アイワード 創業60周年記念で工場見学会「石狩スマートファクトリーオープンLIVE」を開催、ハイデル導入50年&ミューラー導入40年記念も兼ねたイベントに240人

株式会社アイワードは、4月10日、アイワード創業60周年を記念した工場見学会「石狩スマートファクトリー オープンLIVE」を、同社石狩工場で開催した。当日は、顧客企業や業界関係者ら約240人が参集し、アイワードが2017年から実現に向けて着手してきたスマートファクトリーの”今”を見学した。スマートファクトリー化に向けて、自動化、標準化を進めており、その現場がつぶさに披露された。
なお今年は、同社にとって、ドイツのハイデルベルグ社製印刷機導入50年、スイスのミューラー・マルティニ社製製本機導入40年という節目の年でもある。そこで見学会開催に伴い記者発表会も行われ、アイワードの奥山敏康社長、ハイデルベルグ・ジャパン株式会社のヨルグ・ハウアー社長、ミューラー・マルティニジャパン株式会社の五反田隆社長、アイワードの取締役部長・プリンティングディレクターの浦有輝氏が、現在の出版不況の中で持続可能な出版事業の在り方について、また印刷製本のDX化への取り組み、アートブックという美術作品の制作の新たな可能性についてなどの最新動向について発表した。

アイワード石狩工場
入口には60周年を祝って贈られた花が並ぶ
入口のエントランスや受付付近などにも飾られた
オープンファクトリー全体に花を添えていたお祝いのお花

人の手と最先端技術が織りなす“本づくり”の舞台裏を体感する

北海道のアイワードグループ(アイワード/共同文化社)は、本づくりと出版活動を通じて社会に貢献することを旗印に事業を展開している。アイワードがブック印刷事業、情報処理・システム開発事業、褪色カラー写真復元事業を、共同文化社が書籍の企画、書籍編集、書籍販売事業を担っている。グループを通じて高度な印刷技術と編集・校正・流通の出版ノウハウで高品位な本づくりを提供している。

中でも石狩工場は、アイワードの製造拠点であり、設備投資や環境整備において常に注目され続けている工場でもある。
今回の石狩工場見学ツアーでは、①刷版、②枚葉印刷機XL106シリーズ、③VMI印刷資材在庫管理システム、④調色システム、⑤自動用紙断裁システム、⑥用紙折り加工ライン、⑦製本システム、⑧カバー・帯掛け機トライオートの8つのエリアをグループ毎に見学。同社ではこの間、強みである出版印刷事業を基軸にした事業展開と、“ブック印刷自動化への取り組み”を進めており、その成果も披露された。

見学会の開催に合わせて記者発表も行った(左から、アイワードの奥山社長、ハイデルベルグ・ジャパンのバウアー社長、ミューラー・マルティニジャパンの五反田社長、アイワードの浦プリンティングディレクター)
ハイデルベルグの枚葉印刷機XL106シリーズが4台(8色両面機3台、4色両面機1台)が稼働している(写真は8色両面機)
枚葉印刷機XL106シリーズすべてにカットスターを装備。ロール紙を使うことで紙の無駄を削減。
調色システムを導入して特色インキを社内で製造。
製本のエリア。PUR・無線綴じ兼用機「アレグロ」と中綴じ機「プリメーラ」を新規導入した。

スマートファクトリーへの取り組み

同社が取り組んできたスマートファクトリーへの取り組みとして、まず一つには、営業・生産管理・組版のコンピュータと石狩工場の生産設備を繋ぎ、工場のインフラを整備している。そこでは、MISの「プリントサピエンス」で受注を管理し、生産管理システム「プリネクト」で下阪データ作成の自動処理から印刷の自動化までのワークフローを構築。後工程ではワークフローの「コネックス」を採用することで、4つの製本ラインの進捗状況や稼働速度、製本トラブルの内容などの見える化を図っている。

印刷製造においては、現在、8色両面機が3台、4色両面機1台の計4台のXL106シリーズが稼働。印刷を、1万8,000回転の印刷機4台に集約することで生産の効率化を図っている。この4台の印刷機全てにカットスターを装備し、ロール紙から印刷を行うことで、用紙のロスと無駄を削減。
また調色システムを設備し、特色を社内で対応することで品質管理とスピード対応を実現。印刷資材の在庫管理システムも導入し、無駄な印刷資材の在庫をなくす取り組みも進めている。

なお、印刷品質において、AMスクリーン、FMスクリーンに加え、2024年に「マルチドットスクリーン」を導入し、3つのスクリーン技術から最適な印刷品質を選択できるようになっている。「マルチドットスクリーン」は、異なる大きさのクラスターを最適化した網点を使用する技術で、AMスクリーンとFMスクリーンの特徴を維持しつつ、生産性向上を実現している。

また、品質検査装置「BISAI」、紙面検査装置「SENSAI」を採用し、印刷時の汚れ・カスレや色ズレ検査を実施。品質管理を徹底させている。

製本においては、PUR・無線綴じ兼用機「アレグロ」と中綴じ機「プリメーラ」を新規導入してた。ワークフロー「コネックス」を採用するなど、製本のDX化にも挑戦。これにより多品種少量化が進む市場に対応できる製本の現場づくりを進めており、厚本製本の効率アップに取り組んでいる。
その他に見学会では、人への負担を軽減し、安定した作業を実現している自動断裁システムから、ブック印刷16ページ折・32ページ折や観音折、蛇腹折なども行う用紙折り加工、数千ページという厚い書籍製本も実現する無線綴じ機、A3サイズからB6サイズまで対応可能な中綴じ機のラインなどが披露された。

アイワードは、顧客企業と共に歩むパートナーとしての在り方を追求しており、実現するためにも人材育成を大切な要素として掲げている。事業の根底にある指針として抱いているのは、「お客様と結びつきを大切にし、お客様のやりたいことを実現する企業になること」であると奥山社長は述べている。
加えて現在、同社では海外市場の開拓に乗り出している。高度な印刷技術ノウハウを武器に、『世界に届く“ものづくり”を石狩から』を掲げ、世界市場への挑戦を始めている。

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