ゲッティイメージズ ジャパン 日本企業では6割以上が「虹」シンボルを使用、「見せかけ」ではないビジュアルコミュニケーションの重要性

ゲッティイメージズ ジャパン株式会社は、LGBTQ+コミュニティを反映したビジュアルコミュニケーションの重要性についての統計を発表した。

■個人の意識が変化。一方で実態を伴わない「見せかけ」も?

今年も開催される『東京レインボープライド』(主催:特定非営利活動法人 東京レインボープライド) は、性的指向や性自認に関わらず、すべての人が自分らしく生きられる社会を目指すイベントである。年々このような、LGBTQ+コミュニティを支援する様々な取り組みが増えている中、最近は、ポップカルチャーや、身近にいる LGBTQ+アイデンティティを持つ人々を通して、LGBTQ+コミュニティに触れる機会も増えているように感じられる。

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一方で、政府関係者の差別的な言動や、G7 先進国の中で唯一、差別禁止法や同性婚を認める法律が整備されていないことが問題視されるといった課題もある。個々の意識が変化している今だからこそ、社会全体で理解を深めて行動していく事が必要ではないだろうか。

そこでiStock のビジュアル専門家は、「見せかけ」ではない LGBTQ+コミュニティを反映したビジュアルコミュニケーションの重要性について考え、発表をした。

■LGBTQ+コミュニティの人を描いたビジュアルは 1%未満
過去 10 年間、iStock で人気があった企業やブランドの広告ビジュアルの中で、LGBTQ+コミュニティを描いたビジュアルは、全世界で1%未満しかないことが分かった。

特に、トランスジェンダー、ジェンダーフルイド、ノンバイナリーの人々は十分に表現されていない。また、日本と世界共通で、プライドパレードやロマンチックなシーン、レインボーフラッグなどの「虹」シンボルがよく使われていた。さらに、若年層の白人、黒人、多民族を中心としたキャストが主流で、その他の世代やアジア系の人々が表現されていない傾向もある。世界人口の 5%が LGBTQIA+であるとされ、さらに日本においては 9%近くの人が LGBQ+を自認していることも考えると、さらに多様なビジュアル表現が必要である。

■日本では依然、「虹」シンボルの描写が 6 割以上
直近1年間の iStock におけるビジュアルトレンドを分析すると、世界的には LGBTQ+コミュニティの人々が「日常生活」の中で描かれているビジュアルが人気を集めている。それに対し、日本特有の傾向があることも興味深い。具体的には、LGBTQ+コミュニティを実際に捉えた写真やビデオではなく、イラストが人気であり、また「虹」のシンボルを多用していることが特徴。世界的には「虹」が用いられているビジュアルは全体の 30%であるのに対し、日本では 60%以上と高い割合になっている。日本の企業やブランドは、LGBTQ+コミュニティをビジュアルに反映させたいと思いながらも、どのように表現していいかが分からないことや、「炎上」することを恐れるといった、日本特有の理由も背景にあるのかもしれない。

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■消費者は、様々なコミュニティを考慮した企業やブランドを支持する
「VisualGPS」の調査結果によると、消費者は LGBTQ+を含む様々なコミュニティに配慮した企業やブランド、そして顧客や従業員に誠実で透明性のある対応をする企業やブランドに対して、より信頼を寄せる傾向があることが分かった。特に若い世代にとっては、こうした価値観が購買意思決定において重要なファクターとなることが考えられる。

さらに、Kantar の調査によると、アメリカでは LGBTQ+コミュニティが約 1.4 兆ドルの購買力を持っているとされる。LGBTQ+の人々を反映させた広告を展開するブランドから商品を購入する可能性が高く、一方で LGBTQ+コミュニティを支援しないブランドの製品を避けるとともに、反 LGBTQ+のブランドに対してはボイコットする可能性も高いことを、この調査結果は示している。

 これは、社会的にも LGBTQ+コミュニティへの理解や支援が進んでいることを反映しており、企業やブランドが LGBTQ+コミュニティに配慮した取り組みを行うことがビジネス上のメリットにもつながる可能性があることを示している。そのため、消費者の期待に応えるためには、このコミュニティの本質を描くビジュアルコミュニケーションを行うことが大切になってくる。

■「レインボーウォッシュ」とは?「見せかけ」にならないビジュアルコミュニケーションを
「レインボーウォッシュ」という言葉を聞いたことがあるだろうか?「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」は、環境保護を装っているように見せかけながら、実際にはそうではない、表面的な企業や商品などを批判するために用いられる言葉だ。同様に、「レインボーウォッシュ」も、企業がロゴや商品などに虹色を使ったりして、LGBTQ+のコミュニティに対する支援を装うことを批判する言葉である。

この言葉は、欧米を中心に使用されるようになっている。LGBTQ+コミュニティを表現したインクルーシブで多様なビジュアル表現において、さまざまな属性、アイデンティティ、人種、年齢層などを正確に描写することがますます重要になっている。今まで表象されてこなかったコミュニティをポジティブに描写することで、販売に影響を与え、ブランドロイヤルティを構築する効果がある。

ただし、「レインボーウォッシュ」を避けるためには、LGBTQ+コミュニティに対するインクルーシブな姿勢をマーケティングの取り組みに加えるだけではなく、企業文化にも反映する必要がある。企業が LGBTQ+の消費者や従業員に対し、どのような違いを生み出しているかを示す、リアルで共感を呼び起こすビジュアルを取り入れることが重要。例えば、さまざまな家族の形や日常生活を描写することが挙げられる。「虹」シンボルで、単に LGBTQ+フレンドリーであることを支持するだけのビジュアル表現よりも、こうした表現の方が大きな可能性を秘めていると言える。

■LGBTQ+コミュニティの人々をリアルに描くビジュアル表現で考慮すべきこととは
これから先 LGBTQ+コミュニティを描くビジュアル表現について考える際に、以下の 3 点を考慮することが推奨される。

1 仕事や日常生活の中で、多様なシナリオや役割で活躍する LGBTQ+の人々を映し出しているか?
2 LGBTQ+の人々が、コミュニティ内外で共有する経験を映し出しているか?
3 トランスジェンダーやノンバイナリーなど、さまざまなアイデンティティを持つ人々を表象しているか?

職場や家庭、遊びといった様々なシーンの中で、同僚や家族、友人と過ごす日常生活における、リアルな LGBTQ+コミュニティをビジュアルで表象することで、本当の意味で人々が理解し合い、価値観を共有し合える社会へと前進できるのではないだろうか。

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