リコー 東京工業大、産業技術総合研究所らと超省エネ・小型の原子時計の開発に成功
東京工業大学、リコー、産業技術総合研究所の研究グループは、消費電力が極めて低い小型の原子時計を開発した。この原子時計は、構成部品のひとつである周波数シンセサイザの消費電力を大幅に削減し、さらに新たな量子部パッケージを用いることで温度制御の効率を向上させ、60 mW という低消費電力と15㎤という極小サイズを実現している。
同研究成果は、大型で消費電力が大きかった原子時計のサイズおよび消費電力を大幅に削減することで、これまで搭載が難しかった自動車やスマートフォン、小型衛星など、様々な機器に原子時計を搭載可能となり、自動運転、高精度な測位、新たな衛星ネットワークの実現を大きく加速させる可能性がある。
開発した小型原子時計は、消費電力を大幅に削減しながら、大型の原子時計とほぼ同等の1日で300 万分の1秒以下の精度を達成。この原子時計は、電圧制御水晶発振器、周波数シンセサイザ、レーザーのドライバ回路、制御回路、セシウム133 原子へのレーザー光照射を行う量子部パッケージで構成される。
開発した原子時計は、周波数シンセサイザをCMOS 集積回路で作りこむことで、消費電力を25 分の1以下まで削減することに成功。2mW の消費電力を達成した。
さらに、新たな量子部パッケージの構造を採用し、ヒーターによる温度制御の際に、外部の温度が伝わりにくくなるような隔離機構を設けるとともに、パッケージ内部を金でコーティング。温度制御の効率を向上させることで、電力を消費しがちなヒーターの消費電力も削減している。高安定レーザードライバ回路および高精度温度制御回路により長期間での周波数安定性も改善した。
従来の周波数標準器では、消費電力と周波数安定度はトレードオフの関係にあったが、開発した原子時計(ULPAC)は、良好な周波数安定度と低い消費電力を両立しており、サイズも15㎤と非常に小型。今回、105 秒(約1日)の平均化時間で2.2 × 10の長期周波数安定度を達成した。一般的な水晶発振器を搭載した時計と比べ、約10 万倍も正確な時計を実現している。