ゲッティイメージズ 2021年のクリエイティブトレンドを予測、顧客エンゲージメント向上へ
1億2500万点以上のコンテンツを提供する世界最大級のストックフォトサイト「iStock」を運営するゲッティイメージズは、2021年のクリエイティブに関する流行を予測した「iStock Creative Trends 2021」をまとめた。レポートでは2021年のトレンドとして、「サステナビリティに配慮したビジュアル」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「落ち着きのある配色」、「SNS優先」、「動画がブーム」を挙げている。
ゲッティイメージズは世界的な市場調査会社である YouGov社と提携し、26ヵ国13言語で1万人以上の消費者と専門家を調査し、「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにした「Visual GPS」と呼ばれるガイドラインを作成している。同ガイドラインに裏付けられた市場のニーズやトレンドをもとに、世界中の34万人のコントリビューターと呼ばれる契約フォトグラファーに撮影指導を行うことで、時代に合わせたコンテンツを提案している。
今回のレポートについて、iStock クリエイティブ専門チーム Creative Insights マネージャーの遠藤由理氏は「ビジュアルは人々の思考や行動に大きな影響を与える。見た人の共感を呼び、高いエンゲージメントを得られるかどうかを大きく左右する重要なコンテンツ。写真や映像などのビジュアルコンテンツが、全世界共通のコミュニケーション言語となった現代社会において、クリエイティブの質の高さだけでなく、見る人目線でビジュアルを選択し発信していくことが、ますます重要になっていく」とのコメントを寄せている。
【iStock Creative Trends 2021】
1.サステナビリティに配慮したビジュアル
「Visual GPS」の調査によると、消費者の83%は「今の地球の扱い方が将来に大きな影響を与える」と考えていることが判明。また80%が製品やサービスが環境に直接関係していなくても、企業やブランドが広告やコミュニケーションのすべてで環境に配慮していることを期待している。
2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告書『シングルユースプラスチック』によると、1人当たりのプラスチックごみの廃棄量が世界第2位と、日本は世界的に見ても化石燃料への依存度が高く、環境への配慮に後れを取っている。一方、新型コロナウイルスの流行中は、移動手段を自転車に変えたり、野菜の自家栽培をしたり、キャンプに出掛けたりとサステナブルなライフスタイルが広がっている。大企業だけでなく小規模ビジネスでも、日常的なものとしてサステナビリティな取り組みを可視化することが重要となる。
2.ダイバーシティ&インクルージョン
「Visual GPS」の調査よると、消費者の80%が「異なる文化やライフスタイルなど、多様性を取り入れた広告に好感を持っている」ことが判明した。業界を問わず、あらゆる団体や企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」を取り入れるうえで重要なことは、人種・民族性に限らず、年齢や、性別、ジェンダー・アイデンティティ、社会経済的地位、身体能力、性的指向、宗教など、あらゆる要素が交差することで、“個人”が形成されているということを理解すること。
iStockサイトの検索回数を見ても「ダイバーシティ」は昨年対比で93%増、さらに新型コロナウイルス感染拡大後はより具体的なキーワードが増えており「テレワーク 日本人女性」が2400%増、「ジェンダー平等」が680%増となっている。あらゆるコミュニケーションで、消費者イメージを正しく捉えたビジュアルコンテンツの制作、選定、発信をしていく意識が広がっており、個人一人ひとりを受け入れる姿勢を表現することがますます求められる。
3.落ち着きのある配色
この5年間で、iStockのトップセラーの色調は寒色系のブルーから、暖色系のオレンジに変化している。新型コロナウイルス流行後は、精神的なストレスを緩和する落ち着きのあるトーンや、安心感を与える温かみのある色調のビジュアルニーズがさらに加速している。また、「Visual GPS」の調査では日本の消費者の90%が「正直で公正な企業から購入する可能性が高い」と述べ、88%が「透明なビジネスを行っている企業で働きたい」と答えている。このことからも、不安や恐怖といった感覚を与える可能性のある暗い色や冷たい色ではなく、見る人に安心感を与える落ち着いた色や、シンプルな形、分かりやすいビジュアルを使うことが、エンゲージメントを高めるために効果的をもたらす。
4.SNS優先
新型コロナウイルスの流行により、日常生活におけるあらゆる消費活動がオンラインへ急速に移行し、直接顔を合わせることなく容易に商品やサービスを購入/利用できるようになった。「Visual GPS」の調査によると、消費者の60%が「より(自分に近い)身近に感じられるブランドや企業から商品やサービスを購入したい」と考えていることが判明した。
また、日本の消費者は、より新しいテクノロジーを受け入れていることもデータから明らかになっている。学校、仕事、生活といったあらゆるシーンで新しいテクノロジーを取り入れる流れは今後も加速することが予想され、消費者からより高いエンゲージメントを得るために、SNSを使った情報発信やコミュニケーションをビジュアルでも示すことが重要になってくる。
5.動画がブーム
2021年は「5G」の普及により通信速度が向上し、今後はますます動画ビジネスが躍進することが予測される。CSA Researchの調査によると、2023年には世界での動画閲覧者数は31億人に達すると言われており、動画コンテンツがこれまで以上に需要が高まってくる。
日本における「Visual GPS」の調査では、58%が「購入する製品やブランド、使用するサービスを選ぶ際に、写真、イラスト、チャートや図表、ビデオで情報を得たい」と回答しているように、テキストよりも視覚的な情報を重視している。このような動向や消費者傾向を意識し、より多くの適切な動画コンテンツを作成することがますます必要になる。