ミマキエンジニアリング 捺染ポリエステルの再利用、アナログ捺染のデジタル化の推進などで持続可能なデキスタイル産業へ
株式会社ミマキエンジニアリングは、6月8日~14日まで、イタリア・ミラノで開催の「ITMA 2023(国際繊維機械展示会)」に、世界初の技術として、捺染ポリエステル生地から昇華転写インクを脱色し生地を再利用する技術「ネオクロマトプロセス*」を出展する。これにより、循環型テキスタイル技術の紹介によりテキスタイル産業の持続可能性を提案する。
加えて、生産性では同社最速となるテキスタイル向けRoll to Roll方式昇華転写用インクジェットプリンタ「Tiger600-1800TS」も世界初披露する。
「ネオクロマトプロセス」による循環型テキスタイル産業の推進をアピール
人々のサステナビリティ意識の向上により、テキスタイル素材の大量廃棄が社会問題となっている。ワールドワイドでのテキスタイル素材の年間生産量は1億1,300万トン、廃棄量は9,200万トンにのぼり、そのうちポリエステル製テキスタイルは全体の約60 %を占めるというデータもある。テキスタイル素材、特に大半を占めるポリエステル製テキスタイルの有効活用による環境負荷低減は繊維業界の使命とも考えられる。
今回、同社が発表する昇華染料インクの脱色技術「ネオクロマトプロセス」は、色や柄の変更による捺染ポリエステルを再利用することで、焼却処分を不要にするだけでなく、リサイクルのための必要なエネルギーの削減にも貢献する。
インクや脱色用の溶剤を吸収した吸い取り紙(吸収材)は燃えるゴミとして処理することができ、水の利用や排水による水質汚染を最小限に抑えることができる。
ネオクロマトプロセスは、テキスタイル産業の持続性を実現する技術となる。
ミマキエンジニアリングの「ネオクロマトプロセス」は、昇華染料(昇華転写)により染色したポリエステル生地であれば脱色が可能。ほとんど水を使わないプロセスによる脱色が可能で、工業廃水が限りなくゼロに近い。また脱色後の生地にすぐにプリントや染色ができ、色柄の変更が何度でも可能という特長がある。
今後、同社では、ネオクロマトプロセスを活用した実用条件とソリューションの製品化に取り組み、リテールブランド(店舗サイン生地の再利用目的)及びアパレルブランド(衣類生地の再利用目的)とのコミュニケーションから、同技術の可能性を検証していくとしている。
アナログ捺染のデジタル化を推進する昇華転写用プリンタ「Tiger600-1800TS」発表
「ITMA 2023」において、世界初披露となる、テキスタイル向けRoll to Roll方式昇華転写用インクジェットプリンタ「Tiger600-1800TS」は、生産性が同社最速の昇華転写プリンタであり、それにより捺染市場のデジタル化を推進する。(2023年秋から販売を開始)
現在、世界の捺染製品の大部分は一部の生産国に集約され、アナログ印刷で生産されている。アナログ捺染は工程が煩雑で生産プロセスが長期に渡る上に、消費国への出荷リードタイムが長くなる。そのため、消費国のアパレルブランドや小売業は、欠品による販売機会損失を防ぐために在庫保持する必要があり、売れ残りのリスクと廃棄処分により発生するコストや環境負荷への影響がある。
また、アナログ捺染はインクの調合や印刷版の洗浄のため化学物質に触れる頻度が高く、作業者に対する安全性についての課題があった。
一方、近年テキスタイル業界及びアパレル業界では、デザインや色使いの多様化により、色数に合わせた印刷版やインクの調合を必要としないデジタル捺染技術が求められている。
デジタル捺染は工程が少なく設備規模も比較的小型のため、需要変動に合わせ必要なものを必要な分だけ消費地に近い場所で生産でき、リードタイム短縮により在庫リスクが削減できる。また印刷版の洗浄廃水が無くなることでも環境負荷の削減に貢献する。
「Tiger600-1800TS」は、新たに採用した高速駆動のプリントヘッドと、同社独自の画質技術により、最大印刷速度550㎡/h(従来機比143%)に向上した。印刷速度向上により、捺染市場のデジタル化をさらに推進する。
また、従来機では転写紙を装置の後方に装着し、印字後に装置の前方にて巻き取りする構造だったが、同機は装置後方にて巻き取りも行う構造としたことで、装置奥行サイズが約半分になっている。装置の設置スペースが小さくなることで、複数台導入を検討しやすくなり、さらなる需要変動への対応と生産量向上に貢献する。
なお、「Tiger600-1800TS」に搭載される昇華転写インクMLSb510は、繊維・アパレル業界において持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証 bluesign® APPROVEDを、2023年6月に予定している。これにより当製品が世界最高レベルの消費者や労働者の安全、環境への配慮された製品であることを証明し、テキスタイル産業の持続に貢献する。