アイワード、ミューラーマルティニ 製本スマートファクトリーを構築、出版物製造の生産効率向上
株式会社アイワード(北海道札幌市/奥山敏康代表取締役社長)は、ミューラー・マルティニ社製のPUR・ホットメルト無線綴じライン『アレグロ』30鞍、中綴じ製本ライン『プリメーラ』6鞍、製本ワークフローシステム『コネックス』の導入を機に、製本工程のスマート化に着手した。4月20日、北海道石狩市の石狩工場でミューラー・マルティニ ジャパン共同記者会見を開き、その目的と進捗などを説明した。
学術書や医学書、教育書などの書籍を製造する同社では、『アレグロ』、『プリメーラMC』に加え、既設機のPUR・ホットメルト糊綴じライン『ボレロ』21鞍、中綴じ製本ライン『ブラボプラス』8鞍もコネックスに接続。これによりリアルタイムで各製本ラインの稼動状況の把握と記録を可能とした。今後は生産管理システムを通してMISに稼動情報を集積して実原価算出の自動化やリアルタイムでの進捗の可視化を図っていく。
記者会見で奥山敏康社長は、創業から現在までの歩みを振り返り、「お客様の課題を解決するイノベーションと、ブック印刷作成上の課題をお客様と共有してきたパブリックリレーションの歴史がある」と、製本工程のスマートファクトリー化に至るバックボーンを説明。1985年、業界に先駆けて文字組版の自動化とデータベース化でプリプレス工程の生産を飛躍的に高める『文字情報処理システム』を発表した同社では、その後もデジタル技術を活用し、AIによる自動校正、Word文書からの自動組版、カラー写真の自動復元などのアプリケーションを開発し、出版業界を支えてきた。
生産面では2019年には本社サーバーに全ての生産機器をつなげるスマート化の取り組みに着手。現在はプリプレス工程、印刷工程がMIS(経営情報システム)と連携している。奥山社長は「今回導入したアレグロ30鞍、プリメーラ中綴じ6鞍はこれからの出版需要に応える最新鋭の設備と考えている。新規設備が非常に大きな力を貸してくれると確信している」と述べ、今後の製本ワークフローのコネックスを経由したMISとの連携構想を語った。
今回導入したアレグロ、プリメーラMCに加え、既設の無線綴じ機ボレロ、中綴じ機ブラボプラスで、無線綴じ2ライン、中綴じ機2ラインの構成となる。新台設置に際しては工場のレイアウトを抜本的に見直し、無線綴じラインについては両ラインの操作面を向き合わせ、オペレータが行き来しやすいようにした。中綴じ機は生産力を落とさずに3ラインを2ラインに集約させ、工場の動線スペースを拡げている。
アレグロはPUR・ホットメルト兼用で、ボレロと同仕様の製本加工が可能となっている。かつ、今回、アレグロ、ボレロともにブックブロックフィーダーを装着し、仮綴じしたブックブロックの投入を自動化している。これにより厚物製本、PUR製本の瞬発力が高まった。
同社では300頁を超える厚物が全体の2割を占める。アレグロは30鞍で最大480頁を一度で製本できほか、ブックブロックフィーダーの導入で合本による厚物製本も自動化している。このほか各ユニットが独自駆動するモーションコントロールによりセッティング時間が10~20分短縮した。
製本4ラインには『アジールコード』システムが搭載され、乱丁・落丁を防止している。独自のバーコードを読み取り、載せ違いによる乱丁や落丁、混入などを防ぐ。加えて中綴じ機にはミューラー・マルティニ独自の針金形状の検査機能を加えた。
ミューラー・マルティニ ジャパンのルドルフ・ミューラー会長は同社の現況を説明した後、在宅時間が増えた結果、米国で2021年の本の販売数が2019年比で20%増加したと報告。日本でも同様の傾向が見られる一方、とくに欧米で労働力不足と用紙価格の上昇がマイナス要因と分析した。また、本の販売形態がオンラインに移行する中で、1タイトル数の小ロット化が進み、「デジタル印刷による効率化が重要になっている」と強調した。
最後にアイワードに導入された新台の特徴を説明し、「JDF/JMFを使用してプリプレスからポストプレスまでをワークフローに統合し、将来の自動生産を目指すことも計画している」と述べ、同社のスマート化の支援を約束した。