【特別インタビュー】モトヤ・古門慶造社長 新大阪本社で新たなスタート

㈱モトヤの大阪本社が昨年12月、大阪市北区紅梅町に移転した。昭和24年以来、同社の活動拠点の中心だった旧社屋から新社屋に移り、顧客へのさらなる付加価値の提供に向けて新たなスタートを切った。同社代表取締役社長の古門慶造氏に大阪本社の移転の背景や今後の展開について話を伺った。

株式会社モトヤ 代表取締役社長 古門 慶造氏

個々の強みを磨きお役立ち
付加価値を届ける商社として

モトヤは昨年、創業100周年を迎えました。今年で101周年となります。
兵庫県姫路市で活版活字の製造販売業としてスタートした当社は、昭和24年、当時の大阪市南区塩町通り、現在の中央区南船場に本社を移転しました。以来、73年間、南船場の地でお仕事をさせて頂いてきました。
大阪への本社移転時、私は生まれて11ヵ月でした。私にとって南船場は第二の創業の地であり、入社した頃からずっと仕事をしてきた思い入れがある土地です。
新社屋への移転は次の世代にバトンを渡す際に、仕事がしやすい環境を作りたいと考えたためです。おりしも平成30年に震度6弱を記録した大阪府北部地震があり、耐震性と安全性の面からも具体的な移転の計画に着手しました。ちょうど良いタイミングで良い物件が見つかり、昨年12月に大阪市北区紅梅町のこの地に移転することができました。
新社屋は敷地面積496㎡、延床面積2427㎡の地上6階、地下1階建てです。建物の横に立体駐車場を備えて、営業車だけではなく配送車も入れるようにしました。ちなみに正面玄関の看板は、ファブリック(布)サイン「LUFAS」を使用しています。この新しい社屋で、より一層、印刷業界、お客様のお役に立つべく、社員ともども気持ちを新たにしています。
2階、3階のフロアは営業、技術、人材派遣のスタッフが入ります。4階が総務などのマネジメント部で、地下1階には旧社屋から「活字資料館」をそのまま移設しました。ご希望があれば、活字鋳造機や組版システムなどをご覧頂けるようにしています。
(※活字資料館の見学は要予約)

モトヤコラボレーションフェアについて――――

第二の創業の地である南船場には思い入れがありますが、時代の流れに合わせて変化していかなければ取り残されてしまいます。私たちからも変化する状況に対し、印刷業界やお客様に様々な提案や提言をさせて頂いてきました。その一つの形が平成14年に開始したモトヤコラボレーションフェアです。
平成7年の阪神・淡路大震災では近畿地方の広域が被害を受け、とくに震源に近い神戸市の市街地の被害は甚大でした。当時、神戸の印刷会社様とこれからこの地域の印刷業界をどう立て直すのかお話を聞き、私からもご意見をさせて頂きました。その中から、これからの印刷業界は設備投資だけではなく、自社の強みを明確にして磨きをかけ、仕事を獲得していくことが重要だと考えました。それがコラボレーションフェアのベースとなっています。印刷会社様が自ら自社の強みをアピールし、互いにその強みを活かしあう風土づくりにお役に立てていると確信しています。

コロナ禍で、この3年間はコラボレーションフェアを開催することができませんでした。この先、印刷会社様には互いに強みを活かし合える仲の良い仲間づくりが必要になってくると思います。そのあと押しをさせていただくためにも、なるべく早い時期でのコラボレーションフェアの再開を目指して、計画を進めているところです。

ルーファスで出力された入口のサイン
モトヤ大阪本社新社屋
地下一階に移設された活字資料館


モトヤとしての大きな変化の一つは平成18年に組版機製造・販売を終了し、商社機能に集中させたことです。言葉としてはきれいかもしれませんが、商社としての方向性をはっきりさせる過程でもがき苦しみました。商社はメーカーから商品を仕入れて販売する業態ですが、競争になった時に付加価値がなければ安売り競争に陥ってしまいます。モトヤとしての強みを作り上げていくまでには大変な時間と労力を費やしました。しかし、もがき苦しんだ結果、“こと売り”や“補助金支援”という当社の特徴が明確になってきたのです。
今年1月、社内の新年の挨拶で社員に「自分自身の強みを明確にしてもらいたい」と話しました。企業としての強みははっきりしてきましたが、より活性化していくためには会社を構成する社員がお客様のために自分の強みを発揮して良い仕事をしてもらうことが必要です。部課長には部下の相談に乗り、チームとして個々の強みを活かすことを考えてもらいたいと伝えました。モトヤで働く全員が自分の強みを認識することが、将来、会社を伸ばしていくポイントになると思います。

人材育成がポイントに

お客様からは人材不足のご相談が増えてきました。人材派遣事業のスタッフには社員同様、強みを持ってもう一段、二段、レベルを上げてもらいたいと話しています。お客様の先で良い仕事をして頂くために、当社としても人材派遣事業のスタッフに色々な情報を提供しています。
人材派遣事業と矛盾するかもしれませんが、派遣ですぐに人員を確保するだけでなく、印刷会社様で良い人材を育てていくことも必要だと思います。印刷生産の工程ではDXにより受注から加工・出荷までの自動化が進むと考えられます。一方で、受注からデザインまでの工程ではクライアントとキャッチボールしながら進める人材が必須です。例えば、営業担当者の方だけではなく、デザイナーの方とも同行し、クライアントがPRしたい製品の性質を捉え、市場に受け入れられるアイデアを作り込んでいくことが求められてきます。クライアントの要求や課題をしっかり受け止められる人材を育てることが一層、強みにつながってきます。
不況の中でDXによりコストダウンしていくことは重要ですが、仕事が受注できなければ意味がありません。我々も派遣で良い人材を業界に送り込んでいきますし、同時に付加価値を表面に打ち出せる人材の育成も考えて頂ければと思います。
当社でもこれから120年、150年に向かって、お客様にお役に立てる商社を目指して社員一人ひとりがレベルアップして参ります。お客様のお仕事に寄り添える存在として、モトヤ自体も変化し続けて参ります。101年目もどうぞよろしくお願い致します。
【大阪本社住所】
▽大阪府大阪市北区紅梅町2丁目8番
▽電話06-6358-9131
▽FAX06-6358-9130

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