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【インタビュ―・ルポ KSI】“先進化論”で未来にフォーカスし 国際的な印刷連携を武器に躍進。自動面付けソリューション「CTP自販機」開発

社員3名、住宅の一部屋からスタートしたKSI 韓国学術情報株式会社(以下KSI)は、設立から7年で社員120名、16年で社員300名の規模となり、韓国における印刷会社の売上ランキング15位まで成長した。学術情報のデータベース化を中心にソフト開発、Web事業、印刷、出版、発送を手掛ける同社は、今年の売上ランキングにおいて韓国印刷業界で売上8位を目指し、国際的なプリンティングネットワークを武器に邁進する。

CEO チェ・ジョンジュン氏(Chae, Jong-Jun)

KSIの歩みを語るチェ・ジョンジュンCEO

学術書の販売を生業に1992年に創業

当社は1992年、一般的なビルのオフィスではなく住宅の一部屋を借りて事業をスタートしました。当初3名だった社員は2018年までに300名、2023年1月現在で350人となっています。
創業以前、私は学術書の販売を生業としており、そのなかでお客様の大学教授が、本を買いたいが部屋に置くスペースがないという悩みを抱えていました。購買意欲がある顧客に買ってもらえないという状況だったのです。所持している本のほとんどが専門的な内容なので、いざ使いたい時にどの本にどのような内容が書かれているか探すのに苦心するという問題もありました。また、同じ本を2冊買ってもらうわけにはいかないので、行くたびに新しい本を探して持っていかなければなりませんでした。いつも車で全国を回りながら販売していたので、オフィスで座って販売する方法がないものかと考えていました。
物理的な環境の問題で本を買えないという問題は、本のデータをコンピューターに入れれば良いと考えました。コンピューターでデータベース化することで検索の問題も解決します。また、毎回新しいものを売らなければならず、売れなかったらどうしようという不安感の解消については、学術誌が解決策になると思い当たったのです。
学術誌などのジャーナルをデータベース化し、ネットを通して普及することで、一度契約すると何年も契約更新できるビジネスになります。当時は大企業や大学の研究室にしかインターネットの環境がありませんでしたが、今後ネットが普及すると見込んでデータ化を進めました。
とはいっても大規模な設備投資も難しく、そもそもコンピューターを使ったことが1度もない状況でした。
ただ、私には明確な目標がありました。知らないことは学べば良いですし、世界は絶えず変化していくため、5年ほど準備をすれば事業化できるとの判断に至ったのです。実際、予想した通り1994年にヤフーが設立され、1997年にヤフーコリアのサービスがスタートしました。
ところが韓国は1997年にIMF経済危機に陥り、経済のシステムが崩れてしまいました。それまでに何もできていなかったら立ち止まっていたかと思いますが、当社は新しいアイデアに向けて積極的に営業活動をしていたため、1998年に大成功への一歩を踏み出すことになります。

KSI 本社工場のA・B・C棟(上)とオフセット印刷工場BOOKTORY
(BOOKTORYはKSIの印刷ブランド)
学術誌やフォトブック、多言語書籍

こうして住宅の一部屋から始まった当社は1999年、社員数120名ほどに成長し、新しく会社の建物を購入できるようになりました。しかしデータベースの事業が着実に進む一方で、新しい問題が出てきました。学術誌がデータベース化されていくと、紙の本を購入する必要がなくなり自然と印刷の量が減っていくのです。こうして紙の需要は減っていくとなると、今度は現在の印刷を代替するようなシステムが発展していくと感じ、そのようなシステムは優れた複写機によって実現されるだろうと考えました。

1999年に1冊の書籍を印刷・製本するプリントオンデマンド事業へ

私は1999年に日本の本の展示会に訪れる機会があり、そこで旧富士ゼロックスが披露していたPODシステムに出会いました。これこそが私の思い描いていた商業印刷システムだと感じたのです。当時のシステムでは賄えない部分もありましたが、技術の発展を見越して10年後にはPOD市場が活況になると予測し、旧韓国富士ゼロックスから連絡をもらえるように頼み、韓国に戻ってすぐにデジタル印刷の事業をスタートしました。
私は、環境が変化する前に進化できなければ生き残れない“先進化論”という考えを持っています。とくにデジタル技術は加速度的に変化しているため、そのほかの緩やかな変化に合わせていては廃れてしまいます。未来の市場をできるだけ正確に予測し、そこにフォーカスして進化する必要があるわけです。
デジタル印刷事業は1999年に開始しましたが、それまでに印刷、出版の経験がなかったため順調にいかない部分も多かったです。しかし、デジタル印刷の時代が来るという確信を胸に事業を推進しました。世界的に見ても、当社はかなり早い段階でPODのデジタル事業をはじめることができ、drupa2012の際にはHPからパブリッシングの分野で最も進化している会社として当社が紹介されました。

オフセット印刷事業を拡大

Web面付システム「CTP自販機」開発
国際印刷ネットワークへ

2016年には韓国における印刷業界の売上ランキングで15位となりました。2023年に売上ランキング8位になることを目指して事業計画を立てたところ、売上を倍にしなければならないためデジタル印刷事業だけでは達成できないと感じ、2017年にオフセット印刷事業を開始しました。

HP Indigo webプレスが4台、シートプレスを6台設置
チェ・ジョンジュンCEO。菊全8色両面機のRMGT1050-TPを4台設置

現在、物流会社のDHLの配送システムと弊社開発のシステムを連動させ、約50ヵ国に弊社の印刷物が配送されています。より速い方法で送るために、日本の大手宅配運送会社ともミーティングを重ねています。国外の案件としては、グアムやミクロネシア、モンゴルなどにモルモン教の印刷物を提供して、米国を中心とした海外の出版社のオフセット印刷需要に応えています。ワールドバンクの報告書なども当社で印刷して発送しています。
また、米国最大の書籍流通企業であるイングラムのタイトルを当社で印刷して韓国に供給しています。従来、海外の出版社が自国で印刷してから他国に配送するケースが多かったですが、今後は国外の出版社とパートナーシップを組むことで、直接現地で印刷して供給する国際的なプリンティングネットワークが増えていくでしょう。たとえば日本の場合は大手印刷会社がイングラムとパートナーシップを組んでいます。
KSIは日本の印刷業界と世界の印刷出版業界にネットワークを持っています。オフセット印刷分野においては、生産性向上とコスト削減を実現するために約8年かけてWeb面付けシステムの「CTP自販機」を開発しました。
昨年のIGAS2022に当社はブースを持って出展しまして、日本の印刷会社の皆様にCTP自販機を紹介し、大きな反響をいただきました。

日本ではこのようなWeb面付けシステムが無かったので、驚かれていました。しかし、説明していくと簡単に自動で工場でなくても、どこでも面付け作業が出来ることに興味を持たれました。もちろん、日本にも優れた面付けソフトがあることを私は知っています。
私はオフセット印刷事業を始めるときに、熟練技術者に頼るのではなく、標準化された作業指示書をデータベース化しました。印刷機に版を作るプリプレス工程においても、熟練技術者に頼るのではなく、自動化して誰でも使える面付けシステムで、ソフトやPCに依存することなく、Webを使っていつでもどこでも使える面付けソリューションを8年かけて開発しました。
当社にはプログラムを開発するシステムエンジニア(SE)が12人います。私は様々なアイデアを投げかけ、面付けが早く簡単に出来るようになりました。
私は日本の印刷技術から多くのものを学び、データベース化しました。これからもグローバルな印刷ビジネスを日本の印刷業界と連携を深めて“先進化論”で未来にフォーカスしていきたいと考えております。

Web自動面付けソリューション
「CTP自販機」

KSIは、IGAS2022で自動面付けソリューション「CTP自販機」を出展して大きな反響を呼んだ。このほど株式会社トヨテックが日本代理店となりサービスを開始した。チェ・ジョンジュンCEOに「CTP自販機」開発の狙いと背景を語っていただいた。

CTP自販機の開発背景

チェ・ジョンジュンCEO談

「CTP自販機」は、オフセット印刷業務で必須の面付け作業をオペレーターの習熟度に関係なく効率よくこなすことが可能となり、生産性向上に貢献するソフトウエアです。
このソフトウエアは、私自身が必要性を感じて考案し、開発しました。その背景には印刷に関するオペレーションが標準化されていないという現状がありました。KSIは書籍や冊子、アルバム印刷などの事業を展開しています。そのノウハウを活かして、印刷用語や印刷の基礎知識を育成するためのカリキュラムを持っています。
カリキュラムは私自身が日本の印刷関連の書籍などを参考に勉強したものを使って作成し、現場のオペレーターの育成に取り組んできました。
韓国の印刷技術や印刷用語の大半は、日本から来たものです。しかし、日本の発音から少し変化させた言葉として定着している用語もあります。例えば「面付け」は韓国では「貼り込み」と言っています。しかし日本で言う「貼り込み」とは書籍に貼り込む用語で、異なる意味になります。韓国内で独自の用語が定着することもよいのですが、“印刷教育”という観点から標準化を進めデータベース化しました。
「CTP自販機」はこうした取り組みの中から必要性を感じて開発しました。人材の育成や人材確保といった課題を解決し、印刷オペレーションの標準化を可能にするソリューションが必要でした。

「CTP自販機」の特徴について

「CTP自販機」は、会員登録後にログインすることで活用できるクラウド型のサービスです。Web上から無線綴じ冊子や上製本などの冊子類の面付けを自動的に行います。画面を見ながら受注情報からアイコンを使って入力していくため、初心者でも簡単に作業が出来ます。
ヒューマンエラーによる入力の間違いや、専門的な知識や技術が不要になり、人材不足を解消することが出来ます。
具体的な作業は作成する冊子の仕様を選択し、用紙の種類と用紙サイズ、使う印刷機、色数や折り方などを選択した後、面付けのレイアウトを決めて作業指示を出していきます。
本文と表紙の情報を選択して操作を進めます。印刷機は外注の印刷会社が保有している印刷機を登録できるので、製造現場が複数に分かれている場合も自社内と同様に指示が出せます。
面付け情報は改めて確認でき、エクセルデータとしてもダウンロードできるので受注情報の管理でも利用して頂けます。
CTP自販機はPDFデータから版を驚くほど短縮しオフセット印刷の生産性と利益を作ります。

「CTP自販機」サービスを提供。「使用台数課金」方式
3か月間無料トライアル

株式会社トヨテックは、オフセット印刷のWeb自動面付けソリューション「CTP自販機」サービスの提供を開始する。同社は3か月間の無料トライアル期間を実施する。
豊田社長は「印刷物は小ロット・短納期がさらに進みます。作業時間を短縮し低コスト化を進め、1点当たりの利益を管理しなければなりません。プリプレスは最新のソフトをクラウドで使っていく傾向になると思います。定額方式ではなく、面付け台数の課金方式のため経済的です。在宅でも面付け作業ができ、働き方改革にもなります」と語る。
〔問合先〕
株式会社トヨテック営業企画室
林政彦氏 TEL04-7121-0755

トヨテック 豊田保社長

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