グーフ デジタル印刷生産と研究開発 拠点“goof.CAMPUS”を開設 ~ メーカー、サプライヤー、印刷会社との新たなエコシステム構築へ

株式会社グーフ(東京都品川区)は神奈川県横浜市に、印刷生産と研究開発の機能を持つ拠点として『goof.CAMPUS』を開設し、2月13日、開所式を執り行った。『goof.CAMPUS』は、実際の印刷生産に限らず、関連するソフトメーカー、ハードメーカー、サプライヤー・周辺サービス、運営パートナーとともに、ビジネスモデルの実践に必要なスタッフ育成、技術を磨き、新しい印刷ビジネスの“エコシステム”を築くコミュニティとして位置付けられている。その中でも全国の運営パートナー(印刷会社)とはサステナビリティ知識の向上と適地生産を支える人材育成を進め、印刷サービスのGX(グリーントランスフォーメーション)を見据えていく。

印刷サプライチェーンの
全体最適化で持続可能性拡げる

グーフは2012年6月に創業以来、印刷需要家に向けてデジタル技術を駆使した新しいプリントサービスを開発・提供してきた。その中核となるのが、デジタルプリンティングプラットフォームの『GEMiNX(ジェミナス)』。印刷需要家が販売する印刷商品や、販促活動で利用する印刷物などの入稿データをベースに、印刷のオーダーごとに自動的に最適な印刷ファイルへと変換し、印刷量、納期、印刷品質、使用する用紙などの各種要件や印刷物の配送先エリア情報から、最適な工場、印刷機に自動的にジョブを振り分け、提携先の印刷パートナーに発注する。

Webサイトでグッズなどの印刷商品を販売するケースでは、日ごとの発注単位の予測が難しい。そうした受注量が変動的な印刷サービスであっても、納期通りに発注された単位を確実に納品する品質レベル保証が要求される。そのためには分散印刷や適地生産が有効となる。また、需要予測に基づいて大量に生産し、倉庫から出荷する形態よりも、注文を受けてからデジタル印刷で必要な量を、必要な時に出荷するオンデマンド型の生産環境が適している。『GEMiNX(ジェミナス)』は、そうしたサービスを支えるもので、マーケティングオートメーションやCRM、ECサイトなど印刷需要家の社内システムと連携して、発注から生産・配送まで印刷に必要な全ての機能を提供する。

さらに『GEMiNX(ジェミナス)』による適地生産など印刷サプライチェーンの全体最適化は、エネルギー消費量の削減、GHG排出量の削減、生産の効率化、コスト削減、ターンアラウンドタイム(TAT)の短縮など、社会の持続可能性にもつながる。同社には近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)を指向する印刷需要家からの引き合いが多いという。

GEMiNXの概念図

『goof.CAMPUS』は、そうした印刷の可能性を拡げるビジネスモデルの実現に向けた生産拠点に加え、①実ビジネスデータを活用した実証実験、②月産400万枚のプリント体制の実現、③自動化による高い対人件費生産性、④最適化・標準化につながるデータの取得、⑤goof.CAMPUSで構築した基盤の横展開を目指す。

例えば、ハードメーカーは、オペレータの動線を含めた操作性と収益性の関係の分析データや、1案件ごとの消費電力量データなど、機器の改良や開発に関わる実績ベースでの情報を得ることができる。運営パートナーにとっては具体的なビジネス案件、機会の創出のほか、IT・設備投資の見直しによる高収益の運営モデルの検証などの場となる。

『goof.CAMPUS』では“月産400万枚のプリント体制の実現”に向けて、A4片面で最高320ページ/分の生産性を持つキヤノンの高速枚葉インクジェット印刷機『varioPRINT iX3200』を設置。さらには今年中盤を目途にラベルプリンター、捺染プリンター、各種加工機の導入を予定しており、既存設備を含めて、設備全体の枚数、件数を共通のKPI(重要業績評価指標)として運用していく。また、これらを運用しながら“所有”から“利用”に設備投資を転換するファイナンスモデルを検証する。

varioPRINT iX3200

『goof.CAMPUS』のパートナーは現在17の企業・団体。運営パートナーは株式会社アスコン(広島県福山市)、錦明印刷株式会社(東京都千代田区)、株式会社フジプラス(大阪府大阪市)、株式会社小松総合印刷(長野県伊那市)の4社で、『goof.CAMPUS』と連携しながら自社の提供価値の向上を目指す。今後、その理念に賛同する企業・団体をパートナーとして迎えることがあるほか、印刷に関わるマーケティング事業者やサービス事業者との連携も視野に入れている。

2月13日に開所式

2月13日の『goof.CAMPUS』開所式にはパートナー企業・団体が出席。運営の安全と成功を祈願する神事の後には懇親の場が設けられた。

来賓を代表して三菱HCキャピタル株式会社の澤田真常務執行役員は、「世界を変えたイノベーションの一つが印刷。現在はペーパーレスや事業所の減少、AIの影響、環境への配慮の流れの中で大きな転換点を迎えていると認識している。CAMPUSではリアルな印刷ビジネスを通じて、各ステークホルダーが研究開発に挑戦するという。わくわくしており、共感している。この取り組みが業界全体の発展に寄与していくものと信じている」と挨拶。運営パートナーを代表して錦明印刷株式会社の塚田司郎代表取締役社長は乾杯の発声で「グーフは印刷需要家と私たちサプライヤーの間に立って、最適なプラットフォームを提供し、印刷物のインプロキュアメントを実現するというミッションを掲げている。今回は従来のビジネスから一歩前に出て、素晴らしい生産設備を用意され、サプライヤーとして社会に貢献するという。今まで培ってきた知見や経験を持ち、前に向かっていけば必ずや明るい未来が待っていると確信している」と杯を掲げた。

開所式での神事

株式会社グーフ CEO 岡本幸憲氏 談

次世代のNEW NORMALをつくる

この業界に入ったのが29年前の31歳の時で、アメリカから帰国し、東京・大田区で父が営む複写・情報処理・写真および軽オフセットの会社に入社したのが始まりだった。それまでアナログオンデマンドで、大田区のモノづくりの企業や羽田空港に、図面や完成図書、業務日誌などガバナンスに必要なドキュメントを、毎日最適な量で、お客様のビジネスのリズムに則って提供していたが、シリコンバレーで数年間を過ごし、インターネットやデジタル技術に触れてきた私は黒船のような扱いをされ、苦い経験をしたこともある。

当時、お客様がパソコンを導入し、IT化を進めていく中で紙の将来についての議論がされる一方、人がフィジカルとして存在する以上、人間味のあるコミュニケーションが必要だと信じていた。ただし、経済成長を支えてきた量に依存する印刷は見直す必要があると強く感じていた。それは自分ひとりではできないことだった。様々なメーカーから「やれるものならやってみろ」と機会を与えてもらいながら、この30年間、100%デジタルで生き延びて、少しずつでもスケール化できたことに感謝したい。

しかしながら、今後を見据えて、3年後、5年後、10年後を考えなければ無責任になる。私にはこれからのグーフのシナリオを作る責任があり、続編となるVol.2につながるVol.1のエンドを作る必要があると感じている。

グーフCEOの岡本氏

goof.CAMPUSは、今まで培ってきた力の中で次代につなぐための課題解決を見つけようと開設するに至った。

ここにいる皆さんも、多くの印刷会社が設備投資をしたいができずに苦しんでいる状況にあることを理解していると思う。日本の償却のルール、返済のルールは、デジタルの進展で多様に変化するマーケットのスピードに合わなくなっている。常識通りに償却した後で利益を挽回するというリズムは時代に追いつかなくなったことが大きな課題だと思う。

goof.CAMPUSのメッセージは“NEW NORMAL”だ。新旧交代という過去の延長線上ではなく、ありのままの状態を認識した上で、理想とすべき未来の状況を追求して実現していく。誰もやってきたことのない世界に踏み出すために、ここでハード、ソフト、サプライ、運用の領域で、人と技術を育み、同じ共通認識の中で、キャッシュフローを意識した枚数の占有率を高めるモデルを構築する必要がある。今はその答えは見えそうでありながら見えていない。パートナーとともに、モノの稼動率を上げていきたい。

この先はラベル印刷の拡張に向けてメーカーと相談している。またパートナー会社の協力で捺染技術を取り入れる。我々がターゲットとしているマーケティングコミュニケーションのお客様の先に、手段としての必要な印刷の定量をしっかりと提供し、その中から人が育まれ、この理念を引き継ぐ仲間が次のレイヤーを芽生えさせられるよう努力していく。

CAMPUSの場は単なるグループではなく共創の場と捉えている。遠慮なくドアをノックし、当社のスタッフに問い合わせを頂きたい。

株式会社グーフ
東京都品川区大崎4-1-2 ウィン第2五反田ビル3F
https://www.goof.buzz

goof.CAMPUS
神奈川県横浜市都筑区池辺町3984-3

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