モリサワ 「写真植字機発明100周年事業」写研OpenType フォント、MC-6型写真植字機再現、津守工場旧社屋復元模型制作、写真植字機100周年特別サイト開設

株式会社モリサワは7月23日、大阪本社で取材に応じ、「写真植字機発明100周年事業」と「2024年度の取り組み」を説明した。森澤社長は「写真植字機発明100周年事業」として写研と共同で写研書体のOpenTypeフォントを開発し、2024年から数年にかけ100書体をリリースする。今年提供するのは、「石井明朝」「石井ゴシック」の改刻フォントに加え、写研のバリエーション豊かな見出し書体群を「写研クラシックス」としてOpenType化する。次に手動写真植字機MC-6型を当時の形状を生かしつつ、一部の機能をデジタル化し「MC-6型(2024)」として再現した。「現像」の工程を踏むことなく、備え付けのモニター上で文字の版下を確認することができるため、写植機の仕組みを理解しながら、植字を模擬体験することができる。三つめは阪神甲子園球場との共同プロジェクトである甲子園フォントを制作する。甲子園球場のスコアボードで使われてきた伝統の甲子園文字を受け継ぎ、『甲子園フォント』として制作するもので、来春から球場で使用予定である。そのほか、かつての写植機工場の再現模型の制作、100周年記念誌の刊行などがあり100周年事業は、特設サイトより、詳細を発信する。また、RISAPRESSをアニバーサリー特価で提供するキャンペーンなどの取り組みを発表した。

森澤社長とMC-6型再現機(2024)

写真植字機発明100周年事業

1.写研書体のOpenTypeフォント開発

2021年1月に写研書体を両社共同でOpenTypeフォントとして開発することを発表し、今年2月には「石井明朝・石井明朝オールドスタイルかな」「石井ゴシック」の13フォントと、写研のバリエーション豊かな見出し書体群を「写研クラシックス」としてOpenType化した30フォント、合計43フォントを2024年に提供する。
今年提供開始する43フォントに含まれる「ナール」は、製品化をきっかけに、それまで明朝、ゴシック、楷書といったスタンダードなものがメインだった書体デザインの多様化が加速した。今回提供するものとはウエイトは異なる、道路標識の書体として馴染み深い書体となっている。
イナクズレやゴカールは、マンガのセリフやロゴなどで使われてきた書体で、スーボは、当時珍しかった極太の丸ゴシック体で、鈴木勉氏がデザインした。鈴木氏はのちに字游工房を設立し、ヒラギノや游明朝の開発にも関わった。2025年以降も、これらに続くラインナップを順次提供する。

写研書体のOpenTypeフォント

2. MC-6型写真植字機の再現

手動写真植字機MC-6型を現代のデジタル技術を組み合わせて再現した「MC-6型(2024)」を制作した。現在でも動作するMC-6型機はあるが、写真植字機という一つの時代を確かに担った機械があったということを後世に伝えるため、その機械の構造等を実機で説明できるものを残し、写真植字機発明者であるモリサワの創業者森澤信夫の功績を語り継ぐ上で、大切なミッションであるということから制作した。
フレームはMC-6型をそのまま使用し、内部には小型のパソコンを組み込んで全体を制御し、メカニックな部分も壊れにくい構造に組み替え、「現像」という作業を行わずに備え付けのモニターで文字の版下を確認できる。また、文字盤も大きくし、制作物をプリンターで出力ができる。

MC-6型写真植字機の再現

3.津守工場旧社屋復元模型制作

戦後、モリサワが大阪で写真植字機を作ることになった際に使っていた工場を再現した模型を制作した。森澤信夫は1924年に邦文写真植字機の特許を出願し、以後石井茂吉氏と一緒に研究・開発を進め実用機の完成とつながるが、当時は東京で活動をした。その後1933年に一度石井氏との活動を解消し、大阪に戻った森澤信夫は1年ほど写植業をした後ネジの製造工場を立ち上げまた。その頃も石井氏は写真植字機の研究・開発を続け、戦争の空襲で工場を消失したこともあり、戦後石井氏からもう一度一緒に写真植字機の製造をやってもらえないかと相談されたことから、ネジ工場をやめ、再び写真植字機の製造をすることになった。
当時「西成区津守」にあったネジ工場の隣にあった小さな工場を借りて写真植字機の製造を再開した。この建屋は、その後モリサワが現在の場所に移転してからも残っていたので、平成30年の台風21号により大きな被害を受け、取り壊しされることになったため、現地で測量や写真撮影を行なって模型の制作を進めた。細部までこだわった模型になっている。

津守工場旧社屋復元模型制作

4. 写真植字機発明100周年特設サイト開設

邦文写真植字機発明100周年特設サイトを開設した。サイトはこれからもヒストリー動画など、更新予定。
https://www.shashokuki100.jp/

5. 甲子園フォントプロジェクト

阪神甲子園球場は今年開場100年を迎える。同じく今年邦文写真植字機発明100周年を迎えるモリサワは甲子園球場との共同プロジェクトとして伝統の甲子園文字を受け継ぐ『甲子園フォント』の制作を発表した。
現在、フォントは制作中で、完成したフォントは来年のシーズンから使用される予定。モリサワ特設サイトでは4月17日に行われたモリサワの冠試合のために制作したCMの2分ロングバージョンを公開している。
https://www.shashokuki100.jp/koshien/

6. 「モリサワと文字の100年」刊行

3年ほど前から着手し、モリサワだけでなく写研の協力も得ながらできるだけ客観的な観点から組み立てて制作している。記念パーティー当日の写真も掲載し、秋頃に完成予定。

2024年度の取り組みについて

1. RISAPRESS アニバーサリーキャンペーン

100周年にちなみ、RISAPRESSをアニバーサリー特価でご提供するキャンペーンを実施する。同社が取り扱うRISAPRESSの対象機種を特別価格で提供するほか、ランニング費用の一部無償特典も実施する。また、このキャンペーン期間中に契約したお客様に、エシカルペーパーのプレゼントも行う。エシカルペーパーは、近年、SDGsやエコ志向といった市場ニーズに対し、新たなご提案するためのサポートで、取引先である印刷会社が、エシカル紙を使った新たなご提案をすることで、その先のクライアント企業のSDGsに貢献できることを期待している。

2. 2024年度新書体

すでに発表している写研書体、モリサワ初のバリアブルフォント、DriveFlux(ドライブフラックス)、すでに発表している写研書体、モリサワ初のバリアブルフォント、DriveFlux(ドライブフラックス)を含む、2024年度新書体ラインナップは8月以降に発表予定。
また、今年度より、新書体の提供はMorisawa Fontsのみとなる。MORISAWA PASSPORTでは提供は行わない。

モリサワ初の和文バリアブルフォント「DriveFlux」

関連記事

最新記事