ハイデルベルグ・ジャパン アイワードが日本国内4社目の”ハイデルベルグ サブスクリプション”を導入、会社を生まれ変わらせるために

今年 3 月ハイデルベルグ サブスクリプションとして導入された新しいデザインの反転機構付スピードマスター XL106-4
P の前で。アイワードの奥山社長(右)、大沢副社長(左)、ハイデルベルグ・ジャパンのヨルグ・バウアー社長(中央)


ハイデルベルグ・ジャパン株式会社は、6月22日、株式会社アイワードの石狩工場において、国内4社目となるサブクリプシション導入に関する記者発表会を開催した。アイワードは、昨年の2021年9月、サブスクリプション契約を締結し、2022年3月に、反転機構付のスピードマスターXL106-4-Pを導入。これによりハイデルベルグ サブスクリプション契約がスタートした。

会見の冒頭、ハイデルベルグ・ジャパンのヨルグ・バウアー社長があいさつにたち、「Push to Stop コンセプトをいち早くご理解頂き、スマートファクトリーへの道を力強く歩んでいるアイワード様に、日本国内4社目としてハイデルベルグ サブスクリプションをご導入頂いたことを嬉しく思います。ハイデルベルグのサブスクリプションがアイワード様の未来に向けた成功に貢献できるように、今後もより強固なパートナーシップで貢献していきたいと思っています」と、継続的なサポートを約束した。


単なる定額制ではない、コンサルで企業を成長させるハイデルベルグのサブスクリプション
次いで、ハイデルベルグ・ジャパンでサブスクリプションビジネスを担当するライフサイクルソリューションズ本部の草壁氏が、サプスクリプションについての導入内容や経緯について解説した。
まず印刷業界の現状について、2008年以降の印刷物の受注単価と製造コストの推移グラフを比較し、印刷受注単価はほぼ横ばいで推移しているが、紙やインキの値段上昇をし続けていることをから厳しい状況があることを指摘。「どうすれば、厳しいマーケットの中で勝ち残っていけるのかということを考えなければいけません」と語った。
つづけてミクロの視点から印刷の現場で起きている課題に注目し、「そこに性能の良い印刷機があり、”もっと製造できるのに”と思うことはないでしょうか。しかし実際には、損紙やヤレ紙の発生が利益に影響している、あるいは機械のトラブルで修理が必要になるということもあると思います。その一方で、仕事の管理、仕入れ先との交渉に時間を費やしているなど現場は多くの悩みを抱えています。そうした課題にワンストップでお応えするのがハイデルベルグサブスクリプションです」と紹介した。

ハイデルベルグ サブスクリプションは、定額期間である5年間(60か月)、導入先にハイデルベルグの社員が訪問し、トレーニングも行い、常にワークフローの改善に向けた検討を一緒に行うなどコンサルタントを行っていく。「単なる印刷機の分割払いではなく、月額料金には、印刷機に加えてコンサルティング&トレーニング、ワークフローのソフトウェアであるプリネクト、印刷資材と保守サービスが含まれています。End to End の包括的なサポートにより、機械が常にベストな状態で最高のパフォーマンスを実現できるよう、お客様のサステナブルなビジネスの成功に同じゴールを目指すパートナーとして貢献します」と述べた。

いかにアイワードが「ブック印刷」の仕組みを創り上げてきたか
続いて、草壁氏の質問に対し、アイワードの奥山 敏康社長および大沢眞津子副社長が応えるかたちで、サブスクリプションの導入背景や成果についての紹介があった。
昭和40年(1965年)に創業したアイワードは、国産の小型の印刷機からのスタートだった。その後、第一次オイルショックがあり、昭和48年には経営危機が表面化したという。この時、社員と協議して決まったのが、経営再建に向けた経営指針と規約であり、その背景にあったのが”きちんとした印刷物ができる会社でなければ再建できない”という強い思いである。

ハイデルベルグ サブスクリプションのパッケージとして含まれる印刷資材の在庫管理システム VMI の棚

そして昭和49年(1974年)、ハイデルベルグ社製の単色機を導入する。ここからハイデルベルグとの取引きが始まる。その後は、2色印刷機へ、あるいはスピードマスター 72ZP、スープラセッター、2台のスピードマスター M102 8 P カットスター付、XL106-8P カットスター付1号機等々、時代の変遷とともに印刷機を導入。同社の代名詞となる『ブック印刷』に特化した生産設備を構築していくことになる。
この間、事業のグループ化や再建など折々の課題があったが、それを乗り越えるたびに「ハイデルベルグ社から特別の配慮を頂きながら、最新鋭の印刷システムを導入して経営課題を解決すると言う経緯があります」と奥山社長は述べている。

石狩工場から始まる新しい道
アイワードにとっても象徴的な工場・石狩工場が竣工したのは平成10年(1998年)である。
2000年にCTPシステムを導入し、プリプレスからポストプレスに至るまでデジタルによる一貫生産システムを目指していこうと言う取り組みを始めた。2003年に導入したSM102-8Pカットスター付き(2台)は、これまでとは全く異なるシステムであり、導入により”短納期、高品質を保証する”ということが始まった。
非常に作業環境がクリーンで、仕組み自体がエコロジーで省力化が進んだ。「お客様から高い評価を頂くことになり、現在のお客様の基礎を創り上げる力を発揮しました」と振り返っている。

アイワードに導入された新しいデザインの反転機構付スピードマスター XL106-4P

特に、2017年のAI搭載の印刷システムXL106-8Pカットスター付きの1号機を導入で、スマートファクトリーへの道を歩み始めただけでなく、補助金制度も活用しながら改善活動を続け石狩工場の使用エネルギーを前年より20%削減することにも成功している。
これまで同社は、1987年から始めた「ブック印刷専業化への取り組み」、2000年から始めた「フルデジタル化の取り組み」、2017年から始めた「スマート化の取り組み」へと、設備や取り組み方そのものをシフトしながら進めており、今回のサブスクリプション契約によりXL106-4Pカットスター付き導入に至っている。

印刷業の在り方を変えていかなければならない
今回のサブスクリプション契約を選択した一番の魅力について奥山社長は、「何より5年間・60回のコンサルタントが含まれていることです」と強調した。その背景にあったのは、従来型の印刷会社から脱皮し、新しい企業の姿を見出さなければならないという危機感である。
「版を印刷機に装着して印刷するということが、ずっとやってきたことでした。しかし、本当にこのまま続けていいのかということです。この姿は近代印刷業が登場した当時、つまり、はるか昔のビジネスモデルです。これ自体を変えていかないとなりません。それでなければ、当社は成り立たなくなるという危機感を強く抱いています」と語った。
「現在のアイワードは、お客様が作った原稿を加工するというビジネスモデルです。これは、お客様ありきのビジネスです。しかし、本当にそれだけでいいのかということなのです。もちろん生産性の向上も進化のためには大切ですが、さらにその枠を超えたビジネスモデルのあり方の改革も必要だと思います。社員一人一人の働き方を根こそぎ変えていく。お客様から頂いた内容を加工する業務だけに終わらない、そういう会社に生まれ変わらないとならないと強く考えました。それがサブスク導入の目的であり、決意なのです」。

サブスクリプション契約についての取り組みを語る奥山社長


サブスクリプション契約の特徴について、5年間の間に毎月行われる60回にわたるマンスリーコール(会議)で、運用PDCAをまわしていくことを挙げる。「今までとは全く異なることだと思います。PDCAを60回続けて、螺旋状に上げていかなければなりません」。
また、ハイデルベルグが掲げているテーマ「解き放てポテンシャル!」についても、「アイワードの枚葉印刷部の仕事の仕方、仕組みの見直し、改革に留まらず、枚葉印刷部門を中心に会社全体の潜在能力を最大限に発揮させるプロジェクトにしていく。それが解き放てポテンシャルという意味になると考えております」とした。具体的な目標としては、 ① 作業工程の削減、 ② 設備の有効活用、 ③OEE(総合設備効率)の向上を進めることを宣言している。
なお石狩工場ではこれまでも改革活動として、「人から仕組みへ」をテーマに掲げ、独自の取り組みを行ってきた。サブスクによるマンスリーコールによるPDCA活動が、独自に取り組んできた改善活動を躍進させる起爆剤になることも期待しているところだという。

相乗効果を生み、現場の意識を変える
サブスクリプション契約による月に1度行われるマンスリーコールについて大沢副社長は、その効果について「繁忙期の設備導入でしたが、全体が残業もそれほどせず、仕事を終えられるようになりました。まずそのことにハイデルベルグ サブスクリプションというソリューショ ンの高い能力を感じました」と述べている。
特に同社は障がい者雇用を積極的に行っている企業としても知られるが、今回の契約で、「今まで使っていた8色機を替えての導入ということで、より生産性を上げないといけないというオペレーター、一人ひとりの思いが実になり、不十分なところは自分達でカバーするんだという気持ちが生まれています。そして、機械の成果を上げていき、”やれるんだ”という自信になり、皆で力を合わせて取り組むということに繋がっています」と、現場が変わってきていることを報告した。
実際、毎月のマンスリーコールには、枚葉印刷部門の全員が出席。サブスクリプション対象の機械に限らず、枚葉印刷部門全体の OEEをいかに上げるか、準備時間をいかに減らしていくか等の課題に、一丸となって取り組んでいる。

サブスクリプションによる効果を語る大沢副社長

生産性の向上も同時に目標に掲げている同社では、いずれの設備もあえて1万8000回転の印刷機を選択している。高い生産能力を確保することを目指しての選択である。現場では、「なかなか壁を超えられないのが現状」としながらも、マンスリーコールを繰り返す中で、改善を続け、1万8000回転を維持する高い生産能力を確保できるようにしたいと取り組んでいる最中だという。
その取り組みは、サブスク機以外の印刷システムにも波及。オペレーターは”サブスク機”にならい、生産スピードを上げようと取り組んでおり、全体の生産性向上に繋がっているなど相乗効果を呼んでいる。

ブック印刷を通じて出版事業の成功を支援する顧客体験価値を提供できる会社へ
現在の課題について奥山社長は、「アイワードのお客様の大半が出版社様ですが、そのお客様が『ブック印刷』を発注することで、私たちとの間に起きる”顧客体験価値”を見える化することが経営課題になっています」と明言している。ここでいう顧客体験価値とは、出版事業が成功することであり、「お客様と一緒に一つの課題を解決するために伴走する。アイワードと一緒に本づくりをすると、こんないいことがある、それを見える化するということ。その結果が、さらに別の顧客を呼んでくるのではないでしょうか。こうした”善循環”をいかに経営活動に組み込んでいくのかが経営課題になっています。ハイデルベルグさんには、こうした取り組みを後押ししてもらいたいと思っており、期待しているところです」と述べた。

また目指す姿として、「我々は工業製品をつくってはいますが、やはり文化財をつくっている会社だという思いも持っています。そのためデータベースや組版、デザインなどの初期の段階からのお手伝いができ、最後まで品質管理ができます。出来上がった物を手にとる読者の体験価値や編集者の体験価値などを共有するには、印刷だけでは足りません。より広義の意味で ”文化財作成業者”としての有り様として、品質管理も行い、高い生産性もなければ、お客様の成功には寄与できません。社員一人ひとりが良い意味で、そうしたプライドを持つことが大切です。売上志向よりも、内製化率を高める思考へと切り替わっていく。それが経営方針を実現する道だと思っています」と展望している。

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