営する障害福祉サービス事業所において働いている利用者が手作業で袋の形に加工する(1枚20円)。加工され、『小江戸川越ごみぶくろ』に生まれ変わった袋は、櫻井印刷所でいったん買い上げ、配布先となる店舗や公共施設などに1枚20円で買い取ってもらい、観光客などへ配布されるという流れとなる。

今回の取り組みについて佐藤社長は、「櫻井さんからお話を頂き、すごく良い案だと思いました。すぐに観光協会や商工会議所の方にも相談し、理解を得て、とにかく始めようと制作しました。川越だけでなく、観光地にはインバウンドの影響によるごみ問題があると聞きます。今後も街と一緒に取り組めたらと思っています」と抱負を述べた。

また『小江戸川越ごみぶくろ』の製品化にあたって櫻井社長は、「川越の観光に関する事にも携わっている立場としては、課題があることを感じています。中でもゴミ問題は身近な問題です。そこで思ったのは、カバンに入るような小さいごみ袋があれば、持ち帰ってもらうこともできるのではないかということです。サイズ感としては、お団子の串が入るサイズを考えました。若い女の子達がレンタル着物を着て街を散策する際に借りるバッグ等も小さいものなので、そこにも入るようなサイズを目指しました。また配布する意義として、“ゴミは捨てていかないでください”というよりも、“ゴミは自分達で持って帰ろう”という意識づけもしていきたい。川越はゴミをポイ捨てしていい町ではないということを訴えるためにも、デザインに川越の町をイメージするデザインを採用しています」と説明した。

川井市長へプロジェクトについて説明

また惠理事長は、「印刷業界は厳しい中にあるが、社会に貢献できることがまだあると思っています。印刷の歴史、紙の文化、印刷の技術を使って、社会にお役に立てるようなことを一つでも増やしていくことが、組合の価値にも繋がると考えています」と述べた。
櫻井社長も「川越だけでなく、埼玉県から全国へと広がることを願っています。印刷産業は斜陽産業といわれがちですが、全国の印刷関係の事業者数は飲食店よりも多いとも言われています。そして、事業継続に頑張っている会社も多くあります。組合では理事長を中心に様々な活動をしており、川越で具体的な形で、紙や文化も含めた発信ができたらいいなと思っています」と展望を述べた。
説明を受けた川合市長は、「素晴らしいアイデアだと思います。本来は捨ててしまうものを再生利用し、かつオーバーツーリズム対策にもなる。また障害者施設の就労支援にも繋がるとうい3つの効果を生む良いアイデアになっています。デザインも川越らしくて素晴らしいと思う」と語った。

今回の川越美化プロジェクトで生まれた『小江戸川越ごみぶくろ』には、製造と販売に携わっている六三四堂印刷と櫻井印刷所、加工を担当するサポートあおいの他に、川越氷川神社、喜多院、公益社団法人小江戸川越観光協会、川越商工会議所、DMO川越(一般社団法人観光地域づくり法人)も協力団体として参画。また配布先として、りそなコエドテラス(埼玉りそな銀行)なども名乗りを上げている。

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