電流協 デジタルオンデマンド印刷ハンドブック発行で記念セミナー、POD活用を紹介

電子出版制作・流通協議会のデジタル印刷・オンデマンド制作流通部会は、『出版のための デジタルオンデマンド印刷ハンドブック』(オンデマンドハンドブック)を発刊を記念して、3月11日、オンラインによるオープンセミナー「デジタルオンデマンド出版セミナー」を行った。

電流協_浴野氏
ハンドブックを紹介する浴野氏

セミナーでは、デジタルタグボードの辻本英二氏が「海外におけるオンデマンド出版の現状とこれから」を、毎日新聞の中村由紀人氏が「ニューノーマル時代の出版活動 -PODによるパラダイムシフト-」をそれぞれ講演。その後には、「出版のための デジタルオンデマンド印刷ハンドブック」の紹介 として、ハンドブックの発刊あいさつをデジタル・オンデマンド出版センターの浴野英生氏がした後、ホリゾン・ジャパンの前田拓史氏が「デジタルオンデマンド印刷を用いた出版について」と題して出版におけるPOD活用を解説した。

電流協_辻本氏
海外のPOD動向を解説した辻本氏

海外のオンデマンド出版について報告した辻本氏は、アメリカにおいて、現在の売上げ状況は全体的に下がってはいるものの、増えた企業も3割超あるなど、明るい展望があることを報告。プリントオンデマンド(POD)の動きとして、コロナ禍以降、大学出版物で急増しており、ライトニングソースとイングラムの流通部門はPOD設備に投資をしていること、逆に学校が閉鎖された高等教育などは教科書の流通が止まった分、システムの改変・改修などして対応するなど、2020年は急変したことを解説した。

コロナ禍により大きく変わったことして、これまで教科書などは学校で販売していたのが個人への直接出荷となり、それに対応する人員転換などをする必要に迫られたという。教科書に限らず、コンシューマに直接送る出荷が大幅に増加する傾向が高まった。

そうした中で活況をみせたのが、印刷から物流まで行うアウトソーシングビジネス(ドロップシッピング)で、従来からの事業者などは受注件数が大幅に伸びている。流通・物流部門については、専門業者の台頭のほか、アマゾンやFedExなどの企業では空港の近くに新たな拠点を設けるなど新たな動きが出てきている。

電流協_中村氏
PODによる出版活動を報告した中村氏

デジタル印刷を使った出版活動について解説した中村氏は、PODの仕組みがあれば、著者、編集者とPODを行う物流会社やPOD事業者で出版活動ができることを解説した。その前提として、PODの技術力が向上していることに触れ、品質、コスト、体裁、流通で課題があるといった既成概念はすでに“プリントオンデマンドの都市伝説”であり、クリアしていることを紹介した。

実際、中村氏はコロナ禍を利用してPODによる個人出版活動を行っており、その中から、病院が出版したテネット『はじめての認知症ケア』、セネカ書房「最後の弟子が松下幸之助から学んだ経営の鉄則」の元となった自費出版『時の流れ』、大学教授による北東亜州出版『「改革」のための医療経済学』、元編集者が独立して発行したCATパブリッシングの活動、毎日新聞社の“思い出ノート”からつくる思い出ブックスの取り組みの5つを紹介した。いずれも大手出版では実現できない小さな出版で始まり、中には重版を重ねたり、編纂されて別の出版社から発行されるなど、新しい出版ビジネスが実現していることが紹介された。

電流協_前田氏
出版におけるPOD活用のメリットを解説した前田氏

デジタル印刷による出版について解説した前田氏は、デジタル印刷を活用することで、現在の出版サプライチェーンが抱えている在庫過多リスクによる在庫管理と廃棄問題という課題を解決できると紹介した。出版印刷をPODへシフトすることで、最適な量で生産でき、在庫が不要で、販売機会の損失をなくし、ロングテールにも対応できるなどのメリットを判りやすく解説した。

加えて、出版ライフサイクルマネジメントとして、初版本を大量に生産した後、PODを活用して100部ずつなど一定量での在庫を維持していく最小限での在庫管理が可能になると提案した。

オンデマンドハンドブック2102

この度、発刊された『出版のための デジタルオンデマンド印刷ハンドブック』は、紙の出版のオフセット・デジタルのハイブリッド印刷及び、電子出版と紙の出版のハイブリッドな出版の普及の啓蒙を図って制作された。PODを活用した出版印刷に関した情報がまとめられている。デジタルショートラン版は電流協のホームページから、POD版は楽天ブックスおよびアマゾンから購入できる。価格は2,200円。

3月26日には、電子出版ビジネスの現状と今後の展望~2020年度電子書籍ビジネス動向調査報告~」をオンラインで開催する。受講料は、一般1,000円(電流協会員社は無料)。

「電子出版制作・流通協議会」https://aebs.or.jp/books9.html

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