ハイデルベルグ サブスクリプション契約で生産性向上に取り組むウィザップのオープンハウスを開催
ハイデルベルグ・ジャパン株式会社は、9月2日、株式会社ウィザップのオープンハウスを開催した。ウィザップは、2021年3月にハイデルベルグサブスクリプションを締結し、それに伴い菊全4色機スピードマスターCD102-4、CTPのスープラセッター106+DCL、サフィラ印刷資材、プリネクトプリダクションマネージャーを導入。これにより生産性の向上と全体最適化を図っている。
オープンハウスは、午前と午後の2回にわたり行われ、新社長の高橋英司氏からの会社の紹介、前社長でCCBプロデューサーの高橋陽子氏と製造部部長の小池勇樹氏を迎えてのパネルディスカッション、サブクリプション契約によって新たに導入したスピードマスターが稼働する現場の見学や、出席者を交えての自由な座談会と印刷の現場で活躍している女性オペレーターへの質疑応答など、盛りだくさんの内容で行われた。
オープンハウスの開催にあたり、ハイデルベルグ・ジャパンのヨルグバウアー社長が挨拶にたち、ウィザップと約1年半前に締結したサブクリクションのサービスについて「これは印刷会社とハイデルが新しいレベルのパートナーシップを組むことであり、ワークフロー、CTP、印刷機で構成される印刷システムの提供だけでなく、継続的なコンサルティングサポートを提供していくものです」と解説。そしてこの新しいパートナーシップが、ウィザップのパフォーマンスを向上させ、持続可能なビジネス基盤を確立することを目的としていると紹介した。
取り組むにあたり、両者の間で達成すべき目標についての合意に始まり、両者の関係者全員が同じ目標を理解し、共有し、今までの仕事のやり方を見直していったという経緯を解説。「目標に向かい、毎月、一緒に取り組みを進め、考え方改革、働き方改革が可能になります。本日は、どのようにして生産性を2倍にしたか、パートナーシップがイノベーションと成功をいかにもたらしたのか、皆様にとって良いヒントとなれば光栄です」と語った。
続いて、高橋英司社長がウィザップについて紹介。まず、2日前に社長に就任したばかりで緊張していると述べ、「約1年半前からサブスクリプションサービスを活用しています。生産性において飛躍的な数字の伸びがみえてきています。このサービスを周知し、少しでも皆様方の経営、生産、お客様そして印刷業界の貢献に役立てれば幸いです」とオープンハウスの趣旨を述べた。
ウィザップは、本社のある新潟県の他に、東京都台東区にも営業所を持つ。従業員数は正社員90人とパート10人を合わせた総勢100人の規模の会社である。創業から76年が経ち、商業印刷を主体とし、文字物およびページ物を得意としているほか、ホームページの制作も新たな得意分野となっている。
印刷設備としては、昨年、サブスクリプション契約で導入した菊全判オフセット片面4色機スピードマスターCD102-4の他に、印刷機では菊全般オフセット両面2色ハイデルベルグ製SM102-4P。CTPはサブスクリプションサービスで導入したスープラセッター106+DCL、製本・後加工の設備では無線綴じライン、中綴じ機、折り機(3台)を持つ。
なお、今回のサブスクリプションの契約に伴い、2台あった4色機を1台にしている。そのため2台分の生産を維持するためにも、生産性を2倍にすることをが求められたが、現在ではほぼ従来通りの生産性を達成するところまで実現している。
サブスクでチームで取り組むという意識ができた
社長挨拶の後には、前社長で、現在はCCBプロデューサーに就任している高橋陽子氏と、製造部を統括している小池勇樹部長によるパネルディスカッションが行われた。ハイデルベルグ・ジャパンの 紀 世志広ゼネラル・マネージャーによる司会のもと、サブスクリプション導入の背景やウィザップが置かれていた状況、サブスクリプション導入による効果、それを可能にした社風づくりまで、様々な角度から変化していく企業づくりについて語られた。
サブスクリプションの導入背景について高橋氏は、「コロナ禍になり、イベント関連の仕事が多かったということもあり、本当に仮死状態といってもいい状況でした。その頃、20年超えの4色機があり、買い替えに対しても不安がありました。自分自身、60歳で社長を譲ることも決めていました。その頃、サブスクリプションの話がきたのです」と語った。
導入を決めた考え方として、高額な印刷機を導入してそれを返済しつつ、時々必要となるメンテナンスの費用の負担を考えると、毎月支払う金額があっても常に最新の生産性を維持でき、生産性の向上が図れることに魅力を感じたという。
加えて髙橋氏はサブスクリプションを評価する大きな要因に、継続的なコンサルタントを挙げる。「技術面でのサポートだけでなく、全体がチームとして頑張ることの意識づけをワークショップなど色々な面から進めてくれます。チームとして頑張ることを重要視することで、皆で盛り上がっていきます。また、対外的な視点で指摘されるという外圧があることもポイントです。ドイツからもコーチとして来て頂いた時には、ドイツにおける製造に対する”無駄を一切許さない”という認識を教えてもらい、刺激になりました。現場の活性化という点が格段に違います。そして、指摘するだけでなく、取り組んだ結果、どうだったかまで面倒をみてもらえるなど、想像以上に良いです」と述べた。
また実際の生産性の向上についても、サブスクリプション導入当初と現在の比較を数字で紹介した。それによると、準備時間の短縮、ヤレ紙の減少、平均印刷速度の向上(通常は15,000回転が多く、平均すると約14,000回転)など。小ロットの仕事が多いが、ジョブ数が多いことから、段取り時間を短くし、生産性を上げることでOEE(生産効率)の向上を実現していることが披露された。
生産部門を管理する小池部長は、サブスクリプションへの切り替えについて、「2台の印刷機を1台にするという提案だったので、生産性を2倍にしないといけないという不安がありました。しかし、現状、ほぼ2倍になっています。弊社の繁忙期である3月も、外注に出すことなく、残業もそれほど増えていない状況です。事前に描いていた状況を達成しています」と報告。
さらに人員についても、2台から1台になったことでオペレーターは9人から6人になった。余剰人員となった3人は、製本や新規事業へと新たな部署へ振り分けている。結果、「コスト面でも生産面でも上がっています」と効果を語った。
また生産性の向上には、新しい機械を導入したということよりもプリネクトによる生産の自動化が大きく寄与しており、全体最適化に繋がっていると報告した。
CCBプロデューサー・高橋氏念願の女性オペレーターが現場で活躍
パネルディスカッションの後には、サブスクリプションを機に新たに導入した4色機CD102が稼働する現場も披露された。同じフロアの壁を隔てたところには、CTPのスープラセッターも設置されている。
以前、同社ではCTPは異なるフロアに設置されていたが、サブスクリプションと同時に印刷機と同じフロアへ移動。印刷オペレーターが刷版も担当するという作業環境へ変更している。
また印刷のエリアでは、入社3年目の熊島小暖さんも印刷機の機長として活躍している。熊島さんは、高橋CCBプロデューサー念願の同社初の女性印刷オペレーターである。
オープンハウスの時間は、実際に仕事で印刷機が稼働しており、そのリアルな状況が披露された。
女性オペレーター採用にあたり、特に社内整備をするということもなかったということだが、熊島さんは『印刷は楽しい』と表現する。
印刷オペレーターの熊島さんを囲んでの質疑応答において、困ったことはないかという質問に対して、「紙積みも、ローラーの取り付け・取り外しも行います。女性1人ですが、皆と平等に仕事をしています。特別に困ったということはありません。今は ”早くて、きれいで、安い” を目指しています。めちゃくちゃ難しく、苦戦しています。きちんとできるようになりたい」と明るく語った。